35、其々の戦場
目の前の男が巨大な化け物に変化し驚愕と恐怖で周りの帝国兵ですら混乱しているが
「みんな落ち着こうぜ、見た目だけに囚われるのはやめよう」
そうダンが言った事で、3人も冷静さを取り戻す
「先ずはいつも通り敵の力量を見る、ベンはいつも通り引き付けてくれ、ジョンは牽制を、アリアは補助と回復中心だ」
おう、あいよ、はい、と3人には返事をし、ベンを先頭に化け物となった男との戦闘が開始された
化け物の異様に盛り上がった腕から拳が放たれ、ベンが盾で受け止める、ゴーーンと盾を打ち付ける音が響くと、ベンは後方に吹き飛ばされるが、その隙を付きダンが伸ばした腕を切り上げる
ドフっと鈍い音を立てるが剣は僅か数センチ腕に食い込み止まっていた、ダンは両断は無理だと素早く判断し剣を抜き後方に飛び体制を整える
追撃を掛けようとする化け物の顔にジョンの矢が放たれ、化け物は追撃を止め矢を手で防ぐ、その隙にベンも体制を戻し両者距離を取った
「硬い上にゴムを切り付けたみたいな感覚だった」
「攻撃は重かったけど次は受け止められる」
「なんだろうあれ? 魔物と人間が混ざってるみたい」
「あれじゃね~の、トロールによくにてんよな~」
「それだジョン、トロールの体に人間の頭を乗せてるみたいな感じだ」
「もう傷塞がってるよ、どうしよ?」
「アリア、風の魔法を俺の剣に付与してくれ、それでもう一度だ」
こうして4人は先程と同じようにトロールモドキに突入する
今度はしっかりとベンが受け止め、ダンは足を狙い切り付けると、トロールモドキの足からは大量の青い血が吹き出した
足を切り付けられ体制を崩し膝を付くトロールモドキに、ジョンの矢、ベンの斧、そしてダンが追い討ちをかける
「このガキ共がぁーーー!」そう怒りを露にして腕を大きく振るい、纏わり付く二人を吹き飛ばそうとするが、ベンは盾でいなしながら、ダンは素早く回避した
「チョロチョロとハエのように鬱陶しい!」と言うと両手て前に出し指先を伸ばし呻き始める
「ヤバイ! 何か来るぞ!全員ベンの後方に付けー!」
その直後、トロールモドキの指先の爪全てが伸び、ダン達に襲い掛かる
ガガガ、ギーと盾を打ち擦る音がし、盾で防ぎ切れなかった爪により、4人共に軽症では有るが削られていた
「なんなのよあれ」
「完璧に化け物だぁねぇ」
「数が多い上に動きが不規則で盾だけでは防ぎきれないぞ」
「どうするダン?」と三人の声が重なる
「アリア、新しく覚えたあれを頼む、俺が突っ込む」
「ダン!? まだハイブーストは身体に負担が大きいわ、それに今は引いて先生達に頼んだって、、」
「それじゃダメだ、周りも何時までも押さえてられない、此処で逃げたら肝心なときまた頼っちまうよ」
「俺なら、俺達ならやれるさ、恐怖もない、本当の恐怖は味わったろ?」
「あ、俺、瞬コロだったんで感じてねーからそれ」
「兄さん! こんな時までそんなこと!」
「やれよダン、壁になってお前を届けてやる、死ぬときは一緒だ」
「わかったわ、私もフォローする」
「フォローすっけど、しくったら俺はケツ捲るんで」
「兄さん!」
「ははっジョン、おかげで緊張も消えたぜ、うしっいくぞ!!」
アリアがハイブーストを掛け皆準備を完了させ最後の突撃をかける
首は必用に庇うてことは頭と首が離れりゃさすがに、生きてはられねぇてことだなと、考えつつガルバは4人を見る
「ちっガキ共、突っ込む気か、しかたねぇ無茶してでもかたすか」
と言うとガルバは押しつつはあるも、まだ硬直状態だった敵に一気に踏み込み、斧を振り上げる
