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32、悪魔と契約 天啓と神罰

俺達は町の散策を終え、伯爵別邸に戻り寛いでいた


薬品の補充は満足は逝かぬが充分整ったわけだ


これで余裕を持ち、山脈に望めると計画を考えていると、伯爵が戻ったのか屋敷内が騒がしくなる


そして直ぐに伯爵が慌てた様子で部屋に入ってくると


「レオン殿、緊急事態だ」


「話を聞こうか」


要約するとこうだ、帝国の侵攻が間近である、戦力は前回の倍の2万、馬鹿に足を引っ張られている


「どうしたのだ?」下を向き思わず顔を押さえた俺に伯爵が声をかける


恐れているのか? 否だ、2万だと? ゲームではどんなにステータスの差が付き経験値が減ろうとも最小の1は保証されていた


つまり向こうから最低2万の経験値を保証してくれる獲物が来てくれるわけだ


ニヤけるのを必死に押さえている訳だが、人を標的としないのは魔力回復薬などを始め利便性を大きく失うからだ


向こうから経験値を運び、殺せば感謝され、そして惨い結果から来る悪名を被ってくれる者も目の前にいる


最高効率だ、魔物寄せの札など比較にならんな、課金で登場したら一体幾らになるのやら


「と言うわけで、今から直ぐに侯爵の元へ向かう、レオン殿、聞いているか?」


「ああ、最高だ」


「なんと?」


「いや失礼、言い間違いだ、了解だ」


こうして王都に来た一行は、素早く支度をすませ侯爵邸へと向かった


侯爵の騎士に案内され、伯爵の後に続き侯爵のいる応接室に通される


「先程ぶりだなランギール伯爵、よく来てくれた」


「いえ、緊急事態ですので」


「それで、ん? そちらの三人は?」


「こちらは私付きの騎士マリーと、侯爵がお会いしたいと書状を送られた客人のレオン殿とソフィア殿です」


「おお、そうか! しかし今は緊急だ、呼び付けてすまないが、ゆっくりとした話は又の機会としてもらおう」


「こちらはかまわんよ、ここに来たのはランギールへの確認も兼ねてだ」


「ん? まぁよい時間がおしい、伯爵話を進めよう」


そこで侯爵と伯爵は、用意できる兵数、帝国を迎え撃つ場所、陣形など話し合いを始めた


帝国の2万という情報は帝国内に何代にも渡りスパイを住まわせており、そこから戦前の食糧の動きや噂に至るまで情報を集めた結果、間違いないらしい


「しかし絶望的な差じゃな、いくら兵の質はこちらが上とは言え、、何か奇策でもあれば」


「ちょっといいか? 良い案がある」


「ほう、腕が立つとの情報は得ていたが策謀まで持っておると? 聞こうか」


「なに簡単だ、この迎え撃つ地点、この正面に伯爵を先頭に精鋭を1000配置する」


「そして左右にランギールの残り1000とジギールの3000を配置する」


俺がジギールと呼び捨てたことで、周りの騎士達はギョッとするが、侯爵は気にもしないか


「ランギールは帝国にとって是が非でも欲しい首だろう」


「左右は牽制しつつ、正面のランギールの部隊へと誘導するように仕向ける」


「それは可能だろうが、それでどうする? 伯爵が持ちこたえている間に左右で囲み包囲戦か? 包囲するには兵力が足らん上に伯爵と言えど1000で持ちこたえるなど不可能だぞ?」


「包囲戦ではない、ランギールへ敵を仕向けたら、左右の部隊はそのまま大きく左右に別れたまま後退、避難させる」


「馬鹿なことを言うな! それでは英雄と吟われる伯爵を犠牲にした上に撤退しろと言うのか! 伯爵も何か言ってやれ!」


そう興奮する侯爵とは反対に、口を真一文字に結び、険しい顔をしたままの伯爵


俺は席を立ち、両腕を大きく広げ、道化のように振る舞う


「今後語られる物語を聞かせてやろう、小王国グランギールに大国である帝国が侵攻をします、その数なんと2万! 対して王国は5000、これを率いるのは王国の英雄ランギール!帝国との激戦が始まりますが、2万対5000、幾ら英雄と言えど、どうにもならなかったのです」


「しかし英雄ランギールには秘策があったのです! それは英雄は以前強大な悪魔と対峙したときのことです、悪魔は言いました、お前が望むなら対価を払うことで力を貸してやろうと、そう英雄の秘策とは悪魔の力を借りることでした」


