6 炎の原
炎の原 ──正面
赤軍が動いた。
地が震え、
炎の原の溶岩が波打つ。
「押し潰せ!」
怒号。
一万の足音。
その中央へ──
ヴァイレンが踏み込んだ。
速い。
いや、重い。
地面が抉れる。
蛇矛が横薙ぎに振るわれた。
轟音。
赤兵がまとめて吹き飛ぶ。
数人ではない。
十。
二十。
一直線に空が開く。
二歩目。
踏み込み。
柄で殴る。
鎧ごと叩き割れる。
三歩目。
蛇矛が円を描く。
衝撃波。
赤の前列が崩壊する。
「止めろ!」
赤の将が叫ぶ。
遅い。
ヴァイレンはもう、中央にいる。
蛇矛を振り上げ、
地面に叩きつけた。
爆ぜる。
巨大なクレーター。
赤軍の陣形が裂ける。
ヴァイレンが蛇矛を掲げる。
「中央、押せ!」
黒軍が動く。
右翼へ視線。
蛇矛の穂先がわずかに振られる。
合図。
バルクスが吼える。
「重歩兵、前へ!」
鉄塊の大鎚が持ち上がる。
黒の重歩兵が踏み出す。
左翼。
ヴァイレンの手が横へ振られる。
ルイが短く命じる。
「槍列、展開」
長槍が一斉に前へ出る。
中央後列。
ヴァイレンが振り返る。
「弓、待て」
弓兵が弦を引き、止まる。
前列。
ハルドが吼える。
「盾、詰めろ!」
盾兵が密集する。
「投擲槍、まだだ!」
槍兵が構えたまま踏み止まる。
炎原の中央。
黒軍の陣が前へ押し出される。
そこへ──
赤の将が踏み込んだ。
長槍。
赤い魔力が噴き上がる。
槍先が地面に触れた瞬間、
爆発。
炎柱が立つ。
ヴァイレンは煙の中から現れた。
無傷。
蛇矛で槍を弾く。
火花。
衝突。
「黒狼ッ!」
「うるせぇ!」
激突。
槍と蛇矛がぶつかるたび、
衝撃が走る。
互いに退かない。
互角。
その背後で。
赤軍が動いた。
赤当主、エルン・カルザンが戦象の上から声を張る。
「金を討ち、玉璽を簒奪した黒に正統はない!」
五万の赤軍が呼応する。地鳴りのような気勢。
ヴァイレンが笑う。
低く、荒い。
「正統だぁ?」
蛇矛を握り直す。
「金で肥えて、賄賂で腐った連中が正統かぁ!」
赤兵がざわつく。
ヴァイレンの声がさらに上がる。
「魔王はな──」
蛇矛を掲げる。
「生き方なんざ、誰にも決めさせねぇってだけだ!」
空気が震える。
「いまだに義だの金だの引きずりやがって」
「てめぇもクソだが」
「俺らをまとめて殺しに来てる地上もクソだ!」
戦場が静まる。
ヴァイレンの魔力が立ち上がる。
砂塵が渦を巻く。
「てめぇも地上も」
「ぶっ潰す!」
蛇矛を地に叩きつける。
岩盤が割れる。
「来いよ!」
赤軍の前列が踏み込む。
エルンが剣を掲げる。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
面白い、続きが気になると思われた方は、ぜひ下にある【☆☆☆☆☆】評価&ブックマークで応援をしていただけると嬉しいです。
感想もお待ちしております!




