29話
広いフィールド。
中央と両陣地に立つ旗。
静寂。
張り詰めた空気。
「ルールは単純だ」
教師の声。
「相手の旗を奪取した時点で勝利」
一拍。
「開始と同時に戦闘を許可する」
「――始め!」
動いた者たちは多い。
だが。
その中で――
リヒトとフィアは、動かなかった。
数秒。
ただ立っている。
前に出るのは、周囲の生徒たち。
リヒト側の七人。
「俺たちで十分だ!」
「リヒト様の手を煩わせるな!」
勢いよく前に出る。
同時に。
カイル側の陣形へ突っ込む。
一方。
カイルは動かない。
全体を見る。
(……来たな)
想定通り。
「前衛」
短く言う。
「一歩引け」
ラインが下がる。
敵の踏み込みが伸びる。
「中衛」
「左にずらせ」
視界が歪む。
距離感が狂う。
「後衛」
「視界切れ」
「……うん」
風が走る。
砂が舞う。
わずかな遮断。
「今だ」
踏み込む。
一瞬。
それだけで十分。
敵の連携はズレる。
前衛が弾く。
中衛が潰す。
後衛が流れを整える。
数秒。
終わる。
七人が崩れる。
誰も立てない。
「……終わりか」
カイルが呟く。
視線を上げる。
その先。
リヒトが一歩前に出る。
フィアも同時に動く。
「……終わった?」
リヒトが軽く言う。
足元には、倒れた七人。
いつの間にか。
音もなく。
処理されている。
「……問題ない」
フィアが答える。
視線はすでに前。
カイル側。
リヒトは少しだけ笑う。
「じゃあ、行こうか」
その瞬間。
空気が変わる。
一方。
カイルはそれを見ていた。
(……来る)
理解する。
ここからが本番。
「前衛、中衛」
「リヒトを止めろ」
即断。
レオたちが動く。
迷いはない。
「後衛はサポート」
風が流れる。
空気が整う。
残る。
カイルと、二人。
「行くぞ」
短く言う。
向かう先。
フィア。
フィアはすでに待っている。
動かない。
だが。
圧が違う。
「……来ると思ってた」
静かな声。
カイルは止まらない。
「最初から、お前を落とすつもりだ」
フィアの目が細まる。
「……合理的」
リヒトは別方向へ。
足を踏み出す。
戦場が分かれる。
カイルとフィア。
レオたちとリヒト。
同時に始まる。
二つの戦いが。