大きく振り上げたため隙だらけのガルバに鋭利な爪が迫るが、ガルバはほんの少しずらし、爪は横腹に突き刺さる
構わずガルバは斧を頭を目掛け降り下ろすが、トロール人間の腕に防がれ頭から逸れて片腕を切断するに留まる
「うおおおおー!!」とガルバは雄叫びを上げ、降り下ろした斧の柄を握る持ち手を変えて、斧の柄を相手の胸へ突き立て貫いた、するとトロール人間は身体をビクンと大きく震わすと、目、口から青い血を流し生き絶えた
「ダン! 心臓だ! 心臓にぶちこみやがれ!」
トロールモドキの爪が伸び先頭のベンに迫り盾に激突する
耐えきれたと思った時、限界に来たのか盾が砕けちり、その爪はベン、後ろにいるダンを串刺しにする直前だった
「これをつかえ!!」とガルバの投げた斧がその爪を両断しベンの前に突き刺さる
ベンはその斧を持ち、さらに伸びてくる爪を弾くと、その横から矢の様な速さでダンが飛び出した
トロールモドキは、さらに爪を伸ばし、ダンを串刺しにしようとする、その時ジョンの放った矢はトロールモドキの目を捉えた
「うおおおおおおおおいけぇぇぇ!!」とダンは剣を突き出すがジョンの矢では、爪はそれることは無くダンに迫る
そして両者は激突し結果、突き刺さったのはダンの剣であった、トロールモドキの胸から背かけダンの剣が突き抜けていた
「バカなぁ、なぜぇぇ」と言い残しトロールモドキは地に倒れ命を落とした、そのトロールモドキの頭にはライラの二刀の内の一本が突き刺さっていた
ガルバは其を確認すると
「帝国の指揮官は潰した! 残りをつぶすぞ!!」と声を張り上げる
帝国兵側は指揮官が化け物に変化したことに混乱している上に、それも討たれ統率が取れなくなり、混乱を納めるため本陣に合流するように後退をしていく
「よしっ合図を出せ! 俺等も引くぞ」
こうして右翼の戦いは終わった
「ジギール侯爵様、右翼より合図が上がりました」
「よし、あれを使う、直ぐに前へだせ」
「副官殿、ジギールの部隊ですが何が狙いなのでしょうか?まるでやる気が」
「確かにな、押せば直ぐ引き、罠の気配もない、さて、」
そう帝国側、副官率いる部隊がジギールに対して考察していたその瞬間
「ドゴーーーーーン!!」と部隊の中心、副官がいる場所を中心に吹き飛び凄まじい火柱が上がる
「敵司令官に命中しました侯爵様」
「よし、次弾は行けるか?」
「砲身が限界です、次放てば砕けるかと」
「ちっ所詮試作品か、まぁ良い魔石砲の良いテストになったわ、大金を掛けトリベルと共同開発した甲斐もあるというものだ」
「敵指揮官は討った!! 全軍押し込め!!」
こうして一気にジギール軍は帝国を押し込んで行く
侯爵の横には、大砲の様な物が設置されており、砲身から煙を上げていた
そして程なくして帝国側は本陣に押し込められ、左翼からも合図が上がる
「将軍閣下! 左翼右翼共に指揮官が討たれ本陣に後退」
「そのまま合流させろ、左右を付かれれば厄介だが本陣さえ潰せばどうという事も無い、しかしよく粘るな、流石に英雄を名乗るだけはあるか」
「ハッ、それに先頭にいる者がどうにも、、」
「あの女騎士か、ランギールめ、良い駒を持っている、俺が出る」
「将軍閣下!?それは、」
「将軍などと言われているが、俺は元々平民出の傭兵上がりだ、陛下に掬い上げて頂いたにすぎん」
「皆、その様には、閣下を慕い着いてきております」
「分かっている、そう言うことではなく、俺は結局、己で剣を振るう方が合っているということよ、出るぞ」
「ハッ、御武運を」
ランギール本陣は、マリーを中心に何とか戦線を維持していた
