38話『アゼウロスの力』
「さぁエルフィ。キミの出番だ。あの竜を殺してくれ」
ラエティティアがエルフィの耳元でそっと呟く。すると、エルフィは空中に高く飛び立ち、アゼウロスの追跡を始めた。
「さぁ、まずはこれを止めてみなよ。止められるかな?」
『甘く見られたものですね。止めてあげましょう』
そう言ってアゼウロスは更に加速する。それに合わせてエルフィも加速する。
「さぁどうなるか。見ものだな」
ヴェローザが、エーベルトの方へと歩み寄ってきながらそんなことを呟いた。
「ヴェローザ先生、いつの間にこの角笛を?」
「あっちを出発する前さ。念の為にと思ってな」
「さすがです先生!」
「ああ。それよりも今はあっちの方が大事だな」
ヴェローザが首を動かし合図する。その方向にはアゼウロスとエルフィが物凄い速度で飛行していた。
エルフィはアゼウロスの横へと並ぶと、槌を顕現させ、アゼウロスの頭に向かって振り下ろした。すると、アゼウロスは勢いよく身体の向きを前方から後方に変え飛行し、エルフィを物凄い速度で殴り飛ばした。エルフィは地面に激しく衝突する。
「とんでもない身体能力だな⋯⋯」
エーベルトの狼狽が口から漏れる。しかし、エーベルトはエルフィが殴られたのを見て素直に喜べないでいた。
『この程度ですか。相手になりません』
そう言ってアゼウロスは勢いよく鬼怒哀楽
のほうへと方へと急降下していった。だが。
『くっ――!』
エルフィが突然目の前に現れ、槌で思い切り殴り飛ばされてしまった。しかし、アゼウロスもすかさず体制を立て直す。
「ハイレベルな戦いだな。さすがはマギアゲールで活躍していた者同士だ」
ヴェローザが感心したようにいう。エーベルトも内心そう思っていた。
「いいねいいねぇ! もっと激しい戦いを見せて欲しいよ!」
『いいでしょう。激しいかは分かりませんが興奮は出来ると思います』
そう言ってアゼウロスは唱えた。すると、アゼウロスの姿がその場から消えた。
「⋯⋯ど、どこへ行ったんだ?」
エーベルトは辺りをキョロキョロと見渡しながら言う。しかし、どこにも見当たらない。と、突然前方から衝撃音が聞こえてきた。
「な、なんだ?」
エーベルトがその方向を見やると、ラエティティアが何者かによって吹き飛ばされていた。そして、ラエティティアがいた場所にはアゼウロスが立っていた。
「アゼウロス! てことは!」
「アゼウロスがラエティティアを吹き飛ばしたということだな」
ヴェローザがエーベルトに続けるように言う。
『これが私の得意な魔法《インビジブル》です。どこから攻撃が来るか分からない、さぞ興奮したことでしょう』
アゼウロスがラエティティアの方を鋭い双眸で見ながら言う。すると、瓦礫の中からラエティティアが姿を現し、言った、
「ああ、ああ!! すごく興奮するよ!! 全然分からなかった!! ボクに攻撃を当てるなんて!!」
ラエティティアが自分の身体を抱きながら叫ぶ。余程興奮したのだろう。
『さて、どうしますか? この不可視の魔法にやられっぱなしになるか、反撃するか』
アゼウロスが挑発気味に言う。
「ああ! こんな楽しい戦いは久々だよ! ぜひ楽しもうじゃないか! みんな行くよ! 」
ラエティティアが鬼怒哀楽全員に合図した。そして、アゼウロスへと一斉に攻撃する。アゼウロスは空へと飛び立ち、それを避けた。鬼怒哀楽もそれを追う。
「鬼怒哀楽⋯⋯。先程よりも少し魔力が上がっている気がするな⋯⋯」
ヴェローザが顎を擦りながらそんなことを呟いた。
「魔力がですか?」
「そうだ。試しに戦闘値を測って見てくれ」
「わかりました」
エーベルトは空中を飛行している鬼怒哀楽に合わせ戦闘値を測った。
「確かに高い戦闘値だ⋯⋯。全員10000を超えてる⋯⋯。対するアゼウロスは9000」
「戦闘値では鬼怒哀楽に分があるようだな。果たしてこの勝負、どうなるか⋯⋯」




