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【Chaotic Earth】  作者: 音屋
7/21

【第7話 ヤマトオールスターズ】

お読み頂きありがとうございます。


第7話投下します。


第8話は6月3日0時に投下予定です。



帰国した俺を待ち受けていたもの。


休暇ではないそれは…


捕虜の扱いをどうするかという難題であった。


25万という結構な人数なので国内にポンと放逐するわけにもいかない。


色々と検討した結果、隣の島を開拓させるということになった。


働かざるもの食うべからずである。


ようするに自分達の食い扶持ぐらい自分達で作れということだ。


やって来たのはアイルランド島。


調査もせずに放逐するほど鬼畜ではないので調査隊を派遣することにした。


リーダーは俺、アインとライルで鉄板トリオである。


「サポート要員として護衛役の狼人クリフ、世話役としてアマテラス邸から女中の伊織さんに来て頂いた。


ソラはもちろんお留守番、セシリアはその護衛である。


ライルとセシリアはセラムの好意で今後も俺(エイリス)の部下として仕えてくれることになった。


さて、出発前のソラだが…


「なんかおもろいもんあったら呼んで〜」


だそうだ。


イイカゲンニシロコノヤロウ。


とりあえずリアル世界でのベルファスト付近にベースキャンプを設営する。


それからアイルランド島を三つのエリアに分け各人の探索エリアを決めた。


アインが北部、ライルが南部、俺が中部といった感じだ。


飛べないアインが最も範囲の狭い北部なのは言うまでもないか。


俺に関して言えばエイリスに頼っている部分が大きい。


飛行できるかどうかで調査速度が雲泥の差なのだ。


で、調査を始めて約一週間が経過したわけだが、東部エリアは至って平穏。


シャノン川を超えて西側エリアに入った途端に事件は起こった。




「巨人だとっ!?」


[オーガですね、珍しい]


「オーガ!?


異世界とは言え地球だろ?


なんでオーガが居るんだ!」


[ジンの世界には居なかったのですか?]


「あんなのは伝承や神話の中だけだっ!」


[違う世界なのですから伝承が真実になっていてもおかしくないのでは?]


「そんな理屈…」


[冗談ですので間に受けないでください。


ですがこの世界には確かに異質な者達が存在します]


「ファンタジーだ…」


[ジンの頭がファンタジーです]


…………


[少しは落ち着きましたか?]


「エイリス、一ついいか?」


[なんでしょうか?]


「俺の頭がファンタジーとは?」


[言葉通りですが?]


期待通りの答えをありがとう。


流石はエイリスだ。


「とりあえずだ、エイリス」


[はい?]


「この世界には他にどんなファンタジーが居る?」


[ジンのような?」


「違うっ!」


コイツはいけしゃあしゃあとよくも言う。


「わかっててやっているだろう!」


[オーガのようなですね?]


「そうだっ!」


[そうですね…


ジンもなんとなく想像できているでしょうが彼らも元々は人間です]


いや、まったく想定外だ。


エイリス君、買い被るのも程々に。


予想もしていなかったぞ?


[一般コアにエルフやドワーフといったフォーマットが入っていましたよね?]


ああ、入っていたな。


[その劣化版になりますが、一種類だけフォーマットが入っているインスタントコアというものがあるのです]


そこまで言われたらさすがに俺でもわかる。


「つまり、帝国人の道楽でつくられた存在だということか」


[確かにそうなのですが、貴族や騎士達が趣味で狩る為に生み出された合成種族です]


「殺される為に生み出されたってことか…


半年も経っているのに知らなかったとはな」


[ジンは基本的に街が活動の中心でしたから仕方ありません。


魔奴隷は街に居ると見かけることもありませんから]


「魔奴隷?」


[このようなイレギュラーな奴隷達のことを総じてそう呼んでいるのです]


なるほどな。


「それにしても大きいな。


元が人間とは思えん」


[合成体(キメラ)ですから。


オーガは大型動物と人間の細胞をベースに作られています]


サラッと言うエイリス。


最近慣れてきたぞ。


つまりだ。


俺の世界観ではこの世界を測れないのだ。


ここは異世界だ。


俺の常識を持ち込むほうが間違っている。


「元が人間ということは話せるのか?」


[はい、話せますよ]


よし、モノは試しである。


この島の開拓を行うなら避けては通れないだろうしな。


「そこのオーガの人!


聞こえるか!?


話しがしたい!


構わないか?」


宙を舞う小さな子供の声に少し戸惑ったようなオーガだが、理知を含んだ落ち着いた瞳をしている。


「儂が怖くないのか?


小さき者よ」


「怖い?


何故だ?


あなたは心までオーガなのか?


