35 崩落の後
黒耀城の門が開く。
レイゼンが歩み出る。
参謀が並走する。
「北西区画、救助優先」
「循環層の流量を一時制限」
「天蓋監視、調査を開始」
歩きながら、淡々と告げる。
広場では悲鳴が上がる。
火の手があがり、落石が道を塞ぐ。
瓦礫の下から声がする。
慌ただしい。
レイゼンは足を止めない。
片手をかざす。
周囲の落石が、静かに崩れる。
石塊が砂へと変わり、崩れ落ちる。
道が開く。
ヴァイレンが苛立ちを隠さず言う。
「どうすんだよ、これ」
レイゼンは前を見たまま答える。
「アトラエを復興せねばならぬ」
即答。
セレンが問う。
「……勇者って、何なんですか」
震える声。
「どうして、あんなことが出来るんですか」
ヴァイレンは黙る。
レイゼンが小さく息を吐く。
「貴様と、先の勇者を通じて理解した」
足を止め、振り向く。
「勇者は神秘ではない」
低い声。
「理の外に触れる存在だ」
一拍。
「制御を欠けば、災厄になる」
「──結果が、そこにある」
セレンは、息を呑む。
視線の先。
砕けた広場。
崩れた建造物。
罅の走った天蓋。
それが、答えだった。
黒耀城、作戦室。
老文官が告げる。
「魔素循環率、局地三割低下」
「支持層、復旧百年以上」
「同規模の破壊があと二度起きれば」
一拍。
「魔界は崩落し、地上も巻き込まれましょう」
沈黙。
レイゼンが立ち上がる。
「次が来れば」
「魔界は持たぬ」
迷いはない。
そして、淡々と。
「ゆえに、来させぬ」
空気が止まる。
参謀が問う。
「教会は止まりますか」
「止まらぬ」
即答。
「止まらぬなら、止めるまでだ」
一歩、玉座前へ。
振り返る。
「勇者を止める」
「止めるのは勇者ではない」
「魔王だ」
一拍。
「教会が次を放てば」
「それは戦ではない」
「自滅だ」
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