21 ハーレム勇者
──聖堂中央
神官たちの詠唱が、低く、揃って響く。
「女神アルスレインの名のもとに――」
白い石造りの大聖堂。
高い天井から光が降りる。
祈りの声。
鐘の音。
その中央に――
一人の男が立っていた。
金髪。
紫の瞳。
鎧は白銀。
長身。
整った顔立ち。
無駄のない姿勢。
腰に聖剣を帯び、口元にわずかな笑みを浮かべている。
勇者ジャスティス。
「……お呼びですか?」
明るい声だった。
だが、軽さはない。
「勇者ジャスティス」
祈祷長が名を告げる。
「君に使命を与える」
ジャスティスは片膝をついた。
頭は下げる。
だが深くはない。
「承ります」
その背後で、再び光が弾ける。
続いて四つの影が現れる。
赤髪の少女が腕を組み、そっぽを向く。
赤髪で腕を組み、
露骨にそっぽを向く少女。
「……ふん。
あたしは別に、
あんたのためじゃないし」
銀髪で落ち着いた雰囲気の、
長身の女僧侶。
「無茶はしないで。
守るのも、私の役目だから」
眼鏡をかけ、
魔法書を抱えた知的な女。
「状況把握が最優先ですね。
……計算、合います」
小柄で、ピンク髪
幼い外見の少女。
「えへへ!
いっしょにがんばろーね!」
神官たちが息を呑む。
祈祷長が問う。
「……これは?」
「仲間です」
ジャスティスは当然のように答えた。
「彼女たちとの絆が、俺の力です」
一瞬の沈黙。
祈祷長は逡巡し、やがて頷く。
「よろしい」
「任は二つ」
「勇者セレンの奪還」
「そして、勇者バニングの捜索」
「魔界へ向かえ」
「必要とあらば、魔王との交戦を許可する」
討てとは言わない。
ジャスティスは微笑んだ。
揺るぎのない、自信の笑み。
「了解しました」
背後の四人も、それぞれに応じる。
疑う者はいない。
セレンは囚われている。
バニングは救われるべき存在。
勇者が三人も揃えば、魔王に敗れるはずがない。
祈祷長が最後に告げる。
「魔界は理の外にある」
「だが、君たちには絆がある」
「必ず成し遂げよ」
転移陣が再び輝く。
五つの影が白に包まれ、消えた。
聖堂には、光の余韻だけが残る。
ジャスティスは伝えられていなかった。
セレンはすでに黒の側に立ちつつあること。
バニングは救出を待つ場所にいないこと。
教会は、静かに一手を進めた。
その先を見誤ったまま。
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