そうでなければ何も怖れる必要など無い」


言い放つ俺。


我ながら良いセリフだ。


「ハッハッハッハッ。


なかなか肝が座っておるのう。


愉快愉快!」


「俺はツクヨミと言う。


あなたは?」


「儂はネルソンじゃ。


して、何用じゃ?


呼び止めたからには用件があろう」


5メートル近い巨体を屈めながらネルソンと名乗ったオーガは俺を覗き込む。


「この島を開拓しようかと思っているんだが、ネルソン以外にも仲間達が居るのかと思ってな」


「この島には結構な数がおるぞ。


今は西側に集まっておるがこの島は元々帝国人の狩場じゃからな。


島の南東部に奴らが拠点に使っておった城があるはずじゃ」


新情報だな。


やはり話しかけて正解だったようだ。


「帝国の連中が放しおった合成ドラゴンに壊されていなければじゃがのう」


そうか、合成ドラゴンか。


それは強そうだな…


ん?


合成ドラゴン?


……


合成ドラゴンだとおおおおおおおっ!?


[合成体(キメラ)の中でも一番厄介なのが合成ドラゴンです。


人間をベースに加えていないので本能的に活動します]


「南東の山を根城にしておってのう。


儂らはアヤツが恐ろしくて川を越えれんのじゃ」


それはそれは…


大問題発生ではないか?


「ネルソン、情報提供感謝する。


礼と言ってはなんだが、その合成ドラゴンは俺達がなんとかしよう」




ネルソンと別れた後は一旦キャンプへ戻ることにした。


キャンプでは新帝国が白王との同盟を破棄して宣戦布告したことを知らされる。


あまりに予想通りな展開で拍子抜けだな。


その後全員集まるのを待って情報交換したのだが、ライルが南東部で合成ドラゴンを見たと言う。


全長30メートルはありそうな大型ドラゴンのようだ。


ソラに報告するのが怖い。


非常に嫌な予感がする。


だがしかし!


しない訳にもいかないよなあ。


鬱だ…


〈ソラ、報告がある〉


〈どないした、なんかおもろそうなことあったか?〉


〈面白いかどうかわからんが合成ドラゴンがいる。


なんとかしないと開拓できないぞ〉


〈なんやって!!


そんなおもろいことになっとんか!?〉


〈どうする?〉


〈そんなもん決まっとるがな!


ドラゴン退治やっ!


モンスターハントやっ!〉


〈退治していいか?〉


〈あかん!


そんな楽しそうなことジンちゃん一人で遊ぶなんて許さん!〉


〈いや、遊びでは無いぞ?〉


〈ジンちゃんに任せたらグラヴィティ・フォールでプチッとやっておしまいやん?


せっかくやねんから直接攻撃魔法無しの縛りプレイで討伐クエストやっ!〉


こうして鶴の一声で討伐クエスト発生である。


こんな事になる気がしたのだよ…




ソラが余計な条件を入れてくれたのでいきなり難易度が上がったな。


今回はガチで行かないと危険かもしれん。


討伐クエスト参加メンバーはヤマトオールスターズだ。


俺・ソラ・ライル・セシリア・アイン・クリフ・レヴィ・イマラ・上総・紫の総勢10名。


一部非戦闘員っぽい人もいるが心配は要らない。


ソラ曰く、俺とソラを抜いた上記メンバーにシャーリーとブレンを加えるとヤマト10傑になるそうだ。


レヴィはシャーリーと並ぶ獅人の猛者。


どちらが強いか修行と称してよく衝突している。


イマラはエルフであるにもかかわらずヤマトの剣聖と言われる二刀流の達人だ。


レイピアでなく小太刀を使う変わり者でスピードが化け物じみている。


俺がまともに打ち合うには最低でも10倍の加速を要する程だ。


一体何者なんだろうといつも思う。


今回の留守番は伊織さんだ。


女中さんが留守番で大丈夫なのかって?


