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16話


「開始!」


 号令と同時に、空気が変わる。


 森の中。


 受験者たちが一斉に動き出す。


 魔物の気配が、あちこちから立ち上る。


「……行くぞ」


 カイルが短く言う。


「はい!」


 レオが剣を構える。


 リナは一歩後ろ。


 視線が忙しく動く。


「前方、三体。左から来ます」


「了解」


 カイルが踏み込む。


 速い。


 身体強化。


 無駄のない動き。


 飛び出してきた魔物の一体目。


 振る。


 ザンッ!!


 一撃。


 止まらない。


 二体目へ流れる。


 横から迫る牙。


「右!」


 リナの声。


 カイルは振り向かずに体を捻る。


 回避。


 そのまま反転。


 斬る。


 三体目が迫る。


「レオ!」


「はい!」


 レオが踏み込む。


 身体強化。


 以前より安定している。


 剣を振る。


 ザンッ!


 深く入る。


 だが、仕留めきれない。


「……っ!」


 魔物が反撃しようとする。


「下がれ」


 カイルが割り込む。


 一閃。


 トドメ。


 静寂。


「……終わりです」


 レオが息を整える。


 カイルは頷く。


「悪くない」


 短く評価する。


 レオの表情が少しだけ緩む。


 リナもすぐに周囲を確認する。


「周囲、安全です」


「よし」


 カイルは周囲を見る。


(……余裕だな)


 他の受験者の気配。


 混乱している。


 悲鳴も聞こえる。


 明らかに差がある。


 奥へ進む。


 魔物の数が増える。


「前、五体」


 リナが言う。


「少し多いですね」


「問題ねぇ」


 カイルが前に出る。


「レオ、右二体任せる」


「はい!」


「リナ、位置見ろ」


「……任せて」


 動く。


 連携。


 無駄がない。


 カイルが一体目を引きつける。


 踏み込む。


 斬る。


 そのまま位置をずらす。


 魔物が動く。


「今!」


 リナの声。


 レオが横から入る。


 斬る。


 倒す。


 もう一体。


 動きが少しだけ遅れる。


「……っ!」


「焦るな」


 カイルの声。


 落ち着く。


 踏み込む。


 斬る。


 今度は仕留める。


 カイルは残りを処理する。


 一撃。


 二撃。


 三体。


 すぐに終わる。


「……いけますね」


 レオが言う。


「ああ」


 カイルは短く返す。


(……一人より速いな)


 確実に。


 三人の方が効率がいい。


 無駄が減る。


 判断が早い。


(これが……)


 まだ完成ではない。


 だが。


(悪くない)


 さらに奥へ。


 強めの個体。


 だが。


「遅い」


 カイルが踏み込む。


 一撃。


 終わる。


 レオも安定している。


 リナの指示も正確。


 崩れない。


「……これで最後か」


 カイルが周囲を見る。


 気配は消えている。


 静かだ。


「……終わりですね」


 レオが言う。


「うん」


 リナも頷く。


 カイルは息を吐く。


 まだ余裕がある。


(……こんなもんか)


「試験終了!」


 声が響く。


 森の空気が緩む。


 受験者たちが動きを止める。


 カイルは剣を下ろす。


(……問題ねぇな)


 試験場の外。


 受験者たちが戻ってくる。


 その中で。


 ざわめきが広がる。


「おい……聞いたか?」


「別会場、こっちより一時間早く終わったらしい」


「……は?」


「意味分かんねぇだろ」


「同じ試験だぞ?」


 空気が変わる。


 理解できない。


 そんなざわめき。


 カイルはその会話を聞く。


(……一時間早い?)


 あり得ない。


 この試験は、魔物の殲滅が条件。


 数も、配置も同じはず。


(それを、一時間も早く……?)


 頭に浮かぶ。


 セイルの言葉。


「次元が違う」


 一瞬だけ。


 思考が止まる。


 だが。


「……関係ねぇ」


 小さく呟く。


 視線を前に向ける。


(ここでは、俺が上だ)


 そう思う。


 それでいい。


 今はまだ。


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