25 赤──教会の使者
赤の都カザリア。
赤郝城。
謁見の間。
赤い角を生やした長身の人型種族が立ち並ぶ。
その中を、異国の装束の男が通された。
西方教会の伝令。
顔色は悪い。
ここまで辿り着くだけで、覚悟が要った。
高座に座る赤の当主。
エルン・カルザン。
くの字に曲がった大きな赤角。
揺れない眼。
「要件を」
短い。
使者は膝をつく。
「勇者が……数名魔界で消息を絶ちました」
周囲がざわめく。
「黒は統一を進めています」
息を整え、続ける。
「今こそ、赤と教会が手を結ぶ時」
「共に黒へ当たるべきかと──」
沈黙。
当主は、しばらく何も言わない。
やがて問う。
「勇者は貴様らにとってただの刺客か」
魔族にとって勇者とは魔王を斃す存在。
何度も歴史の中で現れ、魔王を名乗れば必ず勇者によって屠られた。
使者の喉が鳴る。
「……」
「答えよ」
「……すべての勇者はそのような扱いをされていません」
それが答えだった。
赤の当主は目を伏せる。
「義を選別した時点で、それは義ではない」
静かに言う。
「我らは黒に抗う」
「だが、教会のためではない」
視線が刺さる。
「勇者を駒にする理には、与せぬ」
使者は震えた。
「では、協力は──」
「断る」
即答。
「赤は赤の義で戦う」
「地上の理に縋らぬ」
使者は深く頭を下げた。
帰路は遠い。
そして赤は、静かに兵を再編する。
赤の戦を、続けるために。
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