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【Chaotic Earth】  作者: 音屋
6/21

【第6話 茶番劇】

お読みくださってる皆様ありがとうございます。


第6話投下致します。


第7話は6月27日0時に投下予定ですのでよろしくお願い致します。

「ごめんやで、心配かけてしもて…」


タワーに戻るとソラがベッドで半身を起こしていた。


「本当ですよ!


びっくりしたんですからっ!」


泣きそうなセシリアである。


「リア、ほんまにありがとうなあ」


「いいえ、アマテラス様がご無事でなによりです」


「リア、うちの時はソラでええよ」


「ソラ様、ですか?」


「それでええ。


ほんでジン、どんなもんや?」


「中央から前はほぼ全て解放済だ。


だが後ろが丸々残っている」


戦況とは別に気になることがいくつかあるんだが…


まあ、後でいいだろう。


「解放奴隷はどないなん?」


「投降者は全て捕虜として拘留してあるが、正直言ってこちらの手が足りない」


「早いこと街に移さんとあかんな」


「それは俺の方でやるからソラは休んでな」


おっと、忘れていた。


「ソラ、動けそうなら一つだけ頼みたい仕事があるんだが?」


「降伏勧告やな?」


さすがはソラ、話しが早くて助かる。


「降伏というか投降勧告だ」


無駄な犠牲は必要ないからな。


「うちはそんなん苦手やからアニーに任せるわ〜」


「なら、その間にライルの様子を見てくるからセシリアとアニエスで勧告しておいてくれ」


「かしこまりましたが、アニエスとは?」


小首を傾げるセシリア。


意外と可愛いな。


「もう一人のアマテラスのことだが、会ったこと無かったか?」


「せやっ、リアは会ったことあらへんな。


ほなちょっと変わるで」


一瞬だけ目を閉じるソラ。


「はじめましてですね、セシリアさん。


アニエスと呼ばれています。


もう一人のアマテラスです」


突然変わったソラの口調に驚きの表情を浮かべるセシリア。


「と、いうことだアニエス。


後はセシリアと打ち合わせしてくれ。


俺はライルのところへ行くよ」


後に残された二人。


少し心配だがなんとかなるだろう。




〈ライル、どんな状況だ?〉


〈ジン様、今どちらに?〉


〈下だ〉


ライルに会いに行くと言ったのだが、飛べない俺はライルを悲しく見上げているのだった。


優雅な降下で見ていて憎たらしいほど様になっている。


イケメンというだけで何をやっても絵になるってのは羨ましい。


「お待たせ致しました。


組織的な抵抗は無くなりましたね。


中央から後ろで白王軍と解放奴隷が衝突を開始しています。


こちらへ回す余力は無さそうです」


「畏る必要は無い。


立って話すといい」


「それは…了解致しました。


このまま放っておけば指揮官のいない奴隷達は一方的に数を減らすでしょうね」


「そうか…


ライル、ご苦労だったな。


少しタワーで休むといい。


ここは俺が引き受ける」


「お心遣い感謝致します。


それでは少し休ませていただきます」


「こちらこそ感謝している。


俺達だけではこうはいかなかった」


「ご謙遜を。


では失礼致します」


ライル、出来る男でイケメンとか。


神という奴は本当に不平等だな。


いや、愚痴ではないぞ?


断じて違うからなっ!




〈上総、聞こえるか?〉


〈これはこれはツクヨミ様。


お急ぎの要件ですな?〉


これだよこれ。


出来る男の仕事は。


平時ならいざ知らず、今は戦時中だ。


連絡が入れば急ぎの要件だとわかる玄人。


白髪黒眼ロマンスグレー、違いのわかる筆頭執事だ。


〈大劇場と闘技場を仮設捕虜収容所として使用する。


準備をしておいてくれ〉


〈全権代理でよろしいですな?〉


〈全権委任する〉


〈かしこまりました。


早速取り掛からせていただきます〉


必要な事を確実に確認する。


相変わらず素晴らしいな上総は。


現実の俺にソックリだ…


何か文句が?




