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14話


 ――半年後。


 森の中。


 静かな空気の中で、気配が動く。


「……来るぞ」


 カイルが小さく言う。


「はい」


 レオが構える。


 その動きに、無駄はない。


 半年前とは別人だった。


 剣を握る手も、足の運びも。


 すでに“戦う者”のそれになっている。


 リナは少し後ろ。


 周囲を見ている。


 目が動く。


 気配を追っている。


「右、二体」


 小さく言う。


「了解」


 レオが動く。


 迷いがない。


 飛び出す魔物。


 その瞬間。


 踏み込む。


 速い。


 身体強化。


 以前よりも、明らかに精度が上がっている。


 斬る。


 ザンッ!!


 一体。


 そのまま流れるように二体目へ。


 動きが止まらない。


 振る。


 斬る。


 倒す。


「……終わりです」


 レオが息を整えながら言う。


 無駄な動きはない。


 消耗も少ない。


 カイルはそれを見る。


(……成長したな)


 素直にそう思う。


 リナもすぐに動く。


「後方、異常なし」


 周囲を確認しながら言う。


 判断が早い。


 視野が広い。


 無駄に動かない。


(こっちも十分だ)


 半年前。


 何もできなかった二人。


 それが今は。


(戦力になってる)


 確実に。


 カイルは小さく息を吐く。


「……いいな」


 短く言う。


 レオが少しだけ笑う。


「ありがとうございます」


 リナも小さく頷く。


「……まだ、いける」


 その言葉に、カイルは頷く。


「ああ」


 そして。


(こいつらなら)


 一つの考えが固まる。



 森を抜ける。


 三人で歩く。


 カイルは口を開く。


「……お前ら」


 二人が振り向く。


「学園に行く」


 一瞬、間。


「……え?」


 レオが固まる。


「俺が入る」


 続ける。


「その時、お前らも連れていく」


 空気が止まる。


「……俺たちも、ですか」


「ああ」


 迷いなく答える。


「側近として連れていく」


 レオの表情が変わる。


 驚き。


 戸惑い。


 そして。


「……分かりました」


 強く頷く。


「絶対に、ついていきます」


 リナも小さく言う。


「……いく」


 カイルは頷く。


(これでいい)


 準備はできている。



 その時。


「……止まれ」


 カイルが手を上げる。


 二人が即座に止まる。


 空気が変わる。


 重い。


 圧。


(……強いな)


 明らかに、今までとは違う。


 奥から現れる。


 大型の魔物。


 筋肉が膨れ上がった個体。


 目が鋭い。


「……あれは」


 レオが息を呑む。


「下がれ」


 カイルが言う。


「ですが――」


「下がれ」


 短く言い切る。


 レオは歯を食いしばるが、下がる。


 リナもすぐに距離を取る。


 カイルは前に出る。


(……やるしかねぇな)


 普通じゃ無理だ。


 分かっている。


 だから。


(あれを使う)


 呼吸を整える。


 魔力を巡らせる。


 集中。


 一点に。


 右腕。


 剣を握る手。


「……っ」


 流す。


 通常以上に。


 限界を超えて。


 魔力を叩き込む。


 瞬間。


「ぐっ……!!」


 激痛。


 骨が軋む。


 筋肉が裂ける。


 だが。


 止めない。


(今だけでいい)


 一振りだけ。


 それに全てを乗せる。


 踏み込む。


 視界が一気に流れる。


 魔物が反応する前に。


 間合いに入る。


「――っ!!」


 振る。


 全てを乗せた一撃。


 ザンッ!!!!!!


 空気が裂ける。


 次の瞬間。


 魔物の体が、真っ二つに割れた。


 静寂。


 時間が止まる。


 カイルはそのまま――


 膝をつく。


「……っ、は……」


 呼吸が乱れる。


 右腕が動かない。


 感覚がない。


 遅れて、激痛が走る。


「カイル様!!」


 レオが駆け寄る。


「……大丈夫だ」


 無理やり言う。


 だが。


 明らかに無理だった。


 腕が震えている。


 力が入らない。


(……やりすぎたな)


 理解する。


 完全に限界を超えた。


「……一週間、か」


 小さく呟く。


 動かした瞬間、痛みが走る。


 間違いない。


 しばらく使い物にならない。


 リナがそっと近づく。


「……無茶」


 小さく言う。


「分かってる」


 苦笑する。


 だが。


 視線は前を向いていた。


(でも、これでいい)


 切り札としては成立している。


 使いどころを間違えなければ。


 勝てる。



 森を出る。


 三人で歩く。


 カイルは静かに思う。


(……これで行ける)


 個でも。


 複数でも。


 戦える。


 準備は整った。

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