護衛の心
今回は、ほぼ野郎どものワイ談です。
苦手な方は御注意を。
R15の範疇には収まってる…はずですが、アウトの場合はご指摘頂ければ幸いです。
王に命じられて、東方視察に加えられたグランは戸惑っていた。
目の前で馬を駆るのは、この国の王と宰相。
この国の最高権力者たちだ。
黒髪に赤い隻眼の王には、一度打ち合って、ただならぬ何かを感じていた。
この王には、どこか獣の気配がする。
もう一方の宰相は、この国で最も多いオールブラウンだ。
どうやらアヴィカとの鍛練を、賭けの対象にしているらしく、しきりに声をかけられるようになった。
(大抵が八百長の申し入れなのが…な)
グランは、彼を苦手としていた。
武力では勝る相手だが、彼にはそれを超越する知力とそれを完遂するに足る、冷徹な意思が感じられる。
人好きのするその容姿とは反対に、その値踏みする瞳を見ると過去を思い出す。
ただの剣の一つだったあの時を。
しかし今は、その氷も溶けているようだ。
馬に揺られながら、熱弁する宰相を、グランは少し驚いて見ていた。
「だ・か・ら、胸は男のロマンでしょ!」
「…そうか?」
「何で、あんなに柔らかくて、気持ちいいのかな~?」
「…脂肪の固まりだからな」
どうやら、宰相の恋人は巨乳らしい。
如何にして、その乳が気持ちいいかを力説する彼を、王は面倒そうにあしらっている。
(というか、いいのだろうか)
往来もある街道で、国の重鎮がオッパイ談義―とりあえず平和そうではあるか。
周りについている兵も、心なしか耳ダンボになっている。
それを知ってか知らずか、二人の会話は続く。
「ジークは胸より足だもんね~。してもらってるんでしょ?膝枕」
してるのか、膝枕。
グランは思わず、幼馴染みに突っ込む。
演技とはいえ、ここまで男に気を許して大丈夫なのか。
(いや…駄目だろう)
その問いかけは、最近馴染みの女性にも言えて。
自分の美貌と性別に、端から頓着してない彼女は、グランの性別についても頓着しない。
稽古中はそれでいい。
お互いの力量が拮抗しているから、余計な考えが入らない、あの空間なら。
しかし、ひとたび稽古を離れれば。
グランだって、健全な男なのである。
汗で濡れる胸元を、パタパタさせて乾かしている姿に、ムラムラしてしまう位には。
彼女は身長が高い。
ほとんどの男より高いから、気づいていない。
更に高いグランの視線に、どう映っているのか。
(意外と胸あるって言うのがまた…)
辛いのか嬉しいのか。
グランが、見えそうで見えないチラリズムの妙に感じ入っている間に、二人の会話は急展開していた。
「…膝枕だってロマンだろ」
ムッとしたらしい王の回答に、兵たちの声なきザワメキが聞こえた。
(王様は…よもや…足フェチ!!)
グランも思った。
太ももも悪くないな、と。
しかし、王の回答は斜め上をいく。
「…下から見上げる寝顔が可愛いだろ」
「え?レインが寝るの?なにそれ?膝枕ってそういうのだっけ?」
…普通、寝るか?
どんだけ危機感がないというのか。
土と染料に馴染みすぎて、対人スキル弱すぎなのか。
グランはいよいよもって幼馴染みに不安を覚える。
(或いは…そこまで心を許してるのか?)
人間不信のあの、幼馴染みが?
グランの動揺をよそに、先の見えないオッパイ談義は続く。
「でも、やっぱり胸だって!ないよりはあるほうが、ジークだって嬉しいでしょ?」
「…それはそうだが」
王はそこまで言って、しばし沈黙した。
そして。
「育てる楽しみも必要だ」
キッパリといい放つ王に。
おぉお~…!
