36、終戦 地から昇るは槍 天から注ぐは炎
「では、始めよう」
俺はコンソールを出し準備したそれを起動させる
すると、帝国軍を囲む様に巨大な光の柱が次々と立ち上ぼり、誘爆しているかの如く波状に帝国軍を囲み、全ての光の柱は繋がると、帝国軍をすっぽりと覆う光のドーム状になり、そして直ぐに光のドームは消える
大混乱の帝国軍だったが、その身に変化が無いと解ると徐々に落ち着きを取り戻していった
「やはり罠だったか、なにをした? 」
「哀れな経験値に説明をしてやろう、丁度良い、ランギールにもな」
俺は剣を抜き、ゆっくりと将軍の元へ歩み出し、その目の前に行く
「なっ!? 攻撃ができん!? 」と焦る将軍に俺は剣を突き立てた
「キーーン」と甲高い音が鳴り、俺の剣は見えない壁に阻まれているかの様に将軍の手前で止まっていた
「これはな、本来は指定した対象に効果を発揮する物だが、複数を用い対象範囲を囲み発動することで、効果は囲んだ内にいる者全てに効果が発揮される」
「その効果とは、効果を受けた対象は、こちらの指定した対象以外攻撃は出来ず、指定した者以外の攻撃も受け付けない、さらに効果を受けた側と、こちらの指定した者はどちらも逃げる事は出来なくなる、効果はどちらかが死ぬまで続く」
「分かったかランギール? お前の絶対的な勝利は今決まった、顔色が優れんなランギール? お前の望んだ王国の大勝利だぞ」
このアイテムは、生か死か、と言う酷い名称なのだが、課金アイテムだ、それも飛びきりのハズレ、ゲーム時、運営は新しいダンジョンを実装したのだが、売り文句は経験値大量入手のチャンス、蓋を開けてみれば、ダンジョン内の敵は一定ダメージを与えるとやたら逃げるのだ、大炎上を受け運営は何をとち狂ったかこのアイテムを課金ガチャのハズレに入れる事で対応した
このガチャの当たりが武器強化確率上昇だったため、俺は死ぬほど在庫を抱えている
ちなみにその炎上を受けて以後逃げる敵は実装されず、またそのダンジョンよりすぐに効率の良い物が実装された
しかし何故かこのハズレアイテムは課金ガチャのラインナップから消えないおまけ付きである
ソフィアがまだ立ち上がれないマリーの近くに行き声をかける
『課題は残りましたが良い戦いでしたよ、今や貴女は立派な騎士です、マリー』
「申し訳ありませんソフィア様、私の力及ばずソフィア様に恥を、その上、神から武具まで賜わったのに、、神の顔に泥を、、」
「良いのですマリー、神は寛大です、現状に大変満足されています」
立てますか? とマリーに回復薬を飲ませている
マリーに迄あの設定を強要してるのか、中々の役者だな、そんなに気に入ってるなら、俺も乗ってやるか
「我が使徒ソフィアよ! 神である俺が命じる、我に仇なす愚かな人の子に神罰を下せ!」
「余興だ、先ずはその男に神の力が何であるか教えてやれ」
『かしこまりました、我が神、レオン様』
ソフィアはゆっくりとシギンに向かい両者の間合いが詰まる、シギンはランギールやマリーを圧倒したその速さで踏み込むと、その大剣振り抜いた
ソフィアは、迫る大剣にそっと手を添えると、「バキーーン」と剣の折れる音と同時に「ベキン」と鈍い音が鳴る
剣を止められた衝撃で、シギンの腕は本来曲がるはずのない方向に曲がっていた
苦痛に顔を歪めるシギンだが、構わず踏み入り、マリーを跳上げた時と同じようにソフィアの腹に、その肩を滑り込ませる
だがそこには既にソフィアはいなく、シギンの鎧の腹部に手のひらを上に向け、そっと支えるように当てると、次の瞬間、「ゴボン、バギャーン」と鎧の前方部分が砕け、シギンは宙に浮く
その浮いたシギンの足をソフィアが掴むと、そのまま地面に叩きつけた
「ドゴーーーン」と土煙が上がり、シギンの鎧は粉々に砕け、そして本来ある筈の右足が膝からネジ切れていた
「ランギール、本陣を退避させろ」
呆然としていたランギールは我に帰り素早く本陣退避させる、それは後退では無く、帝国に背を向けての全力の退避だったが、生か死の効果でそれを追える者は当然いない
ソフィアは意識が朦朧としているシギンを見下ろし、意識が戻るのを確認すると
『先程随分偉そうにマリーに言ってくれましたが、虫けらに特別に私が採点をして上げましょう』
『先ず武具、触れれば砕ける貧弱な物、余程貧しい者からの施しなのでしょう、0点』
『次に技量、動きは遅く止まってる様にしか見えない、赤子とかわりません、0点』
『次に力、羽毛の様に軽い上に握っただけで千切れる脆さ、0点』
『総合、採点する価値も無い、0点』
只々、呆然とし言葉もないシギンに冷酷に告げている
「ソフィア、この男は帝国を背負っているらしい、ならば背負っている物の末路を見せてやるがいい、この男がそれを見てどう思い、感じ、どうするのか興味が沸いた」
『全てはレオン様の御心のままに』
「よし、余興は終わった、経験値の回収と行こうじゃないか」
「愚かで弱い帝国軍よ! 神の力、神の技、神の裁きをその身に受けるがいい! アブソルトウイナー!!」
剣を握り、その背に翼を発現させ、戦場に神の遣いが顕現する
そして神罰は執行される
使徒が光の槍を放つと、その槍に触れた帝国兵は次々と消える
使徒がその背の翼を振るうと、肉片は空に舞い上がる
ある者は引きちぎられ、その身を投げられ別の者に当たり爆散していく
瞬く間に戦場は地獄とかしていった
帝国兵の恐怖、悲鳴が、只々渦巻く中
「ん? ランギール、まだいたのか?」
マリーは両膝を地に付け祈り、神よ感謝しますと繰り返し唱えている、マリーそれは演出過多すぎないか?
