【第5話 アルティメットマジック】
さてさて、読んでくださっている方が居られるか謎ですが、第5話投下させていただきます。
作者はど素人ですので何かあっても大目に見てやっていただけると幸いでございます。
第6話は5月20日の日曜日0時に投下予定ですのでよろしくお願い致します。
[これは…想像以上の兵力ですね]
天空に舞う羽無しの少女。
神の使いのような雰囲気を持って悠然と下界を見下ろしている。
[前衛10万、中衛20万、後衛10万といったところでしょうか。
白王の旗はありませんね]
敵陣を一通り見回ったエイリスは戦場になりそうな場所も調査しておいた。
[こんなものでいいでしょう]
何故飛んでいるのがエイリスなのか?
俺はある事件がトラウマになっていて飛べないのである。
ソラなどは開口一番。
「飛べない豚はただの豚だ!」
である…誰が豚だっ!
そこっ!
気持ちはわかるがニヤニヤ禁止っ!
なのでこういった場合はエイリスの出番だ。
狼王も先程開戦となったそうだ。
都合、白王・新帝国連合軍VS神皇・真王国連合軍の軍事衝突が始まったわけだな。
「さてと、エイリスの持ち帰った情報だと敵さん40万のアホみたいな大軍らしい」
「父兄枠ありそうやなあ。
ブルーシート引いて後ろから応援団やと思っとったんやけど」
ソラ、それは運動会だ…
[ジン一人では正直言って無理ですね]
「ああ、こっちの戦力で正面から当たるわけにもいかないしな」
思わずため息が出てしまうジン。
「ジンちゃん、どの程度殺れそうや?」
「加速を限界ギリギリまで使って俺の主観で24時間だな。
リアル時間だと14〜15分。
探し出す時間考えると…20人から25人ってところだ。
それ以上は生体を調整し直さないと戦力外だと思ってくれていい」
「ジンちゃん、それって100倍加速の話しやんな?」
「ああ、それが最速で敵を始末できるんだが。
何か問題が?」
「10倍加速やったらどれくらい続けれるん?」
「10倍なら俺の主観で10日だな。
現実の6分が俺にとっての1時間になる。
だが、1人倒すのに必要な時間が増えるから効率はかなり下がるぞ」
「それでええやん。
時間稼ぎならうちに任しとき。
せっかくやし遊ばしてもらうわ」
……
「ライル、持ちこたえれそうか?」
今呼ばれたライルと翼人セシリアはエデン王セラムからの援軍である。
俺の知らないところでエイリスが色々動いてくれたようだ。
エデン屈指の猛者である彼等を迎えられたのは晴れて僥倖と言えよう。
戦場を俯瞰できるライルには義勇軍の総指揮官を頼んでいる。
金髪碧眼のイケメンで女子の人気ナンバーワンである。
俺も若い頃は…すまん、ジョークだ。
セシリアはアマテラスの護衛に就いている。
白金ブロンドに灰眼の持ち主でヴァルキリーを彷彿とさせる精悍な姿である。
二人は弓魔法で空から敵を狙い撃てる上に感電範囲攻撃にもなる対軍宝…、雷槍の使い手だ。
セラムの両翼と言われるエデン屈指の翼人である。
「アマテラス様もおられますので大丈夫でしょう」
畏る姿も様になっていて流石というか。
俺が女ならときめいていたかもしれん。
ソラは…既に自分の世界に没頭しているな。
どうやって遊ぶか考えているのだろう。
不安だ。
とてつもなく不安だ。
ソラに任せておいて大丈夫なのだろうか?
「よっしゃ決めたで!」
何をだ!?
「タワーディフェンスや!」
「はい?」
「うちの魔法で城砦構築するんや。
そんで本陣死守するディフェンスゲームのことや」
ディフェンスゲームなのは知っている。
問題はそこではない。
だが、人の命を背負うってのは真っ当な神経でできることではないのかもしれんな。
ソラはそれを感じて割り切っているフリをしているのかもしれん。
ただの厨二って説もあるが…
「本陣にタワー作ってな、上から眺めながら狙撃するんや。
ほんで城みたいに空堀や壁作って守りやすくする。
どやっ! 完璧やろ!?」
ふむ、言い方は軽いが内容は素晴らしい。
敵を一箇所に集めることができれば雷槍で一気に麻痺させることができる。
進入路を限定してやれば集めやすいしな。
「セシリアはどう思う?」
「…そうですね、良い案だと思います。
少数で守るのなら野戦より籠城だと愚考致します」
自分が話を振られるとは思っていなかったのか、少し考える素ぶりを見せてから答える。
「決まりだな。
ソラの案で行こう。
偵察の段階では飛行戦力は確認していないが、万が一上がってきた場合はセシリアも迎撃頼む。
俺は中衛を絶って混乱させるから後は任せる」
「了解致しました!」
「みんなっ!
うちらの勝利の為に気張ってや!」
『我等の勝利の為に!』
「ほな、いっくでー!!」
《Chruthú》
ソラの魔法が発動する。
両の手の間に光玉が生まれ、眩いばかりに輝いたかと思うと、前方の岩山を含む場所へと進んで行った。
《Neamh》
光玉が膨れ上がり直径1キロほどになると、その内側にあった岩山が跡形も無く消え去った。
大地が隆起を繰り返し激しい地割れが起こって外堀となる。
丘のように隆起した場所に目を疑うかの如く石造りの塔が作られて行く。
「これは、本当に現実なのでしょうか?」
セシリアの疑問も当然だろう。
ソラから話しには聞いてはいたが俺も見るのは初めてだ。
実際、そのあまりにも不思議な光景を見ると現実だとは思えないのである。
さらに、敵軍を包み込むかのように地割れが伸びる。
敵も味方もただそれを呆然と見ていることしかできなかった。
これで退路を完全に絶たれた白王軍はこちら側へ進むしか取るべき道が無い。
塔が完成するとその周囲を囲うように城壁が形成されて行く。
時間にしてほんの5分ほどだろうか?
