10、遭遇
さて神殿を出て森をひたすら進んだ
1日、2日、3日と夜営を繰り返し森を進む
その間、何かあったかと言うと特には無い
僅かな魔物に遭遇し、みなソフィアが紙を払い除けるように切り捨てた
魔物のタイプは痩せ細った野犬なようなタイプで明らかに神殿周りより脆弱に見える
神殿周りの木々は30メールほどの大木が多いが、ここに来ると次第に木々の背も低くなってきていた
木々の背も低くなってきたことから遠目の見晴らしも良くなってきて、そこから遥か遠方の西の空に山らしい影が見えた
するとソフィアが立ち止まり
『レオン様、水の流れる音が微かに聞こえます』
俺も耳を澄ますが全く聞こえない
「良く見つけてくれた、案内を頼む」
ソフィアが先導する後を進むこと暫し、俺にも水の流れる音が耳に入ってくる
川幅5メートルほどだろうか、ようやく水が見つかった川辺に行き水を手で掬ってみる
ひんやりと冷たく澄んでいるが、異界の地の水をそのまま口にしようとは思えない
最低でも煮沸したいところだが、容器がまずない純水の容器をむりに使用出来なくもなさそうだが
リアルでは有り得ない有用なアイテムはあるというのに、直ぐに火をつけれるようなアイテムは持っていない
あまりあるステータスで木を切りそこから火をおこすことは可能だろうが、幸いまだ飲料として純水は当分もつ
現状その手間をかけ煮沸させても害が無いとは限らないし必要に迫られるまでは良いだろう
それよりも川にそって下って行くことにする、仮に人間が存在するのであれば川、つまり水とは切っても切れないはずである
川に沿って下り数日立つ頃には川幅は10メートルくらいに広がっていた
川辺には木々もなく良く空が見える、今までは生い茂る木々のせいで空などほぼ見れなかったのと、神殿にいる時は日が暮れる前には神殿に入っていたので夜の空など異界にきて初である
空には無数の星があり木々と水のせせらぎで神秘的な雰囲気だった
そう言えば海外の店で働いていたとき、その店は町とは離れたところの古城を利用したホテルレストランで
寝ていると夜にも関わらず外からかなりの光が差し込み何事かと外にでて見ると空には無数の星が輝いており、まさに手を伸ばすと、その星を手で掴めるのでは錯覚し自然と手を伸ばしていた経験があった
その日の朝は目の前が見えないほどの霧がかかっていて、その星空も1年いてその一度だけの経験だった、その日は空気が澄んでいて条件が良かったのだろうが
それに勝るとも劣らない美しい星空だ
そんな感傷に浸っていると、ソフィアが何かに気付いたのか森の奥を少し目を細めじっと見つめている
「どうしたソフィア、魔物か?」
『魔物かどうか解りませんが火の光が幾つか見えます』
俺も森に目を向けるが、全く見えなかった
自然発生は考え難い、火を纏う魔物のゲームでいることはいたが
少し悩みソフィアに先導を頼み、後ろから追っていくと、確かに火の光が4つほど見えてくる
その光は上下に揺れながら進んでいる
人工的な火だ、それも松明の様な物をもって移動しているようだ
取り敢えず気付かれづに、何であるか視認できるまで追うことにする
徐々にその火の光に近づいて行くと、闇夜の中その手で持つ火に照らせて正体が見える
俺は声を落として
「ソフィア、あれは人種だと思うか?対話は可能だろうか」
『とても対話が出来るとは思えません、以前襲ってきた蛮族が引き連れていた魔物の中に類似な者がいたと思いますが』
その松明を持つ生物の風体は人に近いのだが、体長は2メートルほどで、肌は青白く体は肥大した筋肉に覆われて頭に毛は無い
記憶の中から類似の物を探すとファンタジーにある、トロールに類似している
ん?しかし待てよ、ソフィアと共に討伐した魔物の中に蛮族などいた記憶もなければ、さらにトロールを引き連れていたなんてのは、まるで記憶に無い
俺が記憶違いをしているはずは無いだろうしソフィアの口調も嘘や記憶違いをしている様子も無いが
