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静の姫君と嘘つきの王  作者: うぃすた
夜会に向けて
35/67

護衛の心

今回は、ほぼ野郎どものワイ談です。

苦手な方は御注意を。

R15の範疇には収まってる…はずですが、アウトの場合はご指摘頂ければ幸いです。

王に命じられて、東方視察に加えられたグランは戸惑っていた。

目の前で馬を駆るのは、この国の王と宰相。

この国の最高権力者たちだ。

黒髪に赤い隻眼の王には、一度打ち合って、ただならぬ何かを感じていた。

この王には、どこか獣の気配がする。

もう一方の宰相は、この国で最も多いオールブラウンだ。

どうやらアヴィカとの鍛練を、賭けの対象にしているらしく、しきりに声をかけられるようになった。

(大抵が八百長の申し入れなのが…な)

グランは、彼を苦手としていた。

武力では勝る相手だが、彼にはそれを超越する知力とそれを完遂するに足る、冷徹な意思が感じられる。

人好きのするその容姿とは反対に、その値踏みする瞳を見ると過去を思い出す。

ただの剣の一つだったあの時を。

しかし今は、その氷も溶けているようだ。

馬に揺られながら、熱弁する宰相を、グランは少し驚いて見ていた。

「だ・か・ら、胸は男のロマンでしょ!」

「…そうか?」

「何で、あんなに柔らかくて、気持ちいいのかな~?」

「…脂肪の固まりだからな」

どうやら、宰相の恋人は巨乳らしい。

如何(いか)にして、その乳が気持ちいいかを力説する彼を、王は面倒そうにあしらっている。

(というか、いいのだろうか)

往来もある街道で、国の重鎮がオッパイ談義―とりあえず平和そうではあるか。

周りについている兵も、心なしか耳ダンボになっている。

それを知ってか知らずか、二人の会話は続く。

「ジークは胸より足だもんね~。してもらってるんでしょ?膝枕」

してるのか、膝枕。

グランは思わず、幼馴染みに突っ込む。

演技とはいえ、ここまで男に気を許して大丈夫なのか。

(いや…駄目だろう)

その問いかけは、最近馴染みの女性にも言えて。

自分の美貌と性別に、(はな)から頓着(とんちゃく)してない彼女は、グランの性別についても頓着しない。

稽古(けいこ)中はそれでいい。

お互いの力量が拮抗(きっこう)しているから、余計な考えが入らない、あの空間なら。

しかし、ひとたび稽古を離れれば。

グランだって、健全な男なのである。

汗で濡れる胸元を、パタパタさせて乾かしている姿に、ムラムラしてしまう位には。

彼女は身長が高い。

ほとんどの男より高いから、気づいていない。

更に高いグランの視線に、どう映っているのか。

(意外と胸あるって言うのがまた…)

辛いのか嬉しいのか。

グランが、見えそうで見えないチラリズムの妙に感じ入っている間に、二人の会話は急展開していた。

「…膝枕だってロマンだろ」

ムッとしたらしい王の回答に、兵たちの声なきザワメキが聞こえた。

(王様は…よもや…足フェチ!!)

グランも思った。

太ももも悪くないな、と。

しかし、王の回答は斜め上をいく。

「…下から見上げる寝顔が可愛いだろ」

「え?レインが寝るの?なにそれ?膝枕ってそういうのだっけ?」

…普通、寝るか?

どんだけ危機感がないというのか。

土と染料に馴染みすぎて、対人スキル弱すぎなのか。

グランはいよいよもって幼馴染みに不安を覚える。

(或いは…そこまで心を許してるのか?)

人間不信のあの、幼馴染みが?

グランの動揺をよそに、先の見えないオッパイ談義は続く。

「でも、やっぱり胸だって!ないよりはあるほうが、ジークだって嬉しいでしょ?」

「…それはそうだが」

王はそこまで言って、しばし沈黙した。

そして。

「育てる楽しみも必要だ」

キッパリといい放つ王に。

おぉお~…!

