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11話



 中庭。


 朝。


 空気は張り詰めている。


 カイルの前に、レオとリナが並んで立っていた。


 姿勢は硬い。


 緊張しているのが一目で分かる。


「……いいか」


 カイルが口を開く。


 二人が同時に背筋を伸ばす。


「今日から、訓練を始める」


「はい!」


 レオが強く返事をする。


 リナも小さく頷く。


 カイルはレオを見る。


「まずはお前だ」


「はい!」


「剣、持ったことあるか」


 レオは一瞬だけ迷う。


「……ありません」


「そうか」


 カイルは頷く。


 木剣を一本、放る。


 レオは慌てて受け取る。


 重さに少しよろける。


(……軽いな)


 カイルはそれを見る。


 体ができていない。


 当然だ。


「構えろ」


「はい!」


 レオは見よう見まねで構える。


 だが。


 不安定。


 隙だらけ。


「……全然ダメだな」


 即座に言う。


「……っ」


 レオの表情が固まる。


 だが、目は逸らさない。


「いいか」


 カイルは一歩踏み出す。


「まずは立ち方だ」


 足の位置を直す。


 重心を調整する。


「ここに力を乗せろ」


「……はい」


 レオは必死に合わせる。


「肩に力入れるな」


「抜け」


「……こう、ですか」


「違う」


 即否定。


 だが。


 カイルは根気よく直す。


「もう一回」


「はい!」


 何度も繰り返す。


 単純な動き。


 だが、それができない。


 時間だけが過ぎていく。



「……はぁ……はぁ……」


 レオは肩で息をしていた。


 まだ数十分。


 それだけで限界が見えている。


 カイルは腕を組む。


(……弱いな)


 分かっていたことだ。


 だが。


 ここまでとは思っていなかった。


「……休憩」


「は、はい……!」


 レオはその場に座り込む。


 手が震えている。


 呼吸が荒い。



 カイルはリナを見る。


「次、お前だ」


「……っ」


 リナがびくっとする。


 だが、逃げない。


「文字、読めるか」


 リナは少しだけ迷い。


「……ちょっとだけ」


 小さく答える。


「どの程度だ」


 紙を一枚差し出す。


 簡単な文章。


 リナはそれを見る。


 ゆっくり。


 一文字ずつ。


「……こ、れ……は……」


 途切れる。


 読めない。


 途中で止まる。


 カイルは黙って見ている。


 リナの手が震える。


「……すみません」


 小さく言う。


「謝るな」


 即座に返す。


 リナが顔を上げる。


「できないのは当たり前だ」


 淡々と言う。


「これから覚えればいい」


 リナの目がわずかに揺れる。


「……できる、かな」


「やるんだよ」


 短く言う。


 逃げ道は与えない。


 だが。


 否定もしない。


「俺が教える」


 一言。


 それだけで十分だった。


 リナは小さく頷く。


「……うん」



 カイルは二人を見る。


 片方は体ができていない。


 片方は知識がない。


 どちらも、ゼロに近い。


(……時間かかるな)


 正直な感想だった。


 だが。


 問題ない。


 むしろ。


(ここからだ)


 何もないなら、全部入れられる。


 そういうことだ。


「いいか」


 二人に言う。


「楽じゃねぇぞ」


 レオが顔を上げる。


 リナも見る。


「逃げるなら今のうちだ」


 一拍。


 静寂。


 だが。


 二人とも動かない。


「……やります」


 レオが言う。


「……やる」


 リナも続く。


 カイルは頷く。


「よし」


 短く言う。


「じゃあ始めるぞ」



 太陽が少しずつ上がっていく。


 その下で。


 三人は動き続ける。



 この日。


 二人の“育成”が、本格的に始まった。

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