22話 『エーベルトの策』
「アゼウロスが復讐してくるだって!?」
MB対策本部地下室。
エーベルト、フュール、フェミリー、カミラの4人が揃っている中、ヴェローザはエーベルトの胸ぐらを掴みながら言った。
「そ、そうです」
「お前はそれを止めなかったのか!? 生徒の命がかかってるんだぞ!?」
ヴェローザは言いながら顔を近づけエーベルトを激しく揺らしていた。
「と、止めましたよ俺だって! だけどやつはマギアビーストを殺すと言っていたんですよ!?」
エーベルトが言うと、ヴェローザはやっと胸ぐらから手を放した。ヴェローザもかなり動揺しているようだった。
「エーベルト。マギアビーストを殺すと言っていたのは本当?」
怪訝な顔をしながらフュールがそう言ってくる。フュールは恐らく自分に害が来ると予想しているだろう。
「ああ、本当だ。アゼウロスは大昔の復讐でマギアビーストを殺ると言っていた」
「アゼウロスちゃんたら、大昔私たちにやられたことを覚えていないのかしら〜?」
挑発するような口調で肩をすくめながらフェミリーが言う。
「私は大昔のこと覚えていないので何とも言えませんが、アゼウロスというのは強いのですか?」
カミラが首をかしげながら言うと、フュールがそれにすぐさま答えた。
「アゼウロスはマギアゲールをしていた頃の軍の竜。マギアビーストの敵ではないけど、それなりに強い」
「そ、そうなんですか」
フュールの言う通り、アゼウロスは昔の軍の竜。鍛えられていて、強さはかなりあるだろう。学院を壊し、生徒たちを殺すなど、容易にできるだろう。
と、そんなことを考えていると、ヴェローザが咳払いをしながら言った。
「とにかく、新たなマギアビーストを探しに行くよりも、まずはアゼウロスの対応だな」
「あ、それなんですが⋯⋯」
エーベルトがしぶしぶ手を上げる。
「ん? なんだエーベルト」
「その事に関して俺から提案があります」
「ほう。いいだろう。教えてくれ」
そう言ってヴェローザは耳を出してくる。それに伴ってエーベルトも耳元に口を近づけ策を言った。
「ふっ。なるほどな。エーベルト、いい考えだ」
「⋯⋯よ、よかった〜。怒られるかと思った」
「怒る? 何を言っているんだ。私もちょうどこれしかないと思っていたんだ」
「そ、そうだったんですね」
ヴェローザのいうことに対しエーベルトは力なく苦笑した。
「よし! 今日だけここはMB対策本部じゃなく、AU対策本部だ! 早速だが、作戦を発表する!」
そう言ってみんなの前へと躍り出るヴェローザ。みんな一斉に唾を飲み下した。
「マギアビースト3人で突っ込め大作戦だ!」
『⋯⋯はい?』
ヴェローザの言うことに対し、エーベルト以外は皆同じ反応を示した。
「ヴェローザ先生、いったいどういうこと?」
フュールが半目を作りながら言うと、ヴェローザはふんと鼻を鳴らして言った。
「そのままの意味さ。マギアビーストが昔あのアゼウロスに勝ったと言うのなら、またマギアビーストが戦えばいけるじゃないか!」
「んーでもエーベルト君にキスされて力はあまり使えないのよね?」
フェミリーが少し不満そうに言った。
「大丈夫さ。きっといける。そう思うしかないだろ」
そう言ってタバコをふかすヴェローザ。エーベルト以外の3人は顔を見合わせ肩をすくめていた。
「とりあえず今日のところはこれでおしまいおしまいっと。お前らも寮に戻っておけよ〜」
「じゃあな」とそう言ってそそくさと地下室から出ていくヴェローザ。
不安が残るばかりだが、今は話し合いもできないため仕方なく寮に戻る4人であった。