「英雄ランギールは苦悩します、敵とは言えど相手は人、悪魔の力を借りるなどと、その力を使えば帝国からは恐怖され、自国からも畏怖され、蔑まれ、英雄の名は地に堕ち、悪名はこの大陸全土に響き渡るでしょう!」


「しかし英雄ランギールは民のため国のため、ついにその力に手を出すのでした、そこには地獄が産まれました、帝国兵は焼かれ、千切られ、潰れ、消され、そして英雄ランギールは王国を救ったのです、その身に数多の汚名を被って、めでたしめでたし」


「何を言っておるのだコヤツは? 気でも触れて、、」


「さぁランギール、以前言った言葉が真実か聞かせて貰おうか」


うつむき一言も発していなかった伯爵が重い口を開く


「レオン殿、それで民は、、このグランギールは救われるか?」


「ああ、救われるさ」


「分かった、悪魔と契約をしよう、例えこの名が地に堕ちようとも民と国のためならな」


「契約成立だな、その悪魔はひどくお人好しだ、命は要求しまい」


「おい、いったいなにを、、」


「ジギール侯爵! この私ユリア=ランギールを信じ、此度の作戦はこの通りお願いしたい!」


鬼気迫る伯爵の空気を感じたのか侯爵は


「良いのだな? 何か分からぬが、しくじれば命は勿論、民も失うぞ?」


「元より、無理な戦、覚悟の上です」


「心配するなランギール、お前の絶対的な勝利は今確定した」


こうして話が纏まった所に、一人の騎士が飛び込んでくる


「大変です!侯爵様、王城を見張らせていた者から、王国近衛騎士団が武装をしこちらに向かっていると、率いるのはドラギール公爵です!」


「あの小僧め! 嗅ぎ付けてきたのか! 儂等を王都に閉じ込める気か!」


「アルバート、、お前はそこまで腐ってしまったのか、、」


「くそ! 急ぎ立つぞ!ランギール伯爵も急ぎ王都を!」


「俺が時間を稼いでやる」


「なに!?」


「良いのかレオン殿?」


「ああ、契約成立のサービスだよ、それにその馬鹿者はグランギール随一の力なのだろう?」


「ああ、そうだ、しかし今殺せば王国は大混乱に、、」


「分かった分かった、軽く遊んでやるさ、王国自慢の武具とやらも気になっていたしな、直ぐに追い付く、先に王都を出ていろ」


俺とソフィアは足早に王城へ向かい進む


『レオン様!御冗談でも御自分を悪魔とするなど!』


「ああ、すまんソフィア、物の例えに使っただけだ、神の力とでもした方が良かったか?」


『当然です!』


何をそんなに怒っているんだ? 例え話だろうに


「悪かったよ機嫌を治せ、次からは神の天啓とでもするさ」


『もう少し御自分の立場と言うものをですねぇ』とお小言を始めたが、マリーを教えた影響なのか? まぁ人間味が出てきたことは悪くない


「さて、目標の対処だが、要は目立つ馬鹿は殺さずに痛め付けて時間を稼ぐ」


『目標以外は始末しても?』


「ああ、多少は良いだろう、責任はランギールが取るさ、それとソイツの武具には興味があるな」


『奪い取りますか?』


「ああ違う、この世界の武具はどの程度かと思ってな、小国とは言え国宝とされるものだ、良い目安になると思ってな、奪う必要は無い、破壊出来るか試してみろ」


『かしこまりましたレオン様』


そうこうすると、前方に騎士の集団が見えてくる、先頭にド派手な鎧に剣を携えた金髪が見えた、あれか


騎士団の前に立ち、その進行を妨げると、一人の騎士が口を開く


「邪魔だ!そこをどけ!近衛騎士団であるぞ!」


俺は両手を前に組み敬虔な信徒のように振る舞い、こう言う


「神の天啓を受けこちらに足を運んだのです」


「気でも触れているのか!? 訳の解らぬことは教会でやれ!時間を取らすな、牢にぶちこまれたいか!」


怒鳴る騎士を先頭の男、ドラギールが手で止める


「ほう天啓だと?で神はなんと申した言ってみよ」


「神はこの王国を救うために、その身に巣くう悪魔を滅せよとおっしゃりました」


「で? その悪魔とは?」


「王国を救わんがため、身を粉にする英雄の足を引っ張る、金髪で白銀の鎧を付け、黄金の剣を携えた、嫉妬深い器の小さなロイヤルガードに罰を与えろと」


「き、き、貴様ぁぁ!」


俺は右手を前に出し勝利の魔法の名を口にする


「さぁ神罰の時間だ、アブソルトウイナー!」



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