俺も不安なのだが、ソラが大丈夫って言っているので信じよう。


それよりも紫さんの10傑入りのが謎だ。


今回の討伐クエストは仲間たちの実力を見る良い機会である。


この機会に10傑全員のフルネームと特徴、ソラ妙名の二つ名を紹介しておこう。




【碧天使(エメランジェ》】ライル・ハワード♂


金髪碧眼、超絶イケメン翼人。


光弓と雷槍の使い手。


弓による狙撃を得意とし、指揮官としても非常に優秀。




【灰色戦乙女(グレイヴァルキリー)】セシリア・ルイスフィールド♀


白銀髪灰眼、長髪の凛々しい翼人


光弓と雷槍の使い手。


槍による戦闘を得意とし、一騎打ちならライルを打ち倒す猛者。




【天狼(テンロウ)】アイン・ブラッドフォード♂


銀髪金眼、天然童顔我儘アイドル。


左利きだが右手に攻守兼用ミスリルクロウ、左手にミスリルレイピアの特殊スタイル。




【冥狼(メイロウ)】クリフ・マイヤー♂


紫髪黒眼、小柄で性別不明な容姿。


稲妻型の特殊双剣、ライトニングブレードの使い手。


よく♀に間違えられるのが嫌なのか言動は男っぽい。




【黒獅子(ダークネスレオ)】レヴィ・ランドロック♂


黒髪黒眼、中肉中背隻眼の獅子。


結構素早いが特攻癖がたまに傷。


漆黒の大剣(バスタード)使い。




【紅獅子(クリムゾンレオ)】シャーリー・コールマン♀


赤髪紅眼、獅子の怪力大女。


姉御肌で面倒見がいい。


真紅の斧槍(ハルバード)使い。




【紅血の薔薇(ブラッディローズ)】イマラ・ロウズ♀


碧髪碧眼、長髪ポニーテールエルフ。


小太刀二刀流で黒の着流姿。


エルフなのに神速剣士で弓は苦手のはみ出し者。


二つ名の由来は、エルフの白い肌が返り血で真っ赤に染まるからだそうだ。




【不壊の樽(イージスバレル)】ブレン・ヴォルグ♂


灰髪茶眼、ぽっちゃり中年ドワーフ。


雷鎚装備の不沈イージス艦。


ドワーフの例に漏れず無類の酒好きでウワバミ。




【完全執事(パーフェクトバトラー)】上総 宗一郎♂


白髪黒眼、ナイスミドル。


ダークスーツに両手共ダーククロウを装備。


瞬発・速度重視の近接戦闘スタイル。


違いのわかる玄人執事。




【深紫の君《ミスティックヴァイオレット》】神城 紫♀


黒髪黒眼、見た目ごく普通のアラサー女中。


戦闘服は深紫のロングワンピース。


単独飛行可能な不思議女史。


刺し身包丁二刀の特殊スタイル。




《おまけ》


【氷巫女(ヒミコ)】氷室 伊織♀


黒髪黒眼、どこから見ても普通の大学生アルバイト。


戦闘服は白蒼の巫女装束。


ドライアイスや氷を武器とする特殊スタイル。


(アイスブレードやダイヤモンドブリッド等)




ソラ…


これで厨二じゃないって言っても全く説得力無いぞ?


「みんな準備はいいか?」


全員が頷く。


危なくなったらソラか俺が片付けるとして、とりあえず俺達は仲間のサポート中心だな。


さあ討伐開始だ!


「攻撃開始!」


「参る…」


最初に飛び出したのは神速イマラだ。


二刀を八の字に構え一瞬で距離を詰める。


飛び込んだ先で華麗な回転斬りを披露するイマラ。


「硬い…」


鱗に直接当たった小太刀は激しく耳障りな音を奏でたが、イマラは軽い呟きと共に鱗を削ぎ落とす様に太刀筋を変化させた。


巨大な鱗が次々と宙を舞い大量の鱗が削ぎ落とされて皮膚が剥き出しになる。


イマラのアタックで剥き出しになった部分を、アイン・レヴィ・クリフの獣人三人が一気に攻め立てた。


「ん〜、クリフは右からね。


僕は左」


「任せなっ!」


アインは右手のクロウを合成ドラゴンの皮膚に引っ掛けるとレイピアを何度も深く突き刺した。


溢れる鮮血が滝の様に流れてゆく。


クリフはライトニングブレードを駆使して剥き出しになった皮膚を縦横無尽に斬り刻んだ。


細切れになった肉片と皮膚が周囲に飛び散り、美しき血潮の華を咲かせる。


レヴィはその強靭な肉体を駆使して合成ドラゴンの背中を駆け上がり、そこから跳ぶことで落下の力を加えた一撃を見舞った。


重力を加えた特大の一発は、合成ドラゴンの片腕を派手に斬り落とす。


激しい悲鳴をあげる合成ドラゴン。


その双眸は真っ赤に燃えて己を傷付けた小さき獲物を追い求めた。


そして、今まさに着地しようとしていたレヴィをもう片一方の竜爪が襲う!


「ちいっ!!


やらせるかよっ!!!」


大剣を盾に竜爪を受け流そうと構えるレヴィ。


「それは悪手でございますな」


刹那、上総が横からレヴィを蹴り飛ばした。


間一髪のところで竜爪から逃れることに成功するレヴィ。


「すまねえ、助かったよ執事さん!」


「なんのなんの、竜爪を剣で受ければ粉々になりますぞ!


気をつけなされ!」


イマラ程では無いにしても上総のスピードも相当速い。


俺の5倍相当ってところか。


闘う執事とか、昔何かで見た気がするな…


上総は両手に50センチ程度のクロウを装備しているようだ。


黒光りするクロウ、材質はなんだろう?