〈紫さん、少しお時間よろしいか?〉


〈まあ、ツクヨミ様。


如何なさいましたか?〉


アマテラス邸筆頭女中の紫さん。


怒らせてはいけない人の筆頭でもある。


ソラでも彼女には頭が上がらない。


黒髪黒眼アラサー女史、実年齢不詳だ。


残念だが聞く勇気は無い。


〈色々あってソラが少し疲れている。


何か美味しい物でも用意しておいてくれないか?〉


〈かしこまりました。


半刻後にはお持ち帰り頂けるように準備致しますね〉


〈よろしく頼む〉


〈それではこれで失礼致しますね〉


通話している事からも想像がつくだろうが二人共普通の人間では無い。


ソラがMearcair(メアーコイル)から持ち出したコアを使用して生体化してあるそうだ。


さてと、後は捕虜の件だな。




〈アイン、捕虜の件どうなっている?〉


〈ジンさん?


ん…パンク寸前かな〉


〈どれぐらい拘束した?〉


〈10万人超えたよ。


壁内西側は全部捕虜エリアになってる〉


〈そうか、受け入れ体制ができれば移送する。


もう少し頑張ってくれ〉


〈イエッサー!〉


アインは狼人で獣人達のリーダーだ。


若いが結構な実力の持ち主である。


とりあえず連絡しておかなければならない相手はこんなところだろう。


後は上総からの連絡待ちだな。




2時間後、闘技場確保の連絡が入り捕虜の移送を始めた。


美都時代からの壮大な闘技場は全面使用で10万人は収容できる。


2万人づつに分けて転移を行い、混乱を避けつつ移送を行った。


現在確保している捕虜は全て収容できたがこれ以上のキャパは無く、以降の捕虜は大劇場に収容することになりそうだ。


ただ、アニエスの勧告後に投降者が急増しているので大劇場だけでは収容できそうに無い。


しかしである。


そこは違いのわかる出来る執事が予備として大倉庫を2つ用意していた。


使わなければ使わないで構わないという体だ。


すし詰めにすれば後15万はなんとかなると思われる。


半日で全てやってしまった手際の良さにも脱帽だ。


もちろん初回移送時に紫さんの特製弁当を忘れずにソラに届けておいた。


俺の分まで用意してくれていたのは流石である。


本当に侮れない二人だな。


新王国の方も防衛線を突破される事なく互角の展開になっているようだ。


そろそろこちらもケリを着けたいところである。




[ジン、サンプルコアそのものは他の騎士達の物と同じモノです。


ですが、どうやらデュアルコア機能を持っているようです]


デュアルコア?


CPUみたいだな…


[心臓部と頭部にコアがあり並列処理できるように組まれていました。


まだ試作テストの段階の様ですが、成功すればプロト並みの性能が発揮されるかもしれません]


と言うわりには嬉しそうじゃないか?


[一つ失ってもシングルコアとして機能するようなので私も研究したい。


ダメ…ですか?]


甘えた声出すんじゃないっ!


鳥肌が立つではないかっ!!


「構わないが、危ないマネはするなよ?」


[ありがとうございます♪]


嬉しそうだ。


本当に嬉しそうだ。


アニエスとエイリス、同じ擬似人格(ゴースト)でこうも差が出るものなのか?


「エイリス、お前達って元になった人格などはあるのか?」


何気ない一言のつもりだった。


ただの興味本位だ。


[はい、私の擬似人格《ゴースト》はユーラシア・アニエス・カスパー・ウィレル・エイリス・ハート。


亡き皇帝の記憶からサンプリングされたものをベースにしています]


なんだとおおおおおお!!


コイツとんでもない爆弾をサラッと置いていったぞ!?


[ベースなのでそれぞれのプロトタイプ毎に調整もされています]


「調整?」


[私にはエイリスの記憶がインストールされていますが、アニエスにはアニエスの記憶がインストールされています]


それぞれ違う擬似人格(ゴースト)がインストールされているということか。


[アニエスは帝都防衛衛星Mearcair(メアーコイル)の管理者です。


スリープ状態になってもMearcair(メアーコイル)が機能停止しないように二人の管理者を並行起動させていました。


もう一人の管理者にはユーラシアの記憶がインストールされていたのです]


クッ、俺の脳細胞がスリープ状態になろうとしている。


「もう一人の管理者?」


[Mearcair(メアーコイル)と一緒に堕ちたとソラが言っていた管理者です。


彼の記憶がユーラシアのものであったからソラに協力したのでしょう]


