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34、開戦

全ての準備は整い、目の前に帝国兵2万が展開している


この防衛地点の本陣は敵に対して正面よりやや右に配置し、伯爵の騎士1000人、周りには阻害するものは無い平原だ


右翼には傭兵を中心とした兵1000人、そちらは右側面は山脈から続く岩が天然の城壁の様に続いている


左翼にはジギール侯爵の騎士3000人、こちらは左側面が天然の岩壁だ、右翼より3倍の兵がいるため、正面から右翼の間隔より左翼の間隔の方が広くカバーする事となる


つまり此処は、国境の山脈を抜け出た場所で、そこを抜けた帝国軍を囲む様に展開している


本来ならこの兵力差ならば、山脈を抜ける前に陣をひき防衛するのが当然だろう


その不可解な陣形を警戒しているのか、帝国に動きは無いが、すると一人の騎士が前に進みでて来た


「我こそは帝国の四将軍が一人、シギンだ! 積年の恨み今この戦にて晴らす!! 今日この日より王国の滅亡の幕開けとしれ!!」


とその男は馬鹿デカイ声で叫ぶ、体格はガルバよりもでかく、鎧は光沢の有る深緑で通常のフルプレートより遥かに厚い、武器はその身の丈を大きく越える両手剣を肩に担いでいる、その様子は重戦車といったところだ


それに答えランギールが前にでる


「我こそは王国最強の盾にして大陸一の英雄ランギール! 情けをかけ逃がしてやった過去を忘れ、再び牙を剥くとは二度の情けはかけん! 今日この日、貴様ら卑しい犬は全て地に帰るとしれ!!」


こうして両者は自陣に戻り、いよいよ開戦する




帝国側



「将軍閣下いかがなさりますか? しかしあの女狐の口上、許せません我々帝国を犬とは」


「解せんな、相手の陣形、配置、なによりあの煽る口上」


「罠、と言うことでしょうか?」


「魔法反応などあったか?」


「いいえ、反応は無いと報告が」


「まぁよいわ、姑息な手など我等帝国には無意味であると教えてやろう、相手の左翼には、お前が兵6000を指揮し潰せ、相手は老将ジギールの兵だ注意はしておけ」


「ハッ、では相手右翼には誰を当てましょう?」


「右翼か、、相手右翼には奴等を当てろ兵は2000指揮させよ」


「宜しいのですか? あの様な得体の知れぬ者に」


「かまわん、陛下から戦で使い功績を上げさせよと申し使ってある、相手はランギールの傭兵か野良犬同士丁度良かろう」


「皆の者行くぞ! 罠に警戒はしつつも戦線を押し上げ擂り潰す! 優先させるは帝国の宿敵ランギール! その首陛下もとへ必ず届ける! 全軍進め!!」




王国側本陣



「中々の物だったよランギール、まさか自分の事を恥ずかし気も無く英雄と言う者を見れるとはな」


「使える者ならば使うさ、相手指揮官には効かなくとも、帝国兵には多少の効果は望めるだろう」


「まぁ此処からは英雄ランギールの力を見せて貰おう、俺達はその時が来るまで観戦させて貰う」


「分かっている、皆準備はいいか! 無理をせず敵を引き付ける! 出るぞ!!」



『レオン様、我等は手を出さなくて宜しいのですか?』


「ああ、物事には順序と経緯は必要だ、英雄ランギールは強大な帝国に立ち向かい孤軍奮闘するが帝国の猛攻は凄まじく、英雄は王国の為、民の為、しかたなく切り札を切ったという事実がな」


