表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒狼の航路(ブラックルート) ― 魔王戦記  作者: 一場れい
第1部勇者動乱編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/100

20 教会 二度目の沈黙

 西方教会、本部。


 白い石の聖堂は、今日も変わらない。


 祈りは絶えず、香は焚かれ、光は高窓から差し込む。


 だが。


 空気が、重い。


「……報告は」


 祈祷長の声は静かだ。


 神官が一歩前に出る。


「勇者バニングより、定期信号の更新がありません」


 勇者バニングは帰らない。


 祈祷師の報告は変わらぬ。


「転移痕跡、消失」


「魔界内部にて反応途絶」


 会議は重い。


 そこへ、静かに扉が開く。


 蒼い角を生やした使者が入る。


 枢機卿の一人が立ち上がる。


「無礼──」


 使者は一礼だけする。


「時間が惜しい」


 その一言で空気を握る。


 法皇が視線を向ける。


「用件は」


 蒼の使者は淡々と答える。


「勇者セレンは生きている」


 室内が凍る。


「どこだ」


「黒耀城」


 一拍。


「黒に保護されている」


「保護だと?」


「そうだ」  


「確証は」


「短縮門の反応と我らの観測だ」

「勇者バニングは黒と交戦後、魔界内部で消息を絶った」


「勇者が魔界に留まる」


「教義上、どう扱う」


 沈黙。


 枢機卿の一人が怒る。


「異端だ!」


 ───


「蒼は黒の拡張を望まぬ」


「だが単独では抑えきれぬ」


 一拍。


「協力を提案する」


 法皇の目が細まる。


「何を差し出す」


 一枚の地図を広げる。


 地中に矢印。


 蒼の使者は答える。


「三つ」


 指を立てる。


「第一。短縮門の経路一部を共有する」


「第二。黒の軍制配置、魔将の所在」


「第三。東側地殻構造と魔鉱脈の資料」


 室内の空気が変わる。


 これは軽くない。


「見返りは」


「勇者の派遣」


 即答。


「黒を討てとは言わぬ」


「だが黒に戦わせよ」


「勇者が黒と交戦すれば、黒は前線を動かさねばならぬ」


「黒の拡張速度を落とす」


 法皇が沈黙する。


 蒼の使者は続ける。


「蒼は地上を侵さぬ」


「黒が勢力を伸ばせばいずれ地上に出る」


「十年後、脅威となるのはどちらか」


 答えは言わない。


 相手に考えさせる。


「選べ」


「勇者を送らぬなら、黒はさらに強くなる」


 最後に一言。


「我らは敵ではない」


「今は、まだ」


 深く礼をして下がる。


 会議室には、


 計算と恐怖だけが残る。


ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

ブクマや感想・評価など頂けたら、励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