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デッド・オア・キス  作者: 夕凪渚
5章 フュール奪還編
35/42

34話『いざ天空城へ』

「兄貴、おはよう」


『ライムントさん、おはようございます』


  翌日の朝。

  エーベルトとマギアビーストたちは地下室の扉を潜りながらライムントへと挨拶をした。


「ああ、おはよう。昨日はよく眠れたか?」


「俺は、まぁ眠れたかな」


「私もよく眠れました」


「私は緊張であまり眠れませんでした⋯⋯」


「私はよく眠れたっすよ〜」


  エーベルトとマギアビーストたちが口々に答える。それを聞いたライムントは満足そうに頷いた。


「今日はとうとうフュールを助け出しに行く日だ。みんな、覚悟は出来てるか?」


  ライムントがそういうとみんな力強く頷いた。その顔には緊張の色はあるものの、本当に覚悟を決めた様子が伺えた。


「兄貴、ヴェローザ先生は?」


「先生は今会議中だ。もうすぐ来るだろう」


  ライムントがそう言ったとき、地下室の自動ドアが開かれ1人の女性が入ってきた。


「遅れてすまんな。みんな揃ってるじゃないか」


「ヴェローザ先生、おはようございます」


  地下室に入ってきたのは会議を終えたヴェローザだった。ヴェローザはみなの顔色を(うかが)うと、満足そうに頷いた。


「全員いい顔してるじゃないか。覚悟は決まっているようだな」


「ヴェローザ先生、どうしますか。もう転移の準備は出来ています」


  ライムントがヴェローザに向き直り言う。ヴェローザは少し考えたのち頷いて言った。


「全員覚悟は出来ているようだ、とっとと行ってフュールを奪還し、みんな無事で帰ってこよう」


  みなが力強く頷く。――フュールを助け出すために。

  それを見たライムントは唱えた。



「では――転移魔法!目標天空城!」


  ライムントが唱えると、光の輪が足元に浮かび、次の瞬間、エーベルトたちは目的地へと一瞬で転移させられていた。




 ▲




「ん⋯⋯」


  エーベルトが目覚めると、周りにはエーベルトを覗き込む顔がいくつかあった。どうやら気絶していたらしい。まぁいつものことだが。


「ごめん兄貴、俺転移魔法(マギア)に耐性が無くて気絶しちゃうんだ」


「心配するなエーベルト、その事は聞いている」


「え? 誰に?」


  至極(しごく)当たり前のように言うライムントに、エーベルトは(たず)ねた。


「フュールだ。前に少し話したんだ、お前のことをな。あの時のフュールは楽しそうだった。少しだけ笑っていた気がした」


「フュールが⋯⋯俺のことを」


  エーベルトは力強く握り拳を作る。

  エーベルトの知らないところでそんなことをしていたなんて。エーベルトはそう考えただけで、自分を責めたい気持ちでいっぱいになった。

  しかし、今はそんなことを言ってはいられない。フュールの命に関わる時間は刻一刻(こくいっこく)と迫っている。今こうしている間にもフュールは殺されてしまうかもしれないのだ。


「兄貴、早く助けに行こう」


「ああ、そうだな。だが、まず説明をしなきゃならない」


  そう言ってライムントは説明を始めた。


「まずここが天空城だ。文字通り空の上にそびえ立つ城のようなものだ。――あれがそうだな」


  言ってライムントは前方を指さす。エーベルトたちはそちらを振り返る。そこは一本道となっており、その数百メートル先に、巨大な角のようなものが生えた城のようなものがあった。エーベルトたちは驚きの表情を隠せなかった。


「そしてあの天空城の中には強敵、ガーディアンがいる。簡単に言えば番人のようなものだな」


「番人、か⋯⋯」


  エーベルトにはそれがどのくらいの強さであるか分からない以上、恐怖でしかなかった。


「そして恐らく、天空城の最上階には天敵、鬼怒哀楽が待ち構えている」


「そこにフュールもいるってわけね⋯⋯」


  フェミリーが天空城を見据えたまま呟く。


「説明はこのくらいだ。早速だが歩みを進めよう」


『はい!』


  一同が頷き、エーベルトたちは天空城へと歩みを進めた。



  エーベルトたちはしばらく歩き、ついに天空城の麓までたどり着いた。エーベルトは上を見上げる。近くまで来ると、その天空城の迫力がさらに伝わってきた。


「やっとこついたっすね〜。もう疲れたっすよ〜」


「⋯⋯マギアビーストのくせして体力ないのかよ」


  ため息を吐きながら言うエルフィに対し、エーベルトが半目を作りながら言う。ちなみにフェミリー以外のマギアビーストはかなり疲れている。


「ここが入り口だ、さぁ入ろう」


  ライムントが指さすその入り口は巨大だった。龍が口を大きく開けたようなデザインになっており、入るのになかなかの恐怖感が味わえた。

  中に入ると、なぜかレッドカーペットが敷いてあり、天井にはシャンデリアが吊り下げられてあり、ラグジュアリーな空間になっていた。


「なんでレッドカーペットなんか⋯⋯?まぁいいか」


  エーベルトがそう言ったときだった。


「みんな伏せろ⋯⋯!」


  ライムントが小声でそう指示する。言われた通りにその場に伏せる。何があったというのか、エーベルトにはさっぱりだが、その理由はすぐ明確となった。


「あれが⋯⋯ガーディアン」


  そう。そこには、白と金の鎧を纏ったような機械が宙に浮いて徘徊していたのだ。赤い光を出しているため、恐らくその赤い光に当たると、反応し攻撃してくるという仕組みだろう。


