20話
中庭。
朝。
空気は静かだった。
カイルは一人、立っている。
(……一人じゃ届かない)
昨日の戦い。
何度も思い返す。
リヒトの動き。
間合い。
反応。
すべてが上だった。
(どうやっても勝てねぇ)
それが結論。
認めるしかない。
だからこそ。
(……変える)
考え方を。
戦い方を。
その時。
「カイル様」
声。
振り向く。
レオとリナが立っていた。
「準備できてます」
レオが言う。
リナも小さく頷く。
カイルは二人を見る。
(……こいつら)
今まで。
“補助”として見ていた。
だが。
(違う)
特に――
リナ。
風魔法。
まだ精度は低いが。
(使い方次第で化ける)
そう確信する。
「……来い」
短く言う。
訓練場。
三人が向かい合う。
「模擬戦だ」
カイルが言う。
「俺対、お前ら二人」
レオが少しだけ驚く。
「……二人で、ですか」
「ああ」
カイルは頷く。
「全力で来い」
リナがカイルを見る。
何かを察したように。
「……いいの?」
「いい」
短く返す。
「始めるぞ」
動く。
レオが前。
リナが後ろ。
自然な配置。
(……ここまでは同じ)
カイルが踏み込む。
速い。
レオが受ける。
弾かれる。
だが。
次の瞬間。
「……今」
リナが小さく呟く。
風。
足元に流れる。
カイルの動きが一瞬だけズレる。
(……っ)
踏み込みの軌道が狂う。
その隙に。
レオが横に回る。
(……そう使うか)
理解する。
風で“ズラす”。
直接攻撃じゃない。
だが。
確実に効いている。
「右!」
リナの声。
同時に風。
視界がわずかに揺れる。
レオが動く。
回り込む。
攻撃。
カイルは避ける。
だが。
完全ではない。
(……連携してるな)
カイルは一歩下がる。
距離を取る。
(面白ぇ)
少しだけ口元が上がる。
そして。
「甘い」
踏み込む。
一気に距離を詰める。
レオを弾く。
そのままリナへ。
「……っ!」
リナが後退する。
だが。
間に合わない。
(取った)
振る――
その瞬間。
横から衝撃。
レオが無理やり割り込む。
「……っ!」
受ける。
体勢が崩れる。
だが。
止める。
剣が止まる。
静寂。
「……そこまで」
カイルが言う。
レオが息を切らす。
リナも肩で呼吸している。
「……どうだった」
カイルが聞く。
レオはすぐに答えない。
少し考えて。
「……やれます」
短く言う。
リナも続く。
「……風、もっと使える」
「ああ」
カイルは頷く。
(……これだな)
確信する。
風でズラす。
位置を制御する。
視界を狂わせる。
その上で。
レオが決める。
(……一人より強い)
間違いなく。
「いいか」
カイルが言う。
二人が顔を上げる。
「これからは」
一拍。
「3人の連携を前提に動く」
はっきりと言う。
レオが笑う。
「了解です」
リナも頷く。
「……任せて」
カイルは空を見上げる。
(……見えた)
戦い方が。
一人じゃない戦い。
それなら。
(届くかもしれねぇ)




