第71話 エトムントの過去
エトムントが去ると、俺とギューテだけになった。
するとギューテは話し始めた。
「実はお父さん、昔に指揮してた部隊が敵の奇襲で部隊の半分以上が戦死した過去があるんだ……」
俺は驚いた。
あのエトムントに暗い過去がある事に。
「クリストフ中将に聞いた話なんだけど、お父さんがまだ若い頃にクリストフ中将と共に川を渡河する事になったんだ」
「まさに、いまハルトくん達がやろうとしている事と同じだね」
「もしかして……」
するとギューテは頷いた。
「そう、お父さんは同じような思いをさせたくないから、同じ状況の訓練にさせたんだと思うんだ」
俺は言葉が出なかった。
すると一人の男が近づいてきた。
「……エッボ?どうしたんだ?」
そこには先程まで話していたエッボが立っていた。
「お前さん軍人手帳を落としてたぞ、もし上官に見つかれば叱責どころじゃないぞ?」
「ああ、済まない。ありがとうな」
するとエッボは俺の隣に座り、話した。
「少し聞いちまったが、エトムント大将がフランコリア戦争で仲間を失った話しだろう?」
「知ってるのか?」
俺が質問すると、エッボは頷いた。
「俺はエトムント大将……いや当時はまだエトムント大尉だったな」
「彼は中隊を率いてとある要塞の攻略に向かった」
するとエッボは暗い顔をした。
「だが事前に通知されていた状況じゃなかった」
「どういう事なんだ?」
エッボは言った。
「作戦本部から言われたのは、『奴らは撤退をしており、要塞も簡単に奪取できる』というものだった」
「だがその情報は違った」
俺は眉を潜めた
そしてエッボは話を続けた。
「本部は嘘を付いたんだ、敵は体制を整えた事を隠し無理矢理作戦を実行させようとした」
「どうしてそうなったんだ、本部だって勝ちたかったんだろ」
するとエッボは言った。
「奴らは勝利よりも己の立場や名声を気にしてる、だからこそ皇帝などに言ってしまった以上後戻りはできなかったんだろうな」
俺は拳を握った。
……あまりにも酷すぎる話しだった。
ギューテはエッボに質問した。
「それで……お父さん達はどうなったんだい……?」
エッボは静かに語った。
「君たちが知ってる通り半数以上が全滅さ、作戦の失敗をエトムント大将に擦り付けようとした輩もいたさ」
「だが生き残った者たち全員が声を上げた、すると奴等は諦めて非を認めたさ」
俺はあることを思い出した。
「もしかして……エッボが言ってた若い人たちが死んだ話って……」
エッボはすっと立ち、背中を見せながら手を振った。
「まあそういう事さ……エトムントは君たちを守るためにキツく言ってる、だから安心しろ」
そうしてエッボは何処かへ向かった。
するとギューテは俺に話した。
「……もしそういう状況になっても僕はハルトくんの味方だからね」
「ありがとうな」




