25話
ダンジョンの外。
ざわめきは、まだ収まっていなかった。
「最上位って……」
「三人であれはおかしいだろ……」
「でも、あの二人は――」
視線が向く。
リヒトとフィア。
そして。
カイルたちへ。
空気が張り詰める。
その中で。
フィアが一歩、前に出た。
静かに。
まっすぐに。
カイルの前へ。
「……あなた」
短い声。
だが、迷いはない。
カイルは視線を向ける。
「……なんだ」
フィアはカイルを見つめる。
じっと。
観察するように。
「……想定以上」
ぽつりと呟く。
「三人であの到達階層」
「連携も完成度が高い」
一拍。
「……高く評価する」
周囲がざわつく。
2位の人間が、3位を評価している。
それだけで異質だった。
だが。
フィアは構わず続ける。
「……提案」
視線を逸らさない。
「私たちと組むべき」
静寂。
一瞬で空気が止まる。
「は……?」
誰かが呟く。
当然だった。
上位二人が、下を誘う。
普通はあり得ない。
だが。
フィアは本気だった。
「……あなたたちなら」
「無駄がない」
「合理的」
「強い」
淡々と並べる。
「……組めば最適」
結論。
シンプル。
無駄がない。
カイルは少しだけ目を細める。
(……なるほどな)
合理的判断。
感情じゃない。
純粋に“強いから誘っている”。
それは分かる。
だが。
カイルは鼻で笑う。
「……断る」
短く言い切る。
周囲がざわつく。
フィアの表情は変わらない。
「……理由」
カイルは一歩近づく。
「決まってるだろ」
一拍。
「お前らの下には入らねぇ」
はっきりと言う。
空気が張り詰める。
レオが息を呑む。
リナも静かに見ている。
フィアは少しだけ目を細める。
「……下?」
理解していない。
いや。
その概念自体が薄い。
「……違う」
首を振る。
「上下じゃない」
「合理性の問題」
淡々と返す。
だが。
カイルは首を振る。
「違わねぇよ」
視線を外さない。
「お前らは“上”のつもりだろ」
一拍。
「だったら――」
口元がわずかに上がる。
「逆だ」
静かに言い切る。
「お前らが俺の下に入るなら、入れてやる」
その言葉。
完全な挑発。
だが。
カイルは本気だった。
空気が凍る。
周囲の生徒たちが固まる。
「……マジかよ」
「1位と2位にそれ言うか……」
誰も口を出せない。
フィアは沈黙する。
数秒。
考える。
だが。
「……それは無理」
短く言う。
当然の結論。
その時。
「うん、それはできないかな」
穏やかな声。
リヒトが前に出る。
空気が少しだけ緩む。
だが。
その中心は変わらない。
「僕は勇者だからね」
当たり前のように言う。
軽い口調。
だが。
否定の余地がない。
それが“前提”であるかのように。
カイルはその言葉を聞く。
そして。
小さく笑う。
「……だろうな」
納得している。
だからこそ。
引かない。
「……なら終わりだ」
短く言う。
背を向ける。
レオとリナも続く。
三人で歩き出す。
フィアはその背中を見る。
無言で。
「……興味深い」
小さく呟く。
リヒトは笑う。
「いいね」
「面白くなりそうだ」




