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刑徒の恩送り  作者: 鯖欄
第一章

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7話 教団のストーカー軍団

登場人物

元囚人女性、洗脳の使い手 主人公 セーレ

無職の青年 マーク

セーレの仲間、大総統兼狂乱人格の女性 クライ

セーレの親友の女性、爆発の使い手 シルカ

セーレの仲間、老婆、癒しの使い手 ヘーゼル

セーレの仲間、統率者の男性 アーネス

不気味な教団ストーカーたち

「ハハハ、立派なストーカー発言だな」クライは笑うが、マークは真剣だった。

「あなた本気で言っているの、こんな出来事は序の口で、もっと怖い目に遭うかもしれないのよ」セーレの物言いに、我慢と不満が爆発した。

「俺は『あなた』じゃない、マークだ! 君がその名前を呼ぶなら諦めるよ」

「ハハハ、上手いね。セーレの制約を逆手に取るなんて」無邪気にクライは笑う。

「笑い事ではないわよ。もう、私が人の名前を記憶できない制約を盾にされるなんて」

 セーレは、額に手を置き頭が痛いような仕草をした。力強い目をした青年は関係なく、制約の話を続けた。

「教えてくれ! 君の『制約』ってやつは、一体何なんだ」

「何でこうなるのよ。こんなことなら、早めに手を切っておくべきだった」

「頼む! 教えてくれ!」マークは諦めず、セーレを逃さない。

 髪の矢先をくるくる回しながら、少し考え込んだ後、セーレは口を開いた。

「……もん、仕方ない……この左手にある赤い蛇の刺青が原因なの」

「刺青? それは本を収納する魔法ではないのか」

 セーレは小さく頷く。

「確かに、それも一面としては正しいけど。この刺青を施された者は、亡くなった人しか記憶できない呪いを負うの」

「けど、ヘーゼルさんやクライさんを名前で呼んでいるのは、なぜなんだ?」

「僕達は人智を超えた存在だよ。呪いを受けても、名前くらい呼び合える。つまり、一般人とは違うんだよ」

 クライの角が立つ物言いに、少しマークはイラッとする。深呼吸して、呪いについての話を進めた。

「セーレ。呪いということは、かけた者がいる。それは誰なんだ?」

「そこまで踏み込む気なの? 別にいいじゃない、ここまでで!」

 病室から追い出す仕草をする。しかし、マークに詰め寄られた。

「ダメだ! 俺は君のことが知りたいんだ」

「ふー、言論の自由を禁じた張本人であり、私たちがあと一歩で倒せなかった男――その名は……アドモスよ」

「アドモス?」

 マークは、彼女から聞いたこともない男の名前を聞き「誰なんだ」と考え込んだ。

「彼を倒さなければ、言論の自由を勝ち取ることができない」

「セーレの言う通りだ。今は彼の名前と制約を知れたんだし、君も怪我を負って安静にしていなきゃならない身だ。この話はこれで終わりにし、君も回復カプセルへ戻ってくれ」

「そうだな。クライさん、わかりました。看護師さん、申し訳ありませんが、宜しくお願いします」

 マークは、看護師に車椅子を押してもらい、その場を後にした。扉が閉まると、セーレは起き上がろうとした。

「ダメだよ」

 クライは、彼女の首元へ鋏(はさみ)を向けた。

「あなたには関係ないでしょう」

「君の考えはわかる。黙ってこの場から立ち去ろうとしているんだね」

 図星を突かれ、セーレは焦る。空気も読めないクセに、頭だけは無駄に良すぎた。

「だったら、何よ?」

「君も病人だし、経過観察が必要だ。それに旅には、足も必要だろう。あのバイクはプレゼントするから、もう少しマークを連れ回しても、旅に支障はないだろう」

「……」

「言論の自由を謳った僕達も、もう少し他者に対し、素直な面を見せても良いと思うよ」

 セーレは、ベッドへ戻った。

「わかったわよ。もう寝るから、あなたも病室から出ていってくれる?」

「わかった。それと、逐一、経過観察担当が隣にいる。何かあったら、声をかけてくれ。それと解剖されたくなったら、すぐに呼び出しコールを……」

「早く、行け!」

 クライを追い出すと、目を瞑り、深い眠りについた。

 

