1 勇者到来
赤の旗が、戦場を染めていた。
義を掲げた赤の軍勢が、黒の支配に抗うように吼える。
剣を振り上げ、魔力を燃やし、一直線に突撃した。
迎え撃つのは黒の兵。
無言。
無駄のない動き。
感情を削ぎ落とした、戦のための軍勢。
――その先頭に立つ男。
黒狼の名を体現する黒髪。
血に濡れた外套。
天を衝く黒き二本角。
丈八蛇矛が振るわれるたび、赤角の兵が宙を舞う。
「邪魔だ。吠える前に斬られろ」
低く、苛立った声。
ヴァイレン・ヴァーレス。
彼が地を蹴った瞬間、石畳が砕けた。
赤の武将が咆哮する。
蛇矛に魔力を乗せ、渦巻く一撃を振り下ろした。
激突。
轟音。
地面が抉れ、衝撃波が広がる。
戦場の中央に、巨大なクレーターが生まれた。
「――まだだ!」
赤の武将が踏み込む。
拳。城門すら砕く一撃。
だが。
「遅え」
ヴァイレンは受け流す。
流れるように柄へ魔力を込め――
振り抜いた。
一撃。
音が、遅れて追いつく。
赤の武将は宙を舞い、クレーターの底へ叩きつけられた。
沈黙。
勝敗は明らかだった。
ヴァイレンは手を振り、血を払う。
角についた赤は、そのままだ。
振り返ろうとした、その時。
伝令が駆け込む。
「ヴァイレン様!
――魔王陛下のもとに、勇者が到来したとの報です!」
その瞬間。
ヴァイレンの動きが止まった。
「……勇者?」
低く呟く。
視線を上げる。
遥か奥。
魔界にそびえる黒耀城。
そこに、片割れがいる。
「兄貴……」
理由は分からない。
だが、胸の奥がざわつく。
戦はまだ終わっていない。
赤も、蒼も、紫も動いている。
それでも。
この瞬間。
確かに――
何かが動いた。
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