27話『ルガランドの危機』
「⋯⋯おはよう⋯⋯ございます⋯⋯」
翌日の朝。
エーベルトとマギアビーストのは朝早く、対策本部の地下室へと集まっていた。
「ああ。おはよう、ってエーベルト、顔色が悪いが大丈夫か?」
そう。今のエーベルトの顔色は文字通り顔面蒼白だったのだ。
その理由はフュールにあった。先日地下室から出る際にフュールに部屋に行くと言われ断ったのだが、寮に戻り寝ようとすると、なんとそこにフュールがいたのだ。それもベットにもぐりこんでモゾモゾしていた。それだけだったらいいのだが、見張り役のフェミリーまで入ってきて、昨日の夜は全く眠れなかったのだ。前にもこのようなことがあった気がする。
「⋯⋯い、いえ。心配なく」
「そ、そうか。じゃあ早速だが、ヴェルマット大陸へと行ってもらう。気をつけることはあちらでマギアビーストが暴れている可能性があること。それだけだ」
「分かりました。では行ってきます!」
フュールが転移魔法を使い、光の輪がエーベルトたちの足元に現れる。
「――無事を祈る」
ヴェローザがそう言った瞬間、エーベルトたちはいなくなっていた。
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「⋯⋯ん」
エーベルトが起き上がると、街の道ばたに倒れているということが分かった。相変わらずエーベルトだけは気絶するようである。と、何やらフュールがエーベルトを見ている。エーベルトは恐る恐る聞いた。
「おい⋯⋯お前今なにしようとしてた」
「何も」
「本当か?」
「⋯⋯」
「答えねぇのかよ!」
何回目かも分からないやり取りをしてエーベルトは立ち上がり辺りを見回す。
基盤の目のように綺麗に区画された街である。天気の加減かまるで街全体が宝石のように青くツヤツヤと光っていた。
「キレイな街だな」
「ええそうね。こんな街がヴェルマット大陸にはあるのね」
「⋯⋯えーと、ルガランドって書いてありますね」
カミラが目を細めながら立っている看板を見る。そこにはこの街の名前――ルガランドが書いてあった。
「ルガランドか。うん! いい街だ!」
と、言ったその時だった。
どーんという爆発音が街中に響いたかと思うと、次の瞬間爆風がエーベルトたちを襲った。
「くっ――。大丈夫か! 」
「大丈夫。それよりも今のは?」
「街の方だったわね⋯⋯」
「まさか、そんな⋯⋯」
4人の狼狽が口から出てくる。それも仕方のないことである。ここに来たばかりで面倒ごとに巻き込まれたのだから。
「とにかく爆発音がした場所に行ってみよう」
そう言ってエーベルトは走り出した。そのあとを追うようにしてフュールたちも走っていった。
それから数分後。エーベルトたちは爆発音がしたと思われる場所へとたどり着いていた。たどり着いたのはいいが、しかし、今の状況はよくなかった。
「ふん、アンタら何しにきたんすか? まさか、殺されに来たんすか?」
そう。爆発音の元凶、そこには『マギアビースト』と思われる人物がいたのだ。
髪は焦げ茶色で肩をくすぐるくらいの長さ、顔は比較的幼い顔をしていたが、今その顔は憤怒の表情で彩られていた。
「お前は⋯⋯マギアビースト、なのか?」
エーベルトが恐る恐る問うと、マギアビーストはキッと鋭い目付きを作ったのち、口元を笑みに歪ませて言った。
「そうっすよー。アタシがマギアビーストの、エルフィ・ジークリットっす」
エルフィがそう言うと、エーベルトたちの面々は固まった。――まさかこんなに早く見つかるとは思ってもいなかったのだ。
「お前が、マギアビースト⋯⋯」
そこまで言ってエーベルトはハッと思い出した。ヴェローザがマギアビーストが街を破壊している可能性があると言っていたことを。
「お前⋯⋯なんでこんなことするんだ!」
「こんなこと?――ああ、街破壊のことっすか。そうっすねー。自分の力に惚れ惚れしてるから、とかっすかね?」
「なっ⋯⋯!」
エーベルトの狼狽が口から漏れる。それに対してエルフィはきょとんとしていた。
「絶対に⋯⋯封印してやる⋯⋯」
「え? 聞こえないっす」
エルフィが挑発するように耳に手を当てる。それを見たエーベルトは目一杯息を吸い込み、叫んだ。
「絶対に封印してやるよおおお!!」
「うわっ! なんすかいきなり!」
突然大声を出されたためエルフィがぷんすかと怒る。だが、エーベルトはそんなこと構わずにじっとエルフィを見据えていた。それを察したエルフィは笑顔から一変、真剣な表情に変わり言った。
「そうっすか。分かったっす。そっちがその気ならアタシも本気で行くっす。封印が何か知らないっすけど、封印なんてされないっすから」
そう言い終わったとき、エルフィの身体が発光し、次の瞬間エルフィの服装は魔装に変わっていた。オレンジ色のドレスのような魔装だ。
そして虚空に手を掲げ、唱えた。
「――<魔槌・ディムロス>」
すると虚空から魔のオーラをまとったごつい槌が現れ、エルフィの手に収まった。一見すると重そうな槌もエルフィは片手で持っていた。
「その姿にその武器⋯⋯本当にマギアビースト」
フュールが驚愕に目を見開き言う。
「だから言ったじゃないっすかー。信じてくれないなんてひどいっすよー」
エルフィが軽い調子でそんなことを言う。すると、その態度が気に食わなかったのかフェミリーが口を開いた。
「あらあら。1人だけ魔装を纏っていい気になるなんて、気が早いんじゃないの?」
「どういうことっすか?」
「まだ分からないの?――私たち3人、マギアビーストなのよ」
フェミリーがフュールとカミラを抱き寄せ、言う。するとエルフィは意外そうに目を見開き言った。
「へぇ〜。そうだったんすね。その3人がマギアビースト。なんか弱そうっすね」
そう言ってくすくすと笑うエルフィ。
「な、なんですって!? ⋯⋯ふん、分かったわ。その喧嘩、買うわ」
そう言ったとき、フェミリーの身体が淡く発光し、次の瞬間フェミリーの服装は局部魔装に変化していた。それと同様にフュールも局部魔装を身につける。
「ほう。本当にマギアビーストだったんすねー。感心したっす」
「あなたも信じていなかったの?」
フュールが首を傾げながら問う。
「んまぁ半信半疑ってとこっすかねー。――それで喧嘩ってなんすか?」
「お前とフュールたちとのバトルだ」
と、横からエーベルトが割り込み、言う。
「どういうことっすか?」
「簡単な話さ。お前が自惚れてんなら、俺らが破壊を止めりゃいいんだろ?」
エーベルトが挑発気味に言う。
「そうっすねー。ま、止められないと思うっすけど」
「それはどうかな? フュール、フェミリー。頼んだぞ」
エーベルトが言うと、2人はこくんと頷いた。2人ともやる気満々である。
「そうっすか。なら――」
そう言って下に屈む。
「止めれるもんなら、止めてみろっす!」
言ってエルフィは高く飛び上がる。そのジャンプの高さから身体能力の高さが伺える。それを追うようにフュールとフェミリーもジャンプした。




