37、絶対に咲く花
帝国軍が消滅してから3週間が経過していた
俺達はまだランギール城にいる、ランギールは各所の対応に追われているが、俺達はのんびり過ごしていた
まず王都の出方を確認する為だ、山脈に向かい戻ったら、街は壊滅してましたじゃ、手を貸した意味も無くなる
「調子はどうだランギール?」
俺が執務室に入り訊ねると、山積みの書類に目を通すランギールは眼鏡を外し眉間を押さえると
「調子が良いように見えるのか?」
「その調子ならまだまだ行けそうだな、しかしなんと言うか、ふ」
「それ以上は止めてくれ、鏡が怖くて見れなくなりそうだ」
「で、王都の出方は?」
「アルバートからの帝国の一連の流れで王都、いや軍部は大混乱、しかし国王陛下が混乱を収め、軍部も陛下直々に指揮する形で纏まったようだ」
「それで王は何とする?」
「陛下は帝国との戦を大層評価しており、私は伯爵から侯爵になり、報奨も現在検討中とのことだ」
「これはこれは、ランギール侯爵閣下、おめでとうございます」
「やめてくれ、頭痛が酷くなる、但し良いニュースもあるぞ」
「私付ではあるが、マリーの功績が認められ男爵となった」
「そうか、落ち着いたら王都の親元に錦を飾らしてやれ」
「わかっている、それと悪いニュースもある、ジギール侯爵から是非、レオン「様」を自領に招待したいと文が来ている、それに遣いも向かわしたそうだ」
「随分殊勝な事だな、他には?」
「情報、薬品、アイテム等、御協力出来ることは全てさせて頂きますので是非にとの事だ」
「恐らくあの現場に残り確認していたのだろう」
「成る程な、まぁ心配するな旨すぎる話は信用しないたちだが、情報は欲しい遣いの話を聞いてきめるさ」
「そうそう、文の〆は、我々は従順にして御役にたてる犬でありますと書いてあるぞ?」
「老犬を飼う予定はないのだがな、まぁ遣いが来たら知らせてくれ」と言い俺は執務室を後にする
さて俺は契約の対価に何を要求したかと言うと、それ程多くない
今まで通りに便宜をはかること、この戦争の風評通りランギールが決断し決行した作戦の結果であるとすること
そして、城の中庭のかなり広い範囲を貰うことだ、今俺は、その中庭に向かっている
『ふんふ~んる~るら~ら~』と透き通る可愛らしい鼻歌が聞こえてくる
その中庭に広範囲には新しい花壇があり、多数の花の苗に水をやる女性が見えてくる
「調子はどうだ?ソフィア」
『はい、植えた苗も順調に育っています、花が咲くのが楽しみです、私の為にこの様な物を用意して頂き有り難う御座いますレオン様』
『綺麗な花が咲くでしょうか?』
「当然だ、ソフィアが愛で育てる花だ、きっと美しく咲き乱れる」
『はい』
「気に入ってくれたなら贈った甲斐もあると言うものだな、我々が外に出る場合は庭師を手配してある、近い内に南のジギール領に行くかもしれんそのつもりでな」
『畏まりました』
「では俺は部屋に戻っているが、そうそう、その品種はあまり水を与えすぎても良くないらしい気をつけてな」
そう言い残し俺は部屋へと足を向けると、また鼻歌が聞こえてくる
先の戦いではまさに鬼神の如く戦い、命を摘んだソフィアであるが、人と触れ合い生まれた感情も大切にすべきだろう、命を育むことは良い
しかしなソフィア、そんなに水をやると根が腐るんだそうだその品種は、ランギールに花壇を用意させたとき、ランギールはその花壇専属の庭師チームを作っているんだよ
そこに植えている苗と同じ物を数倍、庭師は別で育成している、その花壇の苗でダメになった物は即座に植え変えている、必ず満開に美しく花は咲き誇るだろう
それとなソフィア、その鼻歌はサブデュー戦記のPVPで勝利した時に聞けるBGMだぞ
場所は変わり、都市ジギール城
「ジギール侯爵様、本当に招いて宜しいのですか?」と顔色が優れぬ副官は聞く
「当然だ、お主も見たであろうが? あの戦を」
「今でも目に焼き付いております、思い出すだけで震えが止まりません」
「お主はあれをどう見た?」
「私ごときでは計れませんが、人智の及ばぬ力、神の力とも悪魔の力とも、、」
「滅多な事を口にするな、あれは神の御技だ」
「その根拠は一体、、」
「根拠など必要ない、儂は神など信じておらん、仮に神がいたとして神はなにもせん、人は神に祈り、その心に一時の安寧を得る」
「では何故、、?」
「我等人では到底及ばぬ力を持つ者が現れ、その力をランギール、いや我が国の利になるよう力を振るった、ならばそれは神以上の存在だ」
「なるほど、ではランギール侯爵から此方に乗り換えて頂こうと?」
「馬鹿者、ランギールだけで無く、我々ジギールの全ても従い利になる従順な犬だと知って頂くためだ」
「遣いには伝えてあるが、徹底させよ、神より敬い微塵も不敬が無いようにとな」
「か、畏まりました」
俺が部屋に戻ると、部屋に壮年の男が立っていた
「何の様だ? 出来れば二度と顔を見たくなかったんだが?」
「ひっどいなぁ~感動のごたいめ~ん的な?」
「要件をさっさと言え」
「冷たいな~ツンデレかな?」
「じゃあな」と言い部屋の外に出ようとすると
「わかったから! 怒んないでよ!」
「んとね、今南に行こうか迷ってるよね?」
「まぁそうだな」
「いってほしいなぁってね」と壮年の男がウインクをしてくる、マジでこいつ死ね
「死ねってひどいなぁ~」
「勝手に本心を覗くな、で何故南に行かせたい? 元凶がそこにあるのか?」
「ああ、ちがうちがう、南には君の知る所のダンジョンがあるんだよ、それを攻略してくれると更に僕が楽になるって寸法さ」
「チッ、むしろ枯れて死ね」
「扱いドンドン悪くなってない?! まぁいいや、そこって相当力が蓄積されてるんだよ、攻略してくれたら僕はかなり力を戻せるのさ」
「それともまた彼女に人間を山程殺させるかい? 僕はどっちでもいいけどね~」
「わかった南に行こう」
「うんうん、あんまりやり過ぎると彼女が可哀想だもんね、それに攻略してくれたら原因のおおよその位置が分かるかもしれないよ」
「なんだその曖昧さは?」
「仕方無いよ、でもね今回のおかげで原因がなにをしてるのかは分かったよ、何かは分からないけど強引に力を吸い上げてるぽい」
「結局、お前の力を戻し、原因を始末することに変わりないということか」
「まぁまぁ、ああそうだ! 願いは決めたかい?」
「ああ、決めてはあるが、今は言わんし心を読むなよ?」
「わかったよ、んじゃそういうことでよろしこ~」
と言い残し男は消えて行った
全てが胡散臭い奴だが、痛いところは突いてくる
確かに人間相手の虐殺を繰り返しソフィアの心にどれ程の負担が掛かるのか、そこを考えると頻繁に無差別にやる訳にはいかないのは事実だ
魔物相手ならば、その心配は少なくて済む、奴の言う通りにするのはシャクだが、ダンジョン攻略も嫌いじゃない
それから数日後、ジギールの遣いが到着し直ぐにジギール領に向かうことになり、遣いの者を含め約100人のジギール騎士団に過剰に護衛され進むこと8日、何事もなく都市ジギールに到着をした




