【第9話 カオティックワールド】
いつもありがとうございます。
第9話投下致します。
第10話は6月17日投下予定ですのでよろしくお願い致します
グウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
激しい地鳴りが天地を揺るがし、永久凍土の大地に魔狼の咆哮が轟く。
次々と生まれ出る魔狼の眷属達。
異変はこの地域だけではない。
アフリカ大陸は冥界となり生者の住めぬ死者の世界となった。
北アメリカ大陸は魔界と融合して悪魔達が出現。
南アメリカ大陸は魔獣達の楽園となり混沌とした様相を見せている。
各地にあった弱小国家群は飲み込まれて混沌にシェイクされた。
この一瞬でどれほどの命が失われたのかすら分からない。
「クックックックック…
混沌こそ理想。
分かたれた世界を混ぜ合わせる。
これ程の美酒が有ろうか?」
愉悦である。
既に人としての心など無いのであろう。
「魔狼よ。
哮り暴れるが良い。
鎖は切ってある。
欲するままに世界を飲み込むが良いぞ!」
幽体のまま世界を漂う老魔導師。
彼はその狂気の瞳を東方へ向けて、旧帝都があったラサ海底へと向かうのだった。
「なんだこの大地震は!?」
「そんなことうちが知るわけないやん!」
アマテラス邸も大混乱である。
横に縦に激しく揺れる大地。
空は七色に染まり、まるで世界が壊れてしまったかのようだ。
「ジン!」
ソラが呼び捨てるということはかなり切羽詰まっているな。
「こっちはうちらでなんとかするよってに、天空城行って情報集めてきてや!
ただごとやないで、コレは!?」
「了解だ!
エイリス頼む!!」
[はい、では転移します]
何度体験してもこの転移というのは慣れないな。
世界がブラックアウトして、そこから明るくなったと思ったら別の場所にいるのだから。
腕の再生で訪れて以来のIúpatarだ。
その時に知ったのだが、Iúpatarは世界中の情報を集める事ができるとんでもなく重要な拠点なのだ。
伊達に世界中を回っているわけではないということだな。
魔導眼と呼ばれるカメラを世界中に設置しており、その映像をIúpatarの管理区域にある呪導鏡というテレビで見る事ができる。
いや、本当に開いた口が塞がらなかったぞ。
もっと早く教えて欲しかったな。
手間を少しでも省きたいのでセラムにも一緒に見てもらうことにした。
彼も世界の異変を感じていたらしい。
快く了承してくれた。
「コイツは…」
[とんでもないことになっていますね…]
エイリスですら不安を隠せないようだ。
「セラム、こんなことはよくある事なのか?」
「馬鹿な、聞いたことも無い!」
「エイリス、過去の記録にこの様な現象が発生したというデータはあるか?」
[ありません。
アレは生き物…なのでしょうか?
その記録も記憶もありません]
それが当然なんだろうな。
どう見ても悪魔だ。
念のために言っておくが閣下ではないぞ?
それにあのアフリカの映像…
「どう見ても生きている人間では無いな…」
セラムの言通りだ。
「屍人が蠢いている様にしか見えん」
俺の知識なら分かるのだが、アヌビスやスフィンクスも居るようだ。
しかもスフィンクスはどう見ても死体のスフィンクスである。
所々骨が見えてまるでゾンビだ。
デスフィンクスとでも名付けるか。
我ながらなかなかのセンスだな。
まあ、そんなことやっている場合では無いのだが…
「南米にはグリフォンにワイバーンか」
[あの生き物を知っているのですか!?]
エイリスの驚いたセリフなど初めて聞いた気がするな。
「ああ、俺の世界では神話や伝承になっていた魔獣だ」
[魔獣…]
「その魔獣達、飛んでいるようだがこの高さまで来れるのだろうか?」
セラムとしては気が気でないだろう。
これまで外敵に襲われることもなかったIúpatarだ。
飛行魔獣が出現した以上その危険性は計り知れない。
気になって当然だろう。
「来れると思う。
ワイバーンは竜種でもあるしかなりの高空まで飛べるはずだ」
肩を落とすセラム。
正直、対策を練らなければIúpatarも危ない。
[この世界に何が起こったのかは分かりませんが、先ずは対策を取らないといけませんね]
その通りだエイリス。
何が起こったかなどは後回しだ。
俺達は自分の身を自分達で守らなければいけないのだからな。
原因を探るのは後でいい。
先ずはこの混沌とした世界で生き残らなければならないのだ。
悠長に構えている訳にはいかない。
「セラム、惚けるのは早いぞ。
エイリス、Iúpatarは軌道外へ移動できないのか?」
[任意の位置へ移動可能です]
できない場合は詰んでいたので助かる。
「ならヤマト上空へ一旦避難。
到着後は自転速度に合わせて座標固定だ。
公転軌道の誤差も計算しておけよ。
セラム、ソラへ連絡頼む。
エイリス、後は頼んだ!」
最近はキスするのも慣れてきたな…
感覚が麻痺しているのだろうか?
「了解した!」
[了解です♪
ジン、冴えてきましたね]
「俺はいつだって冴えているさっ!」
[そういう事にしておいてあげますね♪]
「そんなところだけデレなくていいぞ」
[ジン、移動が終わるまで処理能力をお借りします。
しばらく眠っていてくださいね]
「了解だ。
エイリスの活躍が見られなくて残念だよ!」
[後でちゃんとご褒美あげますから…]
そこで俺の意識は完全に途絶えた。
それにしてもご褒美って何だろう?
その頃のヤマトでは…
「ジンちゃんが帰って来るまで死守するで!
ライルはん、リアと一緒に隣島行って現地の人ら守ったって。
何かあったらすぐ連絡や!