まぁ今はそんな些細なことはいいか
さてどうするか、魔物と決め付け先手を打つわけにもいかない
あのような風体でも地球とは違う進化をとげた人種であり、あれこそがこの世界の人間という可能性もある
「よしソフィア、あれと対話を試みる、無論襲ってきた場合は1体を仕留めろ、そこで光となり飛散すれば魔物と判断し一体を残し始末しろ」
『レオン様のお望みのままに、残す1体は四肢を切り落とし無力化すればよろしいのですか?』
こっわソフィアさん、思考がやばすぎるぞ、などと言える訳もなく
「そうだな一体残すのは、逃がし後を追うためだ、足を切り飛ばしては後を追えないしな、仮に魔物だとしても火を扱い群れで行動するだけの知能は最低限持っている訳だ、村など作り多数いることも考えられる、それとまだ魔物と決まった訳ではないしな」
そして俺はわざと音をたてながら、その集団に近づいて行く
近くに行き、その風体がより鮮明になると、ソフィアの言うようにどう見ても醜悪な魔物だが
「俺達は他国からの旅人だ、森に入り迷っていた所だ害意は無い言葉は通じるだろうか?」
と軽く両手を上げ近づいて行き途中で止まる
「グギィヤ、ガギアグッ」
と何やら顔を見合せ話し会ってるように見える
うむ、さっぱり解らん、ただの鳴き声にしか聞こえん
次第に話し会い?が熱を帯びたかと思うや否や4体の内、3体が手に持つ松明を振り上げ俺に目掛け襲ってくる
脇からソフィアが瞬時に抜け出て、正面の1体の首を横凪ぎに切り裂き、そのまま流れるように右の1体を頭の先から真っ直ぐ縦に両断した
それを見て怯む左の1体を振り払う様に、まるで居合い切りのように斜めに両断する
その様子に呆然としている後方の一体を一瞬で踏み込んだかと思うや否や、左腕を肩口から切断、松明を持つ右腕を肘から切り捨てた
この間、ほんの一息のことで、見てとれる動きは洗練されており、達人、いや道を極めし者というに相応しい美しさだった
「グェアーーーー!?ギギギギィーーー!」
悲鳴を挙げて地面に倒れこみ、うずくまるトロールもどき
『レオン様、1体を残しそれも無力化致しましたがどういたしますか?』
「見事な手際だ、予定通りに集落を形成してるなら逃がし後を追いたい所なのだが、、」
うずくまるトロールもどきは切断された腕が青い血を流し悶絶している
そして両断された3体は粒子となって大地に消えた
魔物である事が判明したのだが、このトロールもどき、トロールでいいか、醜悪とはいえ人に近いなりをしている
良くある人にちかしい事で忌避感が産まれるのでは?と思うかもしれないが
答えはNOだ、それは俺が精神異常者という訳では無く職業がらと言えるかも知れない
生物を殺し捌き生き物から食材に変える、物の捉え方の切り替えだ
例えば一時期、豚をペットにするなんてのもあったが、ペットとして愛でるか食材の前段階として捉え方で大きく違ってくる
かわいいと捉えるか美味しそうと捉えるかである
この切り替えをうまく出来ないとウサギなどを調理することを苦手ないし出来ないという者もでる
毛は無く皮を剥かれた状態で仕入れるのだが頭には申し訳程度に白い紙が巻かれている
外せば当然、愛らしいクリっとした目がお出迎えをしてくれる
これが人に限りなく近かろうと同義でも忌避感は産まれないだろう
この世界でその忌避感は命に関わることは明らかであるし、そういう意味では職業病とも言える切り替えも役に立つ物だ
などと考えているとソフィアが、うづくまるトロールの横腹を蹴りあげる
「ドフッ」という鈍い音と共にトロールの体は跳上がり転がる
悲鳴と醜悪な顔を更に歪ませ、ヨロヨロと起き上がり、泣き叫ぶ子供のように森の奥へ歩いていく
忌避感はないとは言ったが、えげつないなぁと若干引いたが予定通りに後を追う
「追うぞソフィア、集落か寝床かは解らんが何かしらの情報は手に入るだろう」
俺とソフィアは森の奥へトロールを追った




