第36話 学校長
俺とアルファンスは階段を登り、学校長がいる階層にたどり着いた。
「ようやくか……」
俺を横目に、アルファンスは学校長の部屋ではなく、近くにある事務室へ向かった。
そして中に入るとアルファンスは中に居た男に話しかけた。
「アルファンスだ、クリストフ中将に用事があり、話したいんだが」
「わかりました、少々お待ちください」
するとその男はもう一つのドアに消えていった。
少し経つと男が戻ってきた。
「どうぞ、お入りください」
俺とアルファンスは案内されたドアに入っていた。
中に入ると部屋中央には大きな革張りのソファーとローテーブルが置いてあり、壁には様々なものが飾られていた。
そして部屋の奥に大きなデスクと椅子があり、そこに一人の男が座っていた。
俺は緊張し立っているとアルファンスが話した。
「失礼します、クリストフ中将。エトムント大将の指示にてハルトを連れてきました」
すると椅子に座っていた男がこちらに来た。
「君が例のハルト君だね?」
立派なヒゲを生やし、胸には沢山の勲章を着けていた。
「ああ……東雲ハルトだ、よろしく」
そう答えるとクリストフは俺を目で舐め回すように見つめた。
「……あのエトムント大将が期待する男だと思ったが……案外普通の男の子だな」
俺は苦笑いしていると、アルファンスは話した。
「彼は確かに見た目は普通です。ですが彼の理論や戦術は我々には考えられないものです」
「そうか……詳しく聞きたいのだが、今は時間が無いからな」
そう言って、クリストフは俺を見ながら言った。
「あとで聞かせてもらおう、まずは事務的な話だ」
クリストフに「そこのソファーに座れ」と言われ、俺とアルファンスは座った。
そして一つの手帳と財布のような物を机に置いた。
「これは君の身分証と所持金だ」
「所持金?身分証はまだ分かるが……」
そう俺が言うと、クリストフは淡々と説明した。
「まず身分証だが、これは君がここの施設を好きに出入りできるためのものだ」
「それに加え、役所などでも使える」
そしてクリストフは葉巻に火をつけ、ふかし始めた。
「もし面倒事が起きたのならばそれを見せれば良い」
俺は疑問に思い質問した。
「身分証を見せてもその面倒事が解消されなければ?」
するとクリストフは笑いながら答えた。
「なに、そこには私の名前とエトムント大将の名前が入っておる」
「君に楯突く者は私たちに喧嘩を売るものと同じさ」
俺は驚いた。
「なぜそこまでしてくれるんだ?」
するとクリストフは答えた。
「エトムント大将のお願いだからさ、それに君の話も興味があるからな」
そう言うと、クリストフは静かに煙を吐いた。
「それで……この財布みたいな物は?」
するとクリストフは財布を持ち、中身を確認した。
「これは私からの入学祝いだ、まだこの世界に来てお金も無いだろう」
「俺の事を知っているのか……?!」
するとクリストフは答えた。
「エトムント大将から電話で沢山聞いたさ」
「最初は嘘だと思ったが、あの人は嘘をつかない人だからな」
「もちろんこの事を知っているのは私とアルファンス少佐だけだ」
するとアルファンスは頷いた。
「それで……この財布は20マルク入っておる、売店で使ってもずっと残るぐらいだから大丈夫だろう」
そうしてクリストフから手渡しで財布と身分証を受け取った。
「君に期待しているぞ、何か分からない事があればアルファンス少佐に聞きたまえ」
「そして何か重大な事があれば直接私に言いたまえ、受付にはそう伝えておく」
「……ありがとう、本当に」
俺は感謝の言葉を伝えるとクリストフは笑った。
そしてアルファンスは言った。
「ではそろそろハルトを案内させるので」
するとクリストフは分かったと答え、自分の椅子に座った。
「では、失礼します」
俺とアルファンスはお辞儀をし、部屋から出た。
「どうだった、クリストフ中将は」
「そうだな……どこか優しいお父さんって感じがしたな」
そう言うとアルファンスは答えた。
「実はクリストフ中将は昔病気で息子を失っていてな」
「そうなのか……」
「だからお前に甘いんだろうな」
「どういうことなんだ?」
そう聞くとアルファンスは答えた。
「顔が似てるんだよ、クリストフ中将の息子さんと」
俺はなんとも言えない気持ちになった。
「それはそうと、まずは寝泊まりするところ紹介しないとな」
「もしかしてまた階段を……」
するとアルファンスはまた静かに頷いた。




