26 赤と蒼
──赤郝城・謁見の間
蒼の使者は、礼を尽くしていた。
だが対等を装っている。
「黒の勢いは止まらぬ」
「蒼と赤が連携すれば、均衡は保てる」
言葉は滑らかだ。
エルン・カルザンは黙っている。
赤い角の当主。
視線だけが、冷たい。
「……教会も動く」
蒼の使者が続ける。
「勇者が再び来る」
一瞬。
空気が止まる。
エルンの指が、肘掛けを叩く。
「先日、地上から西方教会の使者が訪れた」
「どこから来た」
静かな問い。
「我らの直上は南洋だ」
「西は紫」
「東は蒼」
「北は黒が退けている」
蒼の使者が、わずかに詰まる。
「……短縮門から」
「蒼の地から、通したと?」
言葉を遮る。
エルンは立ち上がらない。
だが視線が鋭い。
「教会を引き入れたのは、蒼か」
沈黙。
蒼の使者は否定しない。
それが答えだった。
エルンは鼻で笑う。
「黒を討つために、地上を招く」
「次は赤か?」
使者が言いかける。
「誤解だ」
「違う」
エルンは即座に断つ。
「裏切りの匂いがする」
エルンは武人だ、
政には疎かったが、裏切りだけは鼻が効いた。
蒼が翻らなくとも、
教会は背から刺してくるだろう。
謁見の間の空気が冷える。
「赤は正面から戦う」
「背後に地上を置く気はない」
蒼の使者は、静かに退く。
策は、通らなかった。
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