 場面は変わり、暗い部屋。

 大きなテーブルと四脚の椅子、その周囲には奇妙な銅像が並び、不気味な雰囲気を漂わせていた。

 そこに、男二人と女一人が椅子に腰をかける。

「久しぶりだな、この会議をするのも。デロスよ、お前はいくつになった?」

「女性に年を聞くのは失礼よ。オラクレ! 今回はサーメスからの会議の呼び出しらしいけど、何の話だろう?」

「我ら四教団は信じる者は違えど、情報共有と連携は必須だ」

「勤勉だな、マーガル。おっと、来たな」

 遅れて、サーメスが空席の椅子に腰をかけた。

「お待たせしてしまい、申し訳御座いません。まず遅くなりましたが、皆様にご報告します。セーレ様が天から地へ降り立ちました」

「その話は誠か、あの洗脳の女王セーレ様が生きておられたとは」マーガルは興奮気味な表情をした。

「はい、我が目でしかと拝謁しました。輝かしい銀髪、真紅の瞳に美しいお顔立ち。間違いなく、我が洗脳の女王セーレ様でした」

「セーレ様が生きておられたとは、我が爆発の女王シルカ様が聞いたら歓喜の言葉をかけるでしょう」

「そうですとも。セーレ様とシルカ様は、あの言論の対戦で輝いておられた御二人だ。故にマーガルには、セーレ様のお迎えを手伝っていただきたい」

「是非とも頼む」暑苦しい握手を交わし、気味の悪い笑顔でお互いを見つめ合った。

 その顔を見て、デロスが発言。

「そう、二人で勝手にどうぞ。私はアーネス様、一筋だし。女性は信仰しない主義だから」

「え、美女二人とのプレイか。あぁ、妄想するだけで最高だ」

「貴様は不敬だぞ、オラクレ!!」

 マーガルとサーメスは同じ言葉で注意を促した。

「そう、怒んなよ。我が魅力の男爵ルーサー様の教えなんだ。それぞれ意見がすれ違うんだ。仕方あるまいよ」

「ちょっと黙っていてください。では、セーレ様のお迎えは私、サーメスとマーガルが実行いたします。それで宜しいでしょうか?」

「異議なし」

 三人とも異議を申し立てず、会議は終了した。

 サーメスは、別室に移動し祈りを捧げた。

「偉大なる洗脳の女王セーレ様。貴方様には邪魔な虫が付いておられます。大いなる祈りを邪魔する虫は取り除き、必ずや貴方様を我が教団のもとへお招きいたします」


 また夢。

 ここは、私が十八歳の頃、戦場にいた記憶。

「さようなら」

 敵の返り血を浴びて、銀髪から赤髪になったセーレ。彼女の真紅の瞳に映った敵を惨殺していく。目には大粒の涙を浮かべた。

「凄いね。うちも負けないぞ」

 シルカの瞳が茶色から金色となる。敵に死の視線を送った。目が合ったものが、次々と爆撃でも受けたかのように爆散していった。

「ねぇ、シルカは今楽しい?」

「どうしたの、セーレ。つらいの?」

 血に濡れた毛先から、雫がぽたりと落ちた。気分も下降気味となり、吐き出したい。

「敵を操るたび、その人の人生が流れ込んでくるの」

 シルカは驚き、笑顔で詰め寄った。

「記憶を覗き込む、なんて凄いわ。これなら敵の情報を掴めるし、早く戦争も終わるね」

「でもね、そんな万能ではないの」

「どうして?」セーレに対し金髪の美しきシルカが質問する。

「他人の情報量が多すぎて、名前くらいしか記憶できないの」

 月から溢れた雫達。堪えようにも、落胆した心。逃げ場もなく、沈む影は同じ絶望、恨みとつらみへ吸い込まれるだけ。

「そうだったんだ……無理に覚える必要はないわ。つらくなったらいつでも言ってね」

「シルカ……ありがとう」

 彼女は優しく、セーレを励ました。

 金髪、金の瞳と銀髪、赤の瞳が戦場を駆ける。筋肉つけ過ぎな婆さん——ヘーゼル、黒髪のバランス良い体付きの男性——アーネスがその姿を眺める。

「同年代の二人、息が合ってるな。なぁアーネスよ」

「あぁ、彼女らも奮戦している。最後の取り分ぐらいは出張らないとな」

「お前が出たらすぐに終わるだろうが」

「いや、二人に触発されたかな」

 アーネスも戦場へ参加。敵が宙に舞っていく。

 断末魔が響く。頭が壊れそう。逃げ出したい。

 戦争は見ず知らずの命を多く奪う。セーレは、流れ出る涙を制御できず、吐き出し続けた。


「……また戦時下の夢か。最近嫌な夢が続くなぁ」

 セーレが最牡(さいおす)に来て、二日目。マークと私はそろそろ退院だ。

 病院内の記憶を思い返せば。

 クライが夜に私の病室に忍び込んでメスを持っているところをナースに注意されたり「私の神器を見つけるためだ」と言って、血液検査の後に、手術室に搬送しようとするし破(・)茶(・)滅(・)茶(・)だったわ。