紫はんはウチの護衛。
上総はんは都市内の混乱収拾の指揮や。
いおりんは邸内の女中連れて仮設救護所設営や。
アインとクリフも手伝ったってや〜
レヴィはタワーの様子見てきて連絡、必要なら応援出すから現地で対応や。
イマランは…
イマランは…」
何故そこで詰まる?
「あかんわ。
イマラン笑顔無くて怖いから上総のサポートは無理やな。
余計混乱者増しそうや…」
「それ、失敬…」
珍しくムスッとするイマラ。
彼女は普段あまり感情を出さないのだが。
「ジョークやジョーク。
イマランは上総とは別口で市内警護や」
この緊急時にジョークはなかろう…
どこまでいってもソラはソラだな。
「みんな、なんやよーわからんことになっとるけど頑張ったってな!」
親指立ててウインクするソラ。
全員を送り出した後、紫さんと執務室へ戻るソラ。
「うちは今から狼王と話す。
あっちの状況も気になるさかいな。
紫はん、うちが出て来るまで誰も入れたらあかんよ?」
「かしこまりました。
お任せくださいませ」
部屋に入ったソラは、デスクに置いてある水差しからカップに水を注いで飲み干した。
ジンちゃん戻ってくればはっきりするやろうけど…
コレって世界が変化してる感じやな。
うちが昔よー見てたアニメでこんなんあったわ。
ユーラシアがサテライトフォールやった時も大概やったけど、今回はそれ以上やでホンマ。
あん時うちはユーラシアを止めれんかった…
あんな悲劇はもう嫌やったんやけどな。
それでもうちはうちのできる事やるしか無い。
ジンちゃん、頼んだで。
今のうちは一人やない。
ソファーに身を沈ませると目を閉じて意識を狼王に向けるソラ。
〈狼王、そっちはどないや?〉
〈アマテラスか?
暴動とまでは言わんがかなり切迫した状況だな。
砂漠側から正体不明の連中が近づいているとの報告もある。
今レオンハートが見に行っているところだが、ヤマトはどうだ?〉
〈うちも国内はかなりやられとる。
地震がかなり酷かったんや。
建物が倒壊して地割れがかなりできとる感じや。
詳しい被害は報告受けんとわからんのが現状やな。
うちのツクヨミが今Iúpatarで情報集めとる。
戻り次第情報共有する会議がしたいんやけど、動けそうなんか?〉
〈正直、国元を離れるわけにはいかない状況だな。
そちらも似たようなものだろうが…〉
〈おっけーや。
ほなら別の手段考えとくわ。
こんな状況やし、なんかあったらお互いすぐ連絡しよか。
情報は出来るだけ共有しとかなヤバそうな雰囲気や〉
〈了解した。
レオンハートにもそう伝えておく。
お互い荒事になりそうだが無事を祈っている〉
〈お互い様や。
ほな、宜しゅうに〉
狼王とこもヤバそうな雰囲気やな。
ホンマ、どないしたもんか…
色々考えてはみるが一向にまとまらない。
そんな時である。
セラムから緊急の呼び出しだ。
〈アマテラス、いるか!?〉
〈どないしたんやセラムはん、そんなに焦って〉
〈詳しいことはジン・エイリスに聞いてくれ。
とりあえずだがIúpatarをヤマト上空に移動させる。
これはジン・エイリスの提案だ。
事後承諾ですまないがアマテラスへ伝えるように頼まれた。
今彼は管理区域内でIúpatarをヤマトに向けているところだ。
こちらの状況はこんなところだな。
他に急ぎ聞きたいことはあるか?〉
〈セラムはんも大変そうやから合流してからでええよ。
知らせてくれてありがとやで〉
〈すまない、こちらも緊急会議をせねばならなくてな。
では、また後日改めて〉
〈おっけーや〉
ジンちゃんがIúpatar動かすほどの事態が起こっとるって事やな。
ため息しか出んわ…
「紫はん、お茶持って来たってや」
「お疲れみたいですので甘茶など如何でしょうか?」
「助かるわ」
「ではお持ち致しますね」
この優しい気配りが、今はたまらなく心に沁みる。
〈アマテラス様、聞こえますか?〉
今度はリアかいな…
〈どないかしたん?〉
〈先程こちらの島の西側に黒い翼を持った人型の者が1体現われましてライルが交戦致しました。
見たこともない魔法を使用された為苦戦しましたが、ネルソンの支援もあってなんとか撤退させることには成功致しました。
取り急ぎ報告をと思いまして連絡致しました〉
次から次へとホンマ厄介やわ。
〈リア、報告ありがとやで。
次に同じ連中が来たら手を出さんと連絡もらえるか?
うちも見てみたいよってに〉
〈かしこまりました。
ライルにもそのように伝えさせていただきます〉
〈頼んだで〜〉
ソラの心にはサテライトフォールの悪夢が眠っている。
たった一人でこの世界へ飛ばされたソラ。
この世界で初めて親友となったプロトタイプのユーラシア。
彼の望みを知った時、ソラは止めなければならないと思った。
頭では分かっていた。
けれど、ソラは誘惑に負けたのだ。
元の世界に帰るという甘い誘惑に。
ユーラシアにとってソラは実に都合の良い駒だった。
己が目的を果たす為、ソラの求めていた人間を演じた。
その悪夢が、今でもソラの心の奥に深い傷を刻んでいるのだ…
第2章スタートです。
いつもお読みくださってる皆様、ありがとうございます。
リアルで親の不幸があったため執筆を飛ばす可能性が出てきました。
現在のストックは12話なのでそれまでは大丈夫です。
飛ばす場合はあとがきで告知します。




