28話『破壊と怒り』
「まずは身体を温めるための一撃っす!」
そう言ってエルフィは向きを変え地面の方を向き、そのまま空気を蹴り、地面へと突進していった。フュールとフェミリーは遅れてジャンプしたため追いつけない。
「おらぁ!!」
そして地面に激突する瞬間、槌を地面に叩きつけた。その瞬間、地面が抉れ、周りの建物が崩れ落ちていく。その下にいたエーベルトはカミラを抱き寄せ、ギリギリの所で回避した。
「くそっ! なんてパワーしてやがんだあいつ⋯⋯!」
「まだまだっすよー! それっ!」
す
エルフィは再び高く飛び上がると、何やらぶつぶつと言い始めた。次の瞬間、エルフィが持っていた槌に雷が纏われた。そして地面に突進する。
「くらえっす! 《メガライ》!」
またも槌を地面に叩きつける。すると、雷が落ちたような衝撃波と、建物が崩れ落ちていく衝撃波が入り交じり、エーベルトを襲った。
「ぐわああッ――!」
カミラを抱き込み転がっていく。
「く――。大丈夫か! カミラ!」
「⋯⋯は、はい! 大丈夫です!」
どうやら2人とも無事のようだった。それを見ていたフュールとフェミリーは顔を見合わせて唱えた。
「――<魔剣・マルミアドワーズ>」
「――<魔槍・オベリスク>」
すると、虚空から魔のオーラをまとった剣と槍が2人の手に収まる。フュールたちはいつも以上に柄を握る強さを強めた。
「まだまだいくっすよー!」
再び高く飛び上がろうとしたそのとき、上から何者かが剣を振りかざしてきた。それをすんでのところでエルフィは避けた。
「なーに邪魔してくれちゃってんすか。――フュールさん」
そう。3度目の攻撃を防ぐため上から攻撃を仕掛けたのだ。
「もうあの攻撃は、させない」
「そうっすか。なら止めてみればいいっすよ!」
そして再び飛び上がろうとしたとき、今度はフェミリーが頭上から攻撃を仕掛けた。しかし、それもするりと避けた。が、その先にフュールが先回りしており、エルフィは剣を胴にもろに喰らってしまった。そのまま地面へと叩きつけられる。
「くはっ⋯⋯! い、痛いっす⋯⋯」
「うしっ! よくやったフュール!」
エーベルトはフュールに向かって親指を突き上げた。フュールは無言でこくりと頷いた。
「⋯⋯ま、まだっす」
エルフィは剣をもろに食らった身体で起き上がろうとする。しかし、上手く力が入らない。
「⋯⋯もうよしたらどうだ?」
「⋯⋯え?」
と、突然エルフィの隣から声がかけられた。エルフィが横を向くと、そこには屈んでこちらを見ているエーベルトがいた。
「⋯⋯まだまだっすよ。こんなんで終わったら、格好悪いじゃないっすか」
「お前はなぜ街を破壊したんだ?」
エーベルトが核心に触れる質問をした。すると、エルフィはしばらく固まったのち、ボロボロと泣き出してしまった。
「お、おいおい。どうしたんだよ」
突然のことにエーベルトも慌ててしまう。
「エーベルト、女の子泣かせた」
フュールが半目を作りながら言ってくる。
「な、泣かせたくて泣かせたわけじゃない!」
「まぁいいじゃないの。――それで、なんで破壊してたの?」
フェミリーが再度質問をする。
「⋯⋯妹が殺されたっす」
「妹が? 一体誰に」
「⋯⋯髪が確か明るい色で、そう。まるでマギアビーストみたいな雰囲気を纏っていたっす」
「髪が明るい色でマギアビーストみたいな⋯⋯あ――」
そこでエーベルトは思い出した。そのマギアビーストのような雰囲気を纏った男のことを。
と、エーベルトが思い出したそのときだった。
「おや? これはこれは。エーベルト君とマギアビースト諸君ではないか」
「! アンタは⋯⋯!!」
エルフィが驚きに目を見開く。そして次の瞬間、エルフィの顔は怒りの表情に染め上げられた。
「⋯⋯今さらどの面下げてやってきたっすか。妹を殺した張本人が」
「! なんだと⋯⋯!?」
エーベルトが驚きの声を上げる。しかし、エーベルトの予想は合っていたようだった。そこに立っていたのは、アーボレス大陸にてカミラのマギノステインを奪った、オズウェル・ドルフレッドその人だったのだ。
「妹? ――ああ、あのちんちくりんな少女か。それよりも君、その服装⋯⋯」
そう言ったあと、ニヤリと口を歪める。
「ふふふっ。まさか君もマギアビーストとはね。驚いたよ。ヴェルマット大陸のルガランドにて街の破壊をしているという噂を聞きつけて来たが、まさか君だっとは」
「話を逸らすなっす! 妹のこと絶対許さないっす! お前を絶対殺すっす!」
エルフィが肩を上下させながら叫ぶ。それに対し、オズウェルは面白そうに笑う。
「殺す? まぁ好きにすればいいさ。でも早くした方がいい。私の計画が進行しないうちにね」
そう言ってオズウェルは空高く飛び上がっていく。そのあとをエルフィが追おうとしたが、エーベルトに止められた。
「待てエルフィ! 今追ってもどうにもならない!」
「離せっす!! くそっ!」
そう言って無理やり振りほどく。しかし、オズウェルはそうしているうちにどこかへ消えてしまった。
「あいつめ。一体何しに来やがった」
「でも被害は無かった。良かった」
「そうね。一応マギアビーストの力を操る力は持っているようだし、被害が無くて良かったわ」
「⋯⋯こ、怖かったです」
3人がそれぞれの意見を言う。しかし、エルフィだけは口を開かなかった。
「帰るっす。街を破壊してすまなかったっす」
そう言ってエルフィは走っていってしまう。
「待ってくれエルフィ! 話があるんだ!」
エーベルトも追おうとしたが、マギアビーストのの身体能力の前に適うはずがなかった。
「くそっ! オズウェルの野郎! いつも邪魔しやがって!」
「エーベルト、怒っても仕方がない。一度現状を報告に学院へ戻る」
そう言ってフュールが魔法を唱えると、光の輪がエーベルトたちを包み学院へと転移した。




