第6話 俺の戦術、彼等の戦術 (1)
「なあエトムント、本当に俺は軍人になれるのか?」
「なに、これから分かるさ」
そう答えるとエトムントは扉の前に止まった。
そして俺に少し待てと言い、先に扉を開け中に入っていった。
中からは椅子を動かす音や、驚く声が聞こえたがすぐに静かになった。
そしてエトムントが扉から顔を出し、入れと言わんばかりに手で招いていた。
緊張しながら中に入ると、そこには沢山の人が居た。
「ここは一体何なんだ?」
そう聞くとエトムントは答えた。
「講義室だ。ここで新兵の教育や士官候補生たちへの講義など様々な座学が行われる」
部屋を見渡すと先程の作戦室より広々としており、部屋の奥には黒板があった。
そして部屋の中央には長椅子と長机があり、服装から見る限り士官候補生が座学を行っていた。
黒板には作戦図と思われる一枚の紙と講師が長い棒を持って士官候補生に教えていた。
「へぇ……ここで戦術とか戦略を学ぶんだな」
関心しているとエトムントがニヤッと笑った。
「ちょうど戦術についての講義だな、少し見学してもらえる事になったから見ていこう」
そう言い、用意されていた椅子に座ったエトムント。
俺も同じく隣の椅子に座った。
「であるからにして、部隊を散開させなければならない」
「それに加え、前進する部隊と援護する部隊を分け、片方が敵を抑えている間にもう片方が前進する——いわゆる交互前進だ」
そう講師が説明していくと、講師は続けて話した。
「では前回課題として考えてもらった塹壕戦についての話をしよう」
俺は講師が放った塹壕戦という言葉にピクッと体が反応した。
それを見たエトムントは不思議そうに聞いてきた。
「どうした?体調でも悪いのか?」
「いや、俺が元々いた世界では塹壕戦はとても酷い戦いだった」
それを聞くとエトムントの顔は少し怪訝そうな顔になった。
「お前さんの世界でもそういうのはやはりあったのか?」
「ああ、まあ昔の話なんだがな」
そんな話をしていると講師が俺達の方を向いて話し始めた。
「今日はエトムント大将とお客さんがお越しになっている。丁度いい、君たちの敵塹壕を打ち破る作戦を聞いてもらおうじゃないか」
生徒たちは後ろを見たが、全員俺の方を見ていた。
「なあ、あいつ誰だ?」
「しらねえな……」
「私知ってる、確か門の近くで裸になった人じゃない?」
「マジかよ……変態がなんでエトムント大将と一緒にいるんだよ」
「誰が変態じゃ!」
そして肝心のエトムントは一瞬驚いていたが、席を立ち生徒たちの方へ話し始めた。
「では諸君、私を驚かせるような作戦を見せてくれたまえ」
「そして最も素晴らしい戦術を考えたグループには評価を上げようじゃないか」
そう言うと生徒達は嬉しそうに書類やノートなどを準備し始めた。
「……もちろんハルト君にも考えてもらうからね」
「俺も?!見学じゃないのか?!」
驚いた俺を尻目にエトムントはニコニコとしていた。
読まなくても大丈夫ですが、目を通すと少しだけ世界が見えてくると思います。
====用語説明====
・塹壕戦
敵の銃砲撃から身を守るために地面に掘った溝である。
第一次世界大戦の西部戦線で掘られた塹壕は連合国軍と中央同盟国軍合わせ、【約4万キロメートル】あった。