「でやぁーーー!」とマリーが斧を振るう度に帝国は吹き飛び散っていく、無数の敵が襲い掛かる中、マリーの隙を上手くランギールがフォローしつつ本陣にも的確に指示を出しギリギリの所で耐えていた
そんな中、帝国兵の波状攻撃が突然やむと、巨大な影が進みでてマリーに襲い掛かかった
ガギーーーーーーンと巨大な剣と巨大な斧がぶつかり、ギ、ギ、メキと悲鳴を上げたのは剣の方だった
素早く剣をひねり、斧をずらすと巨大な影は一時飛び退く
「なんだその斧は? よもや俺の剣が打ち負けるとは、それと女、良い力をしている、名を聞こうか?」
「私は、ランギールの騎士マリー、斧は神より賜わった物です!」
「神斧とは大きく出たな? まぁ良い、我は帝国将軍シギン、参る!!」
両者は何度も打ち込み合う、その凄まじさは台風の様で、どちらも加勢することなど出来ず両陣営とも勝負を見守っていた
しかし勝敗は徐々に将軍シギンに傾きつつ有った
「マリーといったか、確かに武器はそちらが上、防具も恐ろしい程の物だ、腕力も俺より上だが技量不足だ」
シギンはマリー斧を剣の腹で巧みにいなしながら、攻撃を加えていく
「それとマリーもうひとつ、惜しむらくは貴様は女という事だ、ステータスは高くとも、、」
と言うとシギンはマリー腹に自分を肩を滑り込ませ跳上げるように押し込むと、マリーの身体はフワリと宙に浮く
「幾ら身体に恵まれようとも所詮は女、軽いのだよ!!」
そう言い宙に浮くマリーに対して剣を振り上げ切りつける刹那、シギンの顔に細剣の切っ先が滑り込む
「ちぃっ」と身体をひねりかわしながら剣の軌道を強引に変えて細剣を叩き付ける
「無粋な奴め、こいつをかたしたら次は貴様だと言うのにな、ランギール」
「誰も一対一とは決めて無いはずだが? それにこんな所で大事な騎士を失う訳にはいかん」
「しかしこのマリーの武具といい、ランギール貴様の細剣、それは何だ? この質量差でまともに打ち付けて折れる処か、、俺の剣が欠けてやがる」
「さてな、武具の心配より自分の心配をしたらどうかな?」
「ハッいいだろう、取って置きを見せてやる」
するとシギンの鎧の胸、両腕、両膝にある5つの宝石が光を放つ
「いくぜ?」とシギンが踏み込むと、蹴られた地面が抉れ土煙が上がる
その巨体からは考えられない速度で接近しランギールに向かい剣を横凪ぎに振るう
マリーが割って入り、斧を打ち付けるが、ギィーーーーンと甲高い音と共にマリー、ランギール共々吹き飛ばされる
その圧倒的な速さの打ち込みにより翻弄され、何度となく吹き飛ぶが、二人はなんとか凌いでいた
そして遂にマリーの腹を横凪ぎにした剣が捉えマリーは吹き飛び、そのダメージにより立つことが出来なくなる
続きランギールも打ち付けられ、膝を地に付け立ち上がれない
「そろそろ終いだランギール、貴様のその技の切れ、大陸一とも言って良い、が貴様も惜しむらくは女だ、軽い軽るすぎる」そしてシギンは周囲にアピールする様に声を上げる
「我は帝国将軍シギン!! この身は帝国全てを背負っていると知れ! 我こそが帝国の剣! 王国の英雄ランギール、今ここで討ち取る!!」
そう言い膝を付くランギールに向かい足を進めたとき、遠方左右から魔法が各2発づつ空に打ち上げられた
「やっとか、やっと避難が完了したか」
「この期に及んで今更何をいっているランギール?」
「シギン将軍と言ったか、済まない、許してくれ、、」
「まさか命乞いか? 英雄ならば潔く散れ」
「そうではない、私の力では、我が国の力では無理だったのだ、本当に済まない」
すると奥から二人が歩み出る、その片方の男が口を開く
「良くやった英雄ランギール、契約は果たそう」