「どうしてユーラシアの記憶を持った管理者がソラに協力しようなどと?」


[皇帝ユーラシア自身が滅びを願ったからです]


「皇帝が自ら滅びを望むなど俄かには信じられない!」


[皇帝とはアルティメットコアそのものです。


アルティメットコアは、ユーラシア、アニエス、カスパー、ウィレル、エイリス、ハート、6人の皇族を犠牲にして創られた究極のコアです。


6人の人格はアルティメットコアの中で主導権を争いユーラシアが勝ちました。


ですが、長い時に魂が擦り切れてしまったのか、300年程前から自己の崩壊を望むようになったのです]


またとんでもない話しが出てきたものである。


[プロトタイプ6人の擬似人格(ゴースト)には、この6人の記憶データがそれぞれ使用されています]


とりあえず今は心の中にしまっておこう。


白王軍の掃討が先決だからな。




だが、実際のところ白王軍の掃討は楽勝であった。


俺が地上から加速世界で暴れ回る。


空からライルが狙撃する。


10人ちょっと残っていた騎士達も半日ほどで全滅した。


残されたのは大混乱と解放奴隷達。


「ああ、胃が痛い…」


まさか異世界でまで胃痛を体験するとは思わなかった。


[胃の痛覚を切りましょうか?]


「エイリス、そういうことではないのだよ」


[どういうことでしょうか?]


「ストレスってのは感覚でどうにかなるものじゃないのさ」


[面倒でしたら私が事後処理を行いましょうか?]


天啓だ!


神の啓示である!


「エイリス様、是非にもお願いしたい!」


[こんな時だけ調子いいですね…]


そういった流れで事後処理をエイリスに丸投げした俺。


加速世界の疲労を回復するべく深い眠りに落ちた。


俺の主観時間で4日は寝ていなかった為か、丸一日ぐっすり寝てしまったようである。


尚、エイリスの事後処理は見事だった。


今回戦場となったエリアを開拓する要員として志願捕虜10万人を城砦に残す。


白王に対する牽制も込めて前線基地とするようだ。


メインタワーは領主の館として再整備を行う。


壁内に開拓要員の為の仮設テント小屋を設営。


残りの解放奴隷は美都の捕虜収容所に移送する。


同士討ちの関係で40万の奴隷は5万人減っており、実際には35万人の奴隷達を解放することとなった。


収容キャパギリギリである。


初代領主としてはアインをと思ったようであるが、アイン自身にあえなく拒否されシャーリーという獅人に頼むことになった。


「やだよ、そんな面倒そうなこと」


アインの談である。


コイツもかなりの問題児だな…


一通りの事後処理もソツなく終わり、目覚めた俺は早々に魔都へ飛ばされるのだった。


「サッサと片付けてはよ帰ってきーや」


ソラ、俺は掃除屋じゃないんだぞ?




「エイリス、魔都のプロトはどんな奴なんだ?」


[魔都の擬似人格(ゴースト)はハートです。


優しい性格で防御に特化していますね]


防御に特化ってことは戦えばかなり面倒なタイプのようだ。


[負けないことにかけては随一なのですが、攻撃力皆無なので撃退は難しいでしょう]


「帝国は美都のウィレルだったか?」


[はい、ウィレルが新帝国軍の総大将のようです]


「コイツはどんなタイプなんだ?」


[ムカつくタイプです!]


突然、プチっとなるエイリスさん。


「そんなに?」


[会えばわかると思います]


そう言われると会うのが怖くなってくるな。


[魅了・精神支配のアルティメット持ちですのでかなり厄介です]


そいつは本気でウザそうだ。


[ハートの結界が無ければ既に魔都は落ちていたでしょう]


「ハートの結界ってそれほど凄いのか?」


[肉体、精神、魂の全てに対する干渉を無効化するかなりチートな結界です]


それは…いわゆる無敵状態と言わないか?


[ただ、敵味方の識別ができない設置型結界ですので戦場に設置すると両軍とも無敵状態になってしまいます]


攻撃力皆無な理由はそういうことか。


「なるほどな」


それでは確かに防御にしか使えない。


ってことは、絶対に傷付かない結界の中で戦争遊戯の真っ最中ということか。


なんだかイラッとしてきたぞ。


「俺達が白王軍相手に奮闘している間、コイツらは戦争ごっこ中だったってことか…」


とんだ茶番である。


「エイリス、ウィレルの位置はわかるか?」


[目立ちたがり屋なので直ぐにでも]


「帝国の本心も見えたからにはこんな茶番はさっさと終わらせよう」


[帝国の本心ですか?]