「エーベルト、戦闘値(エネルギー)を測ってくれ」


「うん、分かった」


  言われた通り戦闘値(エネルギー)を測る。


「9000だ。⋯⋯なかなか高い」


「大丈夫だ。こっちには戦闘値10000超えのマギアビーストがいる」


  そうライムントが言う。マギアビーストたちは少し照れたような表情をしていた。


「そうだね。兄貴は50000超えだしね」


  エーベルトがそう言ったときだった。


『50000超え!?』


  突然、フェミリーとエルフィが大声を出して立ち上がった。すると、ガーディアンがこちらに反応し近寄ってくる。恐らくバレたのだろう。


「すまんな、驚かせてしまったか。まぁそういうこともあるものだ」


「兄貴、ガーディアンに居場所バレちゃってんのにどこまで寛容なの!?」


  エーベルトが悲鳴ともつかない声を上げる。


「ははっ、まぁバレてしまったものはしょうがない。――マギアビースト、頼むぞ」


「分かりました!」


「分かったっす!」


「⋯⋯え、ええ! 私どうすれば⋯⋯?」


  カミラだけ戸惑っていたが、その他のフェミリーとエルフィはガーディアンに向かって走っていった。そして高くジャンプし、唱える。


魔槍オベリスク!」


魔槌ディムロス!」


  すると、虚空からそれぞれの神器が出てきて手に収まる。そしてそのままガーディアンの頭上に降下し――振り下ろす」


『はぁっ!!』


  2人とも裂帛(れっぱく)の気合いとともに武器を振り下ろした。しかし。


「なっ―――。ガードされた!?」


「こんなん聞いてないっすよ!?」


  2人の攻撃はガードされ、弾かれる。2人は息を切らし、悲鳴じみた声を上げる。


「すまんな説明不足で、奴はシールドを張っている。そう簡単には破れないだろう。何回も攻撃すれば破れるはずだ」


「そうとなればやるしかないわね! エルフィ!行くわよ!」


「おうっす!」


  そう言って再びガーディアンに向かって走る。と、そのときだった。

  謎の機会音声が流れたと思うと、ガーディアンが鎧を変形させ、濃い魔力を纏った光線のようなものを放ってきた。


『なっ――!?』


  2人はそれをすんでのところで避ける。


「あ、危なかったわね⋯⋯」


「んにゃろー、想像以上にやばい奴っすよ⋯⋯」


「2人の戦闘値を持ってしても倒せない。――手ごわい奴だ」


  そう言ってライムントは歩み出ていく。


「すまんな2人とも。下がってていいぞ、ここは俺に任せろ」


「ら、ライムントさん?」


「どうする気っすか?」


  ライムントは2人の間を通り一番前へ躍り出た。それに反応したガーディアンはまたも鎧を変形させ、光線を放とうとしてくる。


「また同じ攻撃か。いいだろう。来い」


「兄貴!」


  ライムントは完璧に攻撃を受ける姿勢になっている。エーベルトが叫ぶがそれに返事はない。

  そしてついに光線が放たれる。光線は濃い魔力を纏い、ライムントを襲った。


「兄貴!!」


「まぁ安心しろエーベルト」


  と、後ろから声をかけられる。振り返ると、そこにはヴェローザがタバコを咥えながらライムントの方を見ていた。


「ヴェローザ先生! いくら何でもあんなのくらったら――」


「いいから、あれを見ろ」


  エーベルトの言葉を途中で遮り、ヴェローザが指をさす。その方向をエーベルトが見やる。そしてエーベルトは驚きに目を向いた。そこには、ライムントが何ともない様子で立っていたのだ。


「ふっ、その程度かガーディアン。次は俺の番だな」


  そう言ってライムントは手をガーディアンにかざす。


「くらえ。《トレース&カウンター》」


  ライムントがそう言うと、かざした手からガーディアンが放った光線よりも濃い魔力を纏った光線が放たれる。そして、ガーディアンのシールドを突き破り、ガーディアンと天井諸々(もろもろ)貫通し、空へと消えていった。


「⋯⋯な、なにが起こったんだ」


  驚きを隠せないといった感じに、エーベルトが頬に汗を垂らしながら呟く。


「だから言っただろ? 安心しろと」


  ライムントがエーベルトの方へと歩み寄ってくる。それを追うようにマギアビーストも戻ってきた。


「兄貴! 怪我はない!?」


「大丈夫だ。心配かけて悪かったな」


「よかった⋯⋯。それに、今のは⋯⋯」


「簡単な魔法さ。相手を技をシールドを張って吸収し、それを倍にして返すんだ」


「そんなことができるのか⋯⋯ってそれなら最初から倒してくれればよかったのに!」


  エーベルトが言うと、ライムントは笑った。


「それもそうだな。だが、マギアビーストがどれほどの力なのかというのも見たかったのも事実。さて、先を急ごう」


  エーベルトたちはガーディアンを無事倒し、先を急いだ。

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