今、幻の称賛が聞こえた気がした。
よかったな、育ててもらえるらしいぞ。
グランは、すっかり遠くなった幼馴染みに、心のなかで伝えていると。
「で?グランはどっちなの?」
思わぬ火の粉が飛んできた。
瞬間、ぱっと思い描いてしまうのは。
玉の汗が転がり落ちていく、魅惑の谷間。
「…隠れ巨乳で」
「お、いいね~、実は自分だけが知ってる感がそそるよね!」
「お、恐れながら陛下!じ、自分は育てる楽しみに感銘を受けました!」
「自分は二の腕です!プルプルたまらんです!」
「自分はお姉様です!育てるより育てられたいです!!」
「自分は足です!ピンヒールで踏まれるの最高です!とくにヒルダ様にやられたいです」
今、男たちは一つになったーようだ。
というか、最後のやつは大丈夫か。
一応あれは王の妃だが。
呆れたほうがいいのか、共感すべきか戸惑ったグランは、先をいく宰相と王を、ちらりと盗み見た。
「…どう思う?」
「古い建物が多いな…」
その言葉に、グランは、ハッと首を回した。
(既に到着していたのか…!)
台風の被害を受けた、と聞いたイストーネ伯の所領にいつの間にか、足を踏み入れていたらしい。
古い建物がいくつか倒壊し、瓦礫の山ができているのがみえる。
街にも浸水した形跡があり、家財道具を外に出して、中の水をかき出している領民の姿もある。
浸水までしたのは、この所領でもスラム街にあたるところのようで、立ち働くものは皆、ぼろをまとっていた。
その姿に、王は少し眉をひそめて馬を止める。
そして、後ろに控えていた兵士たちを振り返った。
一つきりの赤い瞳が、彼らを捉える。
しかし、それを受ける彼らに今、王に対する怯えはなかった。
グランはふっと唇を歪める。
(王都を出たときは…目すら会わせられなかったのに…)
ユージィーンを見れば、その様子を何時もの茶色の瞳で面白そうに見つめている。
ふと、その目がグランを捉えると。
軽くウィンクが帰ってきた。
(全て、手の内か…)
性的嗜好、というある種の弱点を晒して、王を身近にしたことで、結果部隊は結束した。
(この位の人心掌握は…ものの数にさえ、入らないんだろうな)
「ひとまず、彼らの手助けをしてくれ」
「御意!」
「陛下はどちらへ?」
一人の兵の疑問に、王は隻眼を細めた。
「少し、気掛かりがある。乳はなくて残念だが…イストーネ伯爵に会ってこよう」
その言葉に、兵士はどっと沸いた。
「俺たちで可愛い街娘、探しときますよ!」
「もちろん、巨乳と貧乳で揃えてね!」
その言葉に、ユージィーンがニヤリと微笑んで手を叩く。
「ハイハイ、とりあえず仕事優先だからね!仕事に乳を持ち込むなよ~!老若男女きちんと助けるように!」
「ラジャー!」
心が一つになった男たちは、勇ましく返答すると、直ぐに領地に散らばり仕事を開始する。
王都を出たときのバラバラな一団が、ここまでになるとは。
エロは世界を救うな。
間違いない。
グランは確信する。
馬を返した王に、ユージィーンがニヤリとした顔のまま尋ねた。
「で、どうする?川も見とく?」
「…あぁ。一応な。据え膳食わぬはなんとやらだ」
「…ずっと、お預けの王様が言うかね?それ」
お預けしてんのか。
一応、貞操は守られてるようだ。
主に、王の尽力によって。
グランは深く、王に同情した。
時として、男の性を忘れられることほど、辛いものはないのだ。
まぁ、レインとちがって、彼女の場合は平手ではなく、すみやかに首をはねられるだろうから、迂闊なことはできないが。
しかしもし、彼女に膝枕で寝落ちまでされたら。
自分ならとっくに、自制心の手綱を放してる。
無防備によってくる相手にだって、悪いところはあるのだから。
(それでも離せないくらいの…理由があるのか?)
グランはそっと、目の前の黒衣の背中を追う。
今は静かに牙をしまう、狼の王を。
グランは絶対にムッツリだろうな…と思ったら書きたくなって書いた話でした。
因みに彼はこの間も、きっと無表情のままです。
きっと肉食度でいったら一番です。
獲物は…時間の問題かな笑
いれるとながくなるので、どうしようかと迷っていたグランの恋ですが、どうせならグランも少し、かっこよくしたいなと思って、いれることにしました。
お陰で予定していた話数はオーバーですが涙
メイン処のお摘み程度ですが、楽しんで頂ければ、と思います。




