15話
馬車が止まる。
「……着いたぞ」
御者の声。
カイルは目を開け、外へ出る。
「……でかいな」
思わず呟く。
石造りの巨大な建物。
広大な敷地。
そして――
集まっている人間たち。
(……空気が違う)
全員が、戦う側の人間。
それが一目で分かる。
「ここが、英雄養成学園か」
「そうだ」
横から声。
振り向く。
「……セイル」
「久しぶりだな」
軽く手を上げる。
変わらない態度。
だが、纏うものは別物だった。
(……強ぇな)
立っているだけで分かる。
「もう戻ってたのか」
「ああ」
適当に答える。
一拍。
セイルがこちらを見る。
「……なあ」
「勇者を知ってるか?」
唐突な問い。
「……勇者?」
聞き返す。
「ああ」
セイルは視線を少しだけ逸らす。
「学園長とスカウトしに行ったんだが」
一瞬、間。
「奴は次元が違うぞ」
静かな断言。
カイルは眉をひそめる。
「そんなの」
一歩踏み出す。
「やってみないと分からないだろ」
視線を逸らさない。
「俺も強くなってるんだ」
はっきりと言い切る。
一瞬の沈黙。
セイルはそれを見て――
小さく笑った。
「……まあ、そう言うと思った」
肩をすくめる。
「だがな」
少しだけ声が低くなる。
「見れば分かる」
一拍。
「あれは勝てるとか、そういう話じゃない」
その言葉。
重い。
だが。
カイルは目を逸らさない。
(……関係ねぇ)
胸の奥が熱くなる。
「……だったら」
小さく呟く。
「尚更、やるしかねぇな」
セイルはそれを見て、笑う。
「やっぱそうなるか」
「まあいい」
軽く手を振る。
「せいぜい足掻け」
「言われなくても」
カイルは前を向く。
学園。
その先。
まだ見ぬ強者。
(……潰す)
静かに思う。
「受験者は整列しろ!」
声が響く。
試験官が前に立つ。
「これより入学試験を開始する!」
空気が張り詰める。
周囲の生徒たちが構える。
集中する。
カイルもゆっくりと前に出る。
(……まずはここだ)
拳を握る。
呼吸を整える。
「第一試験――実戦試験だ!」
ざわめきが走る。
カイルは口元を歪める。
「……いいじゃねぇか」