「図体が大きすぎて動きが鈍すぎですな。


とりあえず全部剥いでしまいますかね」


上総は残っている鱗にクロウを掛けて次々と剥ぎ取っていった。


イマラは器用にもクリフの付けた傷を滑りどめに合成ドラゴンの体を駆け上がって行く。


「頃合い…


もう一本は私が貰い受ける…」


小太刀を鞘に戻したイマラ。


「二刀流居合奥義…


伊邪那美!」


左右から旋回と同時に抜刀された神速の小太刀。


一刀目で断ち切れなかった部分を同軌道の二刀目で完全に断つ追い斬りの極意。


小太刀が鞘に納まる頃には、骨まで切断された竜腕が落下を始めていた。


見事な剣技である。


「うふふ。


皆様も楽しんでいらっしゃいますし、私も負けていられませんね」


翼人二人と戦場を見下ろしていた紫さん。


どうやら参戦モードに切り替わったようだ。


ライルの放った光の矢が合成ドラゴンの右目を吹き飛ばす。


セシリアも左目を狙っているが激しく動き回る合成ドラゴンに中々当てられない。


「とりあえず左目も頂いちゃいましょう。


悪い子にはお仕置きですっ!」


はあっ!?


紫さん、悪い子ってレベルじゃないんだが!?


しかも持ってるのって刺身包丁だよなっ!?


それからはまさに一瞬の出来事だった。


紫さんの姿が消えたと思った瞬間に合成ドラゴンの絶叫が響き渡ったのである。


俺がそちらに目を向けると、左目があったはずの部分が風穴になっている合成ドラゴンの姿がそこにあった。


誰か…


一体何があったか教えて欲しい…


このままだと夜眠れなくなりそうだ…


頭上に目をやると血濡れた刺身包丁をペロリとひと舐めする紫さん。


「腕、鈍っちゃったかな?


お目々だけ抜くつもりだったのに…」


怒らせてはいけない人ナンバーワンの意味が分かった気がする…


ひょっとしてタイマンならソラより強いんじゃ?


「上総様、何処からお料理したら宜しいでしょうか?」


お料理だと!?


「左様ですなぁ。


先ずは腹を捌いて内臓を出してから三枚におろすというのは如何かな?」


「かしこまりました。


それでは腹を裂きますので内臓を掻き出して頂けますか?」


えらく物騒な内容をごく簡単なことの様に話している二人。


後ろを振り返ればソラがお腹を抱えて笑っていた…


紫さんの異常な強さに他のメンバーも唖然としている。


「承りましょう」


今度こそ見る!!


穴が空くほど合成ドラゴンを凝視する俺。


紫さんの刺身包丁が合成ドラゴンの腹に刺さる。


そしてそのまま一瞬で10メートル近く掻っ捌いた。


斬っているというレベルでは無い。


とんでもない速度で腹をなぞっただけにしか見えず、そこがパクっと開く感じだ。


開いた腹に腕ごとクロウを突っ込んだ上総は内臓に爪を引っ掛けて引き摺り出す。


俺の目にはもう何が起こっているのか分からない。


「下拵えは終わりましたので後は下ろすだけでございます」


「かしこまりました。


では三枚に下ろします」


スカートの裾を持ち上げた紫さんの白く美しい脚が露わになる。


和服だと動きにくいからとヴァイオレットロングのワンピースを着用している紫さん。


太ももに巻かれたベルトからもう一本の刺身包丁を取り出した。


二本の刺身包丁を眼前に構えた紫さん。


合成ドラゴンの前方に立って空高く刺身包丁を掲げる。


そこからだと全く届かないんだが…


一瞬、刺身包丁が煌めいた様に見えた。


振り下ろされた刺身包丁が空を斬る。


微笑んだ紫さんの目の前で、合成ドラゴンが右・中・左の三枚に下ろされた…


「悪いドラゴンさんの三枚下ろし。


出来上がりです」


スカートの裾をチョンと摘み、満面の笑みを浮かべる紫さん。


笑顔と光景のギャップが凄いことになっている。


「本日のお料理は終了でございます」


ゲラゲラ転げて笑うソラに何事もなかったかの様な上総。


少し悔しそうな表情を浮かべるイマラ。


呆然とその場にヘタリ込む獣人三人衆。


上空で顔を見合わせて呆れるライルとセシリア。


想像以上だった仲間達の活躍に驚いたのは事実なのだが。


俺の出番は無かったな…


お読み頂きまして誠にありがとうございます。


プロットの時点で紫さんはここまで暴走する予定ではありませんでした。


書いているうちに勝手に暴走を始めたのには正直驚いています。


今後も紫さんの暴走癖には泣かされそうですね…

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