「私は見届けねばならない」
「そうか好きにするがいい、さてどうだ? 帝国の男、神の力を目にした感想を聞こうか?」
「嘘だ、、止めてくれ、、もう戦意ある者などいない、、」
と顔を歪め、涙を流し呟くように口にする
「止める方法など簡単だ、ソフィアを殺せばいい、これは1対約2万の命をかけた戦いなのだからな、まぁ戦いにはなっていないぶん、搾取と表現するべきか」
コンソールを開き確認すると、次々とレベルが上がっている、想像以上の経験値だったな
暫くするとついに40レベルに到達する、スキルにも変化があり、俺のアブソルトウイナーも3から4を飛び越え5に到達、ソフィアの方も神槍が4から5になっていた
「ソフィア! 神炎を使え! 新たなアブソルトウイナーをかける!」
そして帝国兵の頭上には禍々しい小さな太陽が現れ焼き付くしていく
「そろそろフィナーレも近いな」と俺が新たにアブソルトウイナーを唱えると
ソフィアの前に禍々しく光る赤き剣と神々しく輝く白き剣の二本が現れる
ソフィアは手に持つ剣を鞘に納めると、その剣を両手に握る、以前と同じように剣は飛散するとソフィアの背には、赤い光の翼と白い光り翼の2枚一対の4枚の翼が現れた
ソフィアは天に手を掲げ、「神炎ウリエル」と唱えると、今までの赤紫の10メートル程の火球は現れない
代わりに現れたのは、その遥か頭上に赤黒い火球、それも推定50メートル程の正に小さき太陽とも言える物が現れる
続きソフィアは手を地に付け、「神槍グングニル」と唱えると何も起きない
赤黒い太陽の光が帝国兵を照らすなか、それは突然現れる
ソフィアを中心に無数の光の槍が地面から天に向かい突きだして行き、その槍はあっという間に広がり、帝国兵は次々と地から現れる槍に呑まれ消えていく
そして頭上の神炎から無数の火球が降り注ぎ帝国兵を焼き付くしていく
地からは神槍が、天からは神炎が、帝国兵は消滅か滅却のどちらかにより消えていく
そしてソフィアにも変化があった、いや正確には変化が無い、魔法を使用したにも関わらず、その背には禍々しい翼と神々しい翼は残ったままだった
そして程なくして戦いは終わる、戦場に残ったのは、俺、ソフィア、ランギール、マリー、帝国の将軍、ランギールの騎士数人だけだった
その背に4枚の翼を携えて、ゆっくりと俺に近付き、俺の前で片膝を地に付け頭を下げる
「ソフィア、我が使徒よ、使徒の名に恥じぬ力の行使、見事だ」
『有り難き幸せ』
「さてランギール、貴様がすがり、望んだ力の行使を見た感想は?」
ランギールは、顔を歪め、唇を噛み締め、そこからは血がつたっていた
「ふむ、感激の余り言葉も出ないか、では帝国の男はどうだ?」
シギンはその身を引きずりながら、ランギールに近付き口を開く
「悪魔め!! 何故だ!? これ程の力の差で何故全て殺す必要がある!? 答えろ!英雄ランギール!」
「わ、わた」と言葉にならないランギール
そしてシギンは此方を向き続ける
「何が神だ! このような虐殺をする神がいてたまるものか!! 神の名を語る悪魔め!! 必ず神罰がく」
と言いきる前に、地から神槍が天に向かう、そして残ったのはシギンの頭だけであった
帝国兵2万に対し、王国5000、英雄ランギールは善戦するも力及ばず、秘蔵の魔道具を使用し大規模な魔法を展開、結果帝国兵の全てを撃滅する
その力に人はランギールを大陸一の英雄を称賛し、またその非情さを魔王と揶揄した