「帝国の連中は今回本気で戦争する気じゃ無かったのさ。


自軍には損害を出さずに白王を消耗させる。


帝国の本当の狙いは弱ったオルディンの攻略だろう。


俺達は踊らされたのさ」


[ジン、熱でもあるのですか?]


ないわっ!


「まあ、そういうことだ。


白王軍の全滅をウィレルに伝えれば奴は引く。


間違いなくな」


[そういうことならウィレルを探しますね]


舞い上がるエイリス。


戦場を踊るように飛ぶ姿は、見た者を唖然とさせた。


[見つけました!]


「でかした相棒!」


降下したエイリスはジンとチェンジだ。


「あんたがウィレルか?」


たしかに目立つことこの上ない。


金鎧(ゴールドアーマー)に加えてスーパーサイヤ人の様な独特の髪型。


コイツはなんというか、美というものを勘違いしている残念な奴という印象だ。


「吾輩はアレクセイ・ビョルン!


美都領主であったものよ!」


なんだコイツ?


「ウィレルではないのか?」


「ウィレルとはこの生体の擬似人格(ゴースト)である!


ウィレルに何用じゃ!?」


コイツの相手は疲れるな。


「ウィレルに話しがある」


「あいわかった。


しばし待たれよ!」


なんなんだ?


コイツのこのテンションは?


「あ〜ら!


可愛いお嬢ちゃんね。


それとも僕かしら?


あたしに何の用なのかなぁ?」


エイリスの言っていた意味が今わかった。


コイツ等ウゼーッ!


「俺はヤマトのツクヨミ。


白王軍は既に壊滅した。


次はお前らの番だと伝えに来ただけだ」


「あら〜


ご丁寧にありがとうね〜


そっか〜


オルディンちゃんもう負けちゃったんだ〜」


イライライライラ…


「じゃあこっちも撤退ね〜


挟まれたら目も当てられないもの〜


即断即決即実行!


ああ、なんて美しい響きかしら!」


コイツって擬似人格(ゴースト)なんだよな?


元々の人格がコレってヤバくないか?


痛すぎて目も当てられん、


「教えてくれてありがとうね〜


ツクヨミちゃんだっけ?


お礼したいから今度一緒にご飯でも行こうね〜」


頭大丈夫かコイツ?


「遠慮しておく」


「ん、もう〜


つれないわね〜」


ゾワゾワゾワゾワ…


これ以上ここに居たらヤバい!


「伝えたからな!


まだウロウロするならヤマトも参戦することになるぞ!


じゃあな!」


やっと離脱である。


ある意味かなりの強敵だ。


「エイリス、あいつは昔からあんな感じなのか?」


[会話が成立しているだけマシになっています。


昔はコミュニケーションを取るのも困難な感じでした]


ウィレルは500年ほど前に一度Iúpatar(オプタル)視察という名の観光に来たらしい。


そんな事情でエイリスはウィレルを知っていたのである。


「これより酷いってどんなキャラだ…」


こうして新帝国軍は撤退することになり、合わせて真王国軍も引き上げることとなった。


狼王からはお礼の言葉を頂きプロトのハートを紹介してもらえた。


会った瞬間エイリスと二人してフリーズしたことはナイショにしておいてくれ。


いや、まさか本物の獅子だとは…


初代国王の獅子王が引退後に獣人からコア転送したそうだ。


生体更新に合わせてライオンの情報に書き換えて今の姿になったということだが。


獅人ではなく完全なる獅子になりたかったらしい。


正直獣人の感覚はわからん。


宴も終わったので魔都の夜が更ける前に失礼することにした。


もちろん土産は買ってある。


買わないとうるさいのがいるからな。


帰国したら少しぐらい休みが欲しいのだが…













いつもありがとうございます。


作者ブラック14時間勤務者の為、休日以外あまりゆっくり書く時間もありません。


そんな事情で週間更新となっておりますが宜しくお願い致します。

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