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黒狼の航路(ブラックルート) ― 魔王戦記  作者: 一場れい
第二部 魔王戦争編

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間話 魔力の扱い



 黒耀城・訓練場。


 ヴァイレンが顎で示す。


「お前も、そろそろやるか」


 セレンが首をかしげる。


「……?」


 可愛い。


 ヴァイレンは一瞬黙る。


「……俺らの魔力の扱いだ」


 セレンの表情が引き締まる。


「魔法を使うな。体に流せ」


 セレンは両手を開く。


 ぱっと、光が灯る。


 淡い輝き。


 祝福の力が漏れ、光となって滲む。


「できました」


「ちげぇ」


 即否定。


「光を出すな」


「え?」


「魔力だけだ。光を漏らすな」


 セレンは目をぱちぱちさせる。


「これは祝福の光では……?」


「違う。とにかく光らせるな」


 ヴァイレンは巻藁の前に立つ。


 拳を握る。


 一瞬、空気が重くなる。


 足元の岩床に罅が走る。


 ──ドン。


 巻藁が内側から裂ける。


 束ねた繊維が弾け飛び、破片が散る。


 光らない。


 ただ、砕ける。


 セレンが目を丸くする。


「すご……」


「魔力を“載せる”」


 ヴァイレンが言う。


「火力も出る。身体も硬くなる」


 一歩近づく。


「だが全身に回さねぇと、どっか千切れる」


「千切れる!?」


「腕とか脚とか」


「そんなに!?」


「無駄に散らすな。集中しろ」


 セレン、深呼吸。


 目を閉じる。


 体に魔力を巡らせる。


 ふわっと光る。


 その瞬間、金のポニーテールがふわりと揺れる。


「……光るな!」


 チョップ。


「痛っ」


 セレンが両手で頭を押さえる。


「光らせるなって言ってんだろ!」


「が、がんばります!」




 ヴァイレンは腕を組んだ。


「こんなん、まだ初歩だ」


 セレンがきらきらした目で見上げる。


「すごいです」


 ヴァイレンは右手をかざす。


 空間がわずかに歪む。


 虚空から、丈八蛇矛が現れた。


 柄を掴む。


 蛇矛の柄に、静かに魔力が流れる。


 一瞬。


 踏み込みもなく、投げる。


 ──轟。


 蛇矛は一直線に彼方へ消えた。


 音が遅れて追いつく。


 セレンが固まる。


「……え」


「体と武器に魔力を載せると、こうなる」


 平然と言う。


「すご……」


「それだけじゃねぇ」


 ヴァイレンはもう一度、手をかざす。


 遠くで何かが空気を裂く。


 次の瞬間。


 蛇矛が一直線に戻る。


 ヴァイレンの手へ引かれるように軌道が収束する。


 そのまま手の中に収まった。


 ピタリと止まる。


「飛ばすのも、戻すのも魔力だ」


 セレンが素直に頷く。


「便利ですね」


「便利、で済ますな」


 ヴァイレンは鼻を鳴らす。


「武器は手足と同じだ」


 軽く蛇矛を回す。


「飛ばしたくねぇもんは、持ってる武器に流し続ける」


「こんな使い方地上では聞いたこともないです」


「魔法のかかった剣とかなら出来るかもしれませんが」


「地上とここは違ぇ」


「魔素が濃い」


 当然のように言う。


 セレンは自分の剣を見る。


「……私も、できるようになりますか」


 ヴァイレンは一瞬、黙る。


 それから視線を外す。


「なんとかなんじゃねーの」 


 セレンが小さく手を挙げる。


「戻らなかったらどうするんですか」


 ヴァイレンは、また手をかざす。


 空間が揺れる。


 そこに、二メートルほどの別の蛇矛が現れる。


「普段から魔力を馴染ませてるから問題ねぇ」


 セレンが目を丸くする。


「まずは体からだ」


「はい!」


 素直に構え直す。



最終的にヴァイレンの尊厳が削られるようになります。


最後まで読んでくださりありがとうございます。

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