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13話


 中庭。


 朝。


 空気は澄んでいる。


「……じゃあな」


 セイルが軽く手を振る。


「……次は負けねぇ」


 カイルは短く返す。


 セイルは鼻で笑う。


「言ってろ」


 そのまま背を向ける。


 馬車に乗り込む。


 扉が閉まり、動き出す。


 再び、屋敷から姿が消える。


 カイルはその背中を見送る。


(……差は、分かった)


 剣だけじゃない。


 魔法。


 身体強化。


 全部含めて。


(届かねぇな、今は)


 素直に認める。


 だからこそ。


(詰める)


 やることは決まっていた。



 訓練場。


 カイルは一人、立っている。


 手を地面にかざす。


 魔力を流す。


「……出ろ」


 ゴッ、と鈍い音。


 地面がわずかに盛り上がる。


 拳一つ分ほどの小さな山。


「……こんなもんか」


 今度は逆。


 魔力を流す。


 地面を削る。


 ボコ、と小さな穴ができる。


「……しょぼいな」


 正直な感想だった。


 大きくもできない。


 速くもない。


 戦闘で使うには微妙すぎる。


(応用は効きそうだが……)


 それでも。


 決定打にはならない。


 カイルは手を下ろす。


(……土は補助だな)


 使えなくはない。


 だが主軸にはならない。



「じゃあ、次だ」


 深く息を吸う。


 身体に意識を向ける。


 魔力を巡らせる。


「……っ」


 身体が軽くなる。


 視界が広がる。


 反応が速くなる。


(これだな)


 身体強化。


 セイルとの差を埋めるために必要なもの。


(これを鍛える)


 迷いはない。



 何度も繰り返す。


 発動。


 解除。


 発動。


 解除。


 徐々に精度を上げていく。


 その中で。


「……ん?」


 違和感。


 カイルは少し考える。


(もっと流したらどうなる)


 ふと思う。


 普通よりも。


 多く。


 強く。


 魔力を流す。


「……っ!」


 次の瞬間。


 激痛。


「ぐっ……!」


 身体が軋む。


 骨が悲鳴を上げる。


 筋肉が裂けそうになる。


 だが。


「……っ!?」


 同時に。


 身体が“跳ねる”。


 一歩踏み込む。


 景色が一気に流れる。


 速い。


 さっきまでとは比べ物にならない。


(……なんだこれ)


 力が出ている。


 異常なほどに。


 だが。


「……っ!!」


 限界。


 すぐに魔力を止める。


 膝をつく。


 呼吸が乱れる。


「……はぁ……はぁ……」


 全身が痛い。


 動かすだけで軋む。


 だが。


(今の……)


 確実に。


 普通の身体強化とは違った。


 何倍もの力。


 何倍もの速さ。


 だが。


「……無理だな」


 即座に結論を出す。


 あれは使えない。


 持たない。


 戦闘中に使えば、そのまま動けなくなる。


 最悪、壊れる。


「……却下だ」


 小さく呟く。


 選択肢から外す。


 今はまだ。


 ゆっくりと立ち上がる。


 身体を確かめる。


 痛みは残るが、動ける。


「……普通のでいい」


 結論はシンプルだった。


 無理をする必要はない。


 まずは。


(扱える範囲で最大まで)


 それが一番強い。


 カイルは再び構える。


 魔力を流す。


 今度は制御する。


 無駄なく。


 正確に。


 空は高く、晴れていた。


 その下で。


 カイルはひたすら繰り返す。


 この日。


 カイルは自分の中にある、


 “危険な可能性”に気づいた。

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