今、幻の称賛が聞こえた気がした。

よかったな、育ててもらえるらしいぞ。

グランは、すっかり遠くなった幼馴染みに、心のなかで伝えていると。

「で?グランはどっちなの?」

思わぬ火の粉が飛んできた。

瞬間、ぱっと思い描いてしまうのは。

玉の汗が転がり落ちていく、魅惑の谷間。

「…隠れ巨乳で」

「お、いいね~、実は自分だけが知ってる感がそそるよね!」

「お、恐れながら陛下!じ、自分は育てる楽しみに感銘を受けました!」

「自分は二の腕です!プルプルたまらんです!」

「自分はお姉様です!育てるより育てられたいです!!」

「自分は足です!ピンヒールで踏まれるの最高です!とくにヒルダ様にやられたいです」

今、男たちは一つになったーようだ。

というか、最後のやつは大丈夫か。

一応あれは王の妃だが。

呆れたほうがいいのか、共感すべきか戸惑ったグランは、先をいく宰相と王を、ちらりと盗み見た。

「…どう思う?」

「古い建物が多いな…」

その言葉に、グランは、ハッと首を回した。

(既に到着していたのか…!)

台風の被害を受けた、と聞いたイストーネ伯の所領にいつの間にか、足を踏み入れていたらしい。

古い建物がいくつか倒壊し、瓦礫の山ができているのがみえる。

街にも浸水した形跡があり、家財道具を外に出して、中の水をかき出している領民の姿もある。

浸水までしたのは、この所領でもスラム街にあたるところのようで、立ち働くものは皆、ぼろをまとっていた。

その姿に、王は少し眉をひそめて馬を止める。

そして、後ろに控えていた兵士たちを振り返った。

一つきりの赤い瞳が、彼らを捉える。

しかし、それを受ける彼らに今、王に対する怯えはなかった。

グランはふっと唇を歪める。

(王都を出たときは…目すら会わせられなかったのに…)

ユージィーンを見れば、その様子を何時もの茶色の瞳で面白そうに見つめている。

ふと、その目がグランを捉えると。

軽くウィンクが帰ってきた。

(全て、手の内か…)

性的嗜好、というある種の弱点を晒して、王を身近にしたことで、結果部隊は結束した。

(この位の人心掌握は…ものの数にさえ、入らないんだろうな)

「ひとまず、彼らの手助けをしてくれ」

「御意!」

「陛下はどちらへ?」

一人の兵の疑問に、王は隻眼を細めた。

「少し、気掛かりがある。乳はなくて残念だが…イストーネ伯爵に会ってこよう」

その言葉に、兵士はどっと沸いた。

「俺たちで可愛い街娘、探しときますよ!」

「もちろん、巨乳と貧乳で揃えてね!」

その言葉に、ユージィーンがニヤリと微笑んで手を叩く。

「ハイハイ、とりあえず仕事優先だからね!仕事に乳を持ち込むなよ~!老若男女きちんと助けるように!」

「ラジャー!」

心が一つになった男たちは、勇ましく返答すると、直ぐに領地に散らばり仕事を開始する。

王都を出たときのバラバラな一団が、ここまでになるとは。

エロは世界を救うな。

間違いない。

グランは確信する。

馬を返した王に、ユージィーンがニヤリとした顔のまま尋ねた。

「で、どうする?川も見とく?」

「…あぁ。一応な。据え膳食わぬはなんとやらだ」

「…ずっと、お預けの王様が言うかね?それ」

お預けしてんのか。

一応、貞操は守られてるようだ。

主に、王の尽力によって。

グランは深く、王に同情した。

時として、男の性を忘れられることほど、辛いものはないのだ。

まぁ、レインとちがって、彼女の場合は平手ではなく、すみやかに首をはねられるだろうから、迂闊なことはできないが。

しかしもし、彼女に膝枕で寝落ちまでされたら。

自分ならとっくに、自制心の手綱を放してる。

無防備によってくる相手にだって、悪いところはあるのだから。

(それでも離せないくらいの…理由があるのか?)

グランはそっと、目の前の黒衣の背中を追う。

今は静かに牙をしまう、狼の王を。


グランは絶対にムッツリだろうな…と思ったら書きたくなって書いた話でした。

因みに彼はこの間も、きっと無表情のままです。

きっと肉食度でいったら一番です。

獲物は…時間の問題かな笑

いれるとながくなるので、どうしようかと迷っていたグランの恋ですが、どうせならグランも少し、かっこよくしたいなと思って、いれることにしました。

お陰で予定していた話数はオーバーですが涙

メイン処のお摘み程度ですが、楽しんで頂ければ、と思います。


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