第一部 プロローグ
初投稿ですよろしくお願いします
プロローグ
ヴァイレン・ヴァーレス
生まれてくるべきではなかった。
俺が生まれなければ、母は死ななかった。
父は言った。
「二人もいらなかった」
父は、そのまま死んだ。
九歳で初陣に出された。
槍を持たされ、前に出された。
死ななかった。
それだけだった。
強くなければ価値はない。
兄がいなければ、居場所もない。
だから戦った。
殴った。
突いた。
屠った。
気づけば血を浴びていた。
敵の血。
味方の血。
自分の血。
たくさん倒せば、兵がついてくる。
戦功が増える。
それが俺の価値になった。
政は分からない。
帳面も、税も、流通も知らない。
戦がない時、兄は俺を治安維持に使った。
賄賂を受け取る役人。
腐った兵。
そういう連中の前に立って、話を聞く。
それだけで、顔色が変わった。
兄が盤を動かす。
俺が道を開く。
それが俺の役目だ。
戦えなくなったら終わりだ。
その時は、消える。
⸻
赤の旗が戦場を染めていた。
義を掲げた赤軍が吼え、一直線に突っ込んでくる。
迎え撃つのは黒の兵。
無言。
無駄がない。
その先頭に、ヴァイレンがいた。
黒髪。
血に濡れた外套。
天を衝く黒き二本角。
丈八蛇矛が振るわれる。
赤兵が宙を舞う。
「邪魔だ。吠える前に斬られろ」
赤の武将が踏み込む。
拳。
城門すら砕く一撃。
だが。
「遅え」
ヴァイレンは受け流した。
柄に魔力を流す。
振り抜く。
一撃。
音が遅れて追いついた。
赤の武将は吹き飛び、クレーターの底へ叩きつけられた。
沈黙。
勝敗は、それで決まった。
ヴァイレンは手を振って血を払う。
角の赤は、そのままだ。
⸻
ここは魔界。
地上より遥か深く、遠い地。
魔素に満ち、血と誓いが土に染み込む世界。
世は乱れていた。
賄賂は法。
腐敗は徳。
金を冠する王朝、アレス家が、富で魔界を縛っていた。
だが。
賄賂で固めた兵は戦を知らない。
恐怖も誇りも持たぬ者は、本物の戦意の前で崩れる。
ヴァイレンが前から裂き。
レイゼンが後ろで盤を動かした。
王城は包囲され、黄金の玉座は血に濡れた。
黒は止まらない。
黒耀城、玉座の間。
レイゼン・ヴァーレスは戴冠した。
魔界に、新たな魔王が生まれた。
⸻
その時、伝令が駆け込んだ。
「ヴァイレン様!」
息を切らし、叫ぶ。
「──魔王陛下のもとに、勇者が到来したとの報です!」
ヴァイレンの動きが止まる。
「……勇者?」
視線を上げる。
遥か奥。
黒耀城。
そこに、片割れがいる。
「兄貴……」
勇者が、来た。
最後までお読みくださりありがとうございます。
戦記だけどボーイミーツガールラブコメもあります。
魔族と魔王側のお話です。
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