『そう言うものなのですか?』


「人間とは理由付けが必要なのさ、~だったから仕方無い、悪くないとな、例の物を起動させたら分かっているなソフィア?」


『心得ています、神の名の元に神罰を、絶対的な勝利を神、レオン様へ』


「ははっ、余程それが気に入ったらしいな」



王国側左翼ジギール陣営



「ジギール侯爵様、準備は整いました」


「ご苦労、あれの準備も万端か?」


「ハッ、いつでも行けるとの事です」


「うむ、こちらも作戦通り行くぞ、右翼から合図が有るまでは、防衛に徹し被害は最小限に押さえるよう徹底させよ」


「皆、王国の力を帝国に思い知らせてやれ! がしかし折角の客だ! 接待を忘れてはならんぞ?、時が来るまでのらりくらりと相手をしてやれ!」




王国側右翼ガルバ陣営



「用意は整ったわよ」


「おうライラか、ご苦労さん、相手は倍くらいってとこか」


「そうね、でどうするの? 戦線を維持しつつ様子見?」


「馬鹿言うんじゃねーよ、傭兵がんなチマチマした事やってられっか、踏み込んで引っ掻き回すぞ」


「狙いは頭?」


「おう、隙を見て頭を狩る、混乱させ本陣まで押し込んだら、とっととケツを捲っておさらばだぜ」


「ガキ共はどうだ?」


「落ち着いてるわ」


「そうか、死にかけたのが効いてるか、無茶させねぇように見といてやれ」


「分かっているわよ、こんなところで死なせる訳にはいかないもの」


「野郎共! くそったれな帝国に傭兵の力を見せてやれや!! いくぜ!」


ガルバは先頭に傭兵を中心とした部隊は敵陣に次々と攻めいる


「止まるなよ! お行儀の良い戦いに付き合うな!」


傭兵達はキチッとした隊列の帝国兵とは違い、不規則な隊列で敵を翻弄して行く


「俺様が傭兵の長! 戦場の鬼、ガルバ様だ!! 死にてえ奴はかかってこいやぁーー!!」


そう注意を引き付け、手に持つ斧を振り回し次々と帝国兵を薙ぎ倒して行く


傭兵達は常に動きまわり、乱れた所を的確についていた


被害は少なく上手く立ち回れている理由にライラの働きは大きい、不利な場所を的確に把握し、崩れそうになると支えていた


「おい? 頭は何処だ? 金ぴかの鎧を付けて、ふんぞり返ってるアホはいねーか?」


敵の指揮官を探すガルバ達、帝国兵の中で黒付く目のローブを付けた三人を見付ける


「ライラ! こっちこい!」


「見つかったの?」


「あそこの気色のわりぃ奴等を見てみろや」


「魔法士にしては不自然ね、魔法も使用してないし」


「おそらくあれだ、俺らで始末しに行くぞ、おい!フォローしろ!俺らでドタマかちわってくる!!」


傭兵達は指示に従い、二人の為に道を作る、その開いた道を素早く付き、ガルバとライラは黒ローブの三人へ向かい対峙する


「てめらが頭か?」


「活きのいい獲物がきましたねぇ、相手してやりなさい、ああ死体は持って帰るのでなるべく傷付けないように」


中央の黒ローブの男がそう言うと、無言のまま左右の黒ローブ二人が、ガルバとライラの前に立つ


「当たりぽいな、奥の奴だライラ、一人一殺、先にかたした方が奥の奴を殺るって事でいいな?」


「分かっているわ」


ガルバの振るう斧が黒ローブの腕を捕らえ横凪ぎに吹き飛ばす、筈だったのだが斧は黒ローブの男の腕に食い込むだけに留まる


「かてぇ! それにこの感触、てめぇ一体!?」


斧を引き抜き、その腕を見るとローブから覗く腕からは青い血が流れており、直ぐに傷口が塞がっていく


「やろう、正体見せやがれや!!」


ガルバは斧を下から跳ね上げローブにを引っ掻けるようにして剥ぎ取る


すると其処には、人間ではあるが肌は青白く、顔には浮かび上がる青い血管に口からは牙が飛び出ている


「なんじゃこりゃ!? 魔物か? いや人間だが何かに似て、、トロールか! 」


するとそのトロール似た男がガルバに向け、人とは思えぬ鋭利に伸びた爪で襲いかかる


「ちぃ」っと斧の腹で防ぐが、ギィーンと斧を滑り抜けガルバの肩を掠め肉をえぐりとる


その後互いに打ち込み、ガルバが押し込んでいるが、敵の再生のせいもあり決めきれずにいた


「おい! ライラ! こっちはまだ掛かる、そっちはどうだ!?」


ライラの方はと言うと同じようにトロールに似た者を相手にしているが、ガルバと違いライラは無傷で敵は傷だらけで青い血を撒き散らしていた


「こっちも時間がかかるわよ! 速さは無いけど硬すぎるわ!」


「ちぃ、なるべく早く頼むぜ! 周りの仲間も何時までもおさえてはいられねぇぞ!」


「分かっているわよ!」


するとそんな二人の間を抜ける影が4つ


ダンを筆頭に若手4人組が、指揮官とおぼしき男の元へ向かう


「おい! おめえら無茶すんじゃねぇ!」


「戻りなさい!」


「無理はしないぜ師匠! 俺らに任せてくれ!」


そう言い4人は指揮官と思われる男の前に立つ、背も低く細い体型のその男は4人が前に立つと


「これまた飛びきり活きのよさそうなものが、、良いでしょう遊んで上げましょう」


そう言うとローブを投げ捨てる、その姿は肌は青白いが、容姿は全くの人間だが、男が呻き声を上げると


メキメキ、ボコッボコ、ギシギシと異様な音を立て、その体が肥大して行く


呆気にとられる4人を余所に、男の変化は終わり、身の丈2メートルに膨れ上がった体は正にトロール、顔だけは人のまま、目は赤く光る化物がそこにいた

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