「やぁ、お目覚めかい」

「げっ、クライ……」

 帰れ、と顔でセーレは主張した。

「嫌そうな顔しないでくれ」

「どの口が言うの?」

「それより、約束の物ができたんだよ」

 クライは、セーレに眼鏡と収納ケースを手渡した。

「これは何?」

「この眼鏡を掛けると、半径一キロの神器に反応し、赤マーカーがつく探査機だ。しかも、光で動いているため、太陽光を充電すれば半永久的に使える代物だ」

「そう、ありがとう」セーレは要求通りの品に安堵した。

「後、君のマフラーを改修させてもらって、ペンダントにした。真ん中にあるボタンを押すと、君の能力のオン、オフが可能だ。さらに、オフ時は君のオーラも完璧にシャットダウンできる。勿論、太陽光充電でこれも半永久的に使える代物だ」

 クライから受け取ったペンダントをつけて、真ん中のボタンを押した。髪が黒く染まり、瞳の色も変化した。眼鏡の方は先端のスイッチを押したが、何も反応がない――「表示できません」と反抗された。

 それを見て収納ケースへ眼鏡をしまった。

「さて、バイクだが、整備士のコーンが直接引き渡したいらしい。入り口付近にいるから、声をかけてくれ」

「わかったわ」

 マークが病室を訪ねてきた。

 すっかり、怪我も治り服装も新しくなり、腰に何やら武器を2つぶら下げる。

「クライさん、セーレ。二人とも揃ってるね」

「あぁ、マーク。どうだい、気に入ってくれたかい」

「それは、もうとっても、良い出来です」

 その様子を見たセーレ。鼻高々で自慢げな大きな子供。「男って、単純」

「クライ、彼に何を渡したの?」

「あぁ、彼には服とトンファーを渡したんだよ」

 服とトンファーの何が凄いのか、セーレはわからなかった。

「説明不足だったね。まず、服は防御陣を施している。前より受ける攻撃を三〇%カットしてくれる。そして、二つのトンファーだが、電撃が流れる。しかも、六五〇 Vを三回も流し込むことが可能だ。これを受けたら、常人は、まず立っていられないね」

 感謝しかない。これで無職のマークいや足手纏いも卒業だ。

「ありがとう、これで俺も戦える」

「ちょっと。あなたは、戦いに参加させる気はないわよ」

 ベッドから降りて、マークの瞳を見つめた。

 マークは顔を赤くした。

 視線を泳がせながらも、彼女の肩へ手を置いた。

「ちょっと……」

「大丈夫。君に迷惑は掛けない。だから、これからも宜しく頼む」

 真剣な表情。何を言っても無駄か、と仕方なくセーレは折れた。

「足手纏いなら、その場に捨て置くわよ」

「望むところだ」

「それと……」

「それと?」

「いつまで、肩に手を置いているのよ」

 セーレの拳がマークの頬にクリーンヒット。病室の廊下近くまで、蹌踉めく。本気のグーだった。マークは頬を押さえた。

 クライが転んだ男の側まで、歩いて近寄ってきた。

「トンファーだか、一回使うと一日、光充電が必要だ。つまり、三回使い切ると、一日経たなければ使えない、ということだ。ここだ、ていうときの切り札だから、慎重にね」

「何から何まで、ありがとう、クライさん」

 立ち上がり、二人は握手を交わした。

「ちょっと、着替えたいからアンタは出て行きなさいよ」

 セーレの足蹴りを受けて、病室の外に締め出された。

 クライに支給された服に着替え始めた。

 上半身は白っぽい服。手には黒グローブ。黒スカートに黒のレギンスを履いた。

「因みに、その服にも仕掛けがあるんだよ」

「クライ、説明はいいわ。ただ身体能力向上とワープ能力がついた、だけでしょう」

 昨日語って聞かせたが、説明の圧を感じる。

「そのワープ機能の原理が凄いのになぁ」

「あなたの話は長くなるし、あんまり難しい話はわからないわ。さてお別れね、クライ」

 病室を出よう、と行動に移す。

「僕は話し足りないよ。それに、君を解剖できなかった。また必ず来てくれよ、セーレ」

「えぇ……考えとくわ」

 セーレは、病室の扉を開け、マークと共に歩き出した。

あなたの評価を星で欲しいけれども、それは読者が決めること。支えてくださり、応援よろしくお願いします。

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