眼前に城砦が完成していた。
ここに居る全ての者が目を疑ったであろう。
神の奇跡と言える光景を目撃したのだから。
「アマテラス様っ!」
最初に気付いたのはセシリアだ。
「大丈夫や。
ちょっと疲れただけやし。
そない騒がんといてな」
両手と両膝をついて地面に伏しながら苦しそうに顔を上げるソラ。
これだけの大魔法だ。
生体に与える影響も小さくはないだろう。
「ドヤ顔できんでごめんやで。
タワーの最上階にVIPルーム用意したんや。
ちょっと運んで休ませたって…」
こういうところは腐ってもソラだな。
「セシリア、簡易ベッドだ。
ソラは俺が連れて行く」
「了解致しました!」
指示を受けると同時に転移で街へと向かうセシリア。
出来る奴は話が早くて助かる。
俺はソラを伴って最上階へ転移し、セシリアの到着を待ちながらエイリスに診断させた。
[急激な消耗で擬似細胞の死滅が始まっていますね。
ジン、しばらく片腕で我慢してくださいね]
エイリスは自分の左腕を切り落とすとその血で魔方陣を描き、横たえたソラの上に左腕を乗せて右腕を添えた。
《Leighis》
俺の左腕が分解されてソラの体の中へ消える。
心なしかソラの血色が戻ったようだ。
[もう大丈夫です。
安心してください]
「心配させやがって…」
[ふふふ、死滅がこの程度で良かったです。
処置が早かったのでなんとかなりました]
「ジン・エイリス、感謝致します。
ありがとうございます」
[アニエスですね?]
ソラが気を失ったのでアニエスが出てきたようだ。
「はい、半日もあれば完全回復するでしょう。
私も休みますね。
本当にありがとうございます」
落ち着いたのか、目を閉じて安らかな寝息をたてている。
「アマテラス様!」
ほどなくセシリアが簡易ベッドを持って帰ってきた。
[セシリアさん、大丈夫ですよ。
安心してください]
「エイリス様、ですか?」
[はい、とりあえずベッドを]
「あ、はい、失礼致しました」
手早くベッドを組み立てるセシリア。
器用なものだ。
ベッドに横たわるソラ。
本当に無事で良かった。
[セシリア、我々は作戦に戻ります。
ソラさんのことお願いしますね]
「かしこまりました!」
屋上に出てみると白王軍が雪崩を打って向かって来るのがよく見える。
エイリスは天空へ飛び立つと敵軍の中央へ向かった。
[ジン、片腕ですが大丈夫ですか]
「ああ、痛みがあるわけでもないからな。
一人目はこのまま空から探そう」
[天空城に戻るまでは我慢してください]
中衛左翼の位置から渦巻き旋回しつつ指揮官を探す。
目当ての馬鹿はすぐに見つけた。
一際目立つ白金鎧を身につけて偉そうにふんぞり返っている。
まるでここに居ますと自己主張しているようだ。
「こいつらアホか!?」
[アホですね…]
「こういう連中ばかりなら早そうだ。
頼むぞ相棒!」
[突っ込みますよ!
気を失わないでくださいねっ!!]
月槍を右脇に抱えて突貫するエイリス。
名も知らぬ指揮官は自分が誰にどうやって殺されたかも分からぬままこの世を去った。
心臓部にあるコアを粉々に砕いて再生できないように処置もしておく。
《Luasghéarú》
加速世界、何度入っても慣れないな。
動きだけでなく音までスローになるのがたまらなく嫌だ。
イライラする。
《Féileacán》
高空飛行魔法ではなく低空浮遊魔法だ。
ホバークラフトをイメージしてもらえればいい。
高度限界5メートルなので俺でも大丈夫なのである。
100倍加速だと使う余裕はなかったが、10倍加速なら浮遊同時使用でも問題ない。
「見つけたぞ!」
月槍は三日月の刃と真球の満月が一対になっている。
ジンのためにソラが作ってくれた武器だ。
なにせ10倍の速度で斬られ、殴られるのだ。
相手にとっては地獄の出来事であろう。
白王軍に月の死神が舞い降りたのである。
次々と指揮官を失った奴隷兵達は支配が解けて大混乱だ。
中央から切り崩されたこともあり前後が完全に分断された。
前線ではライルが期待通り暴れ回っており、麻痺兵が侵入口を塞ぎ肉の扉となっている。
射手達は、目立ちたがりの白金鎧をハチの巣にして解放奴隷を次々に増やしていた。
ソラのダウン以外は順調な流れだ。
「まだまだ槍捌きがダメダメだな」
[片手というハンデもあるのですから仕方がないかと]
ライルに教わったとはいえ振り回されてる感が否めない…ん?
コイツ、今までの騎士連中とは違うな。
聖職者か?
まあ、疑わしきは殺せだ。
悪く思うなよ。
誰かと通信しているようだが関係ない。
砕け散る頭部とコア。
頭にコアだと!?
「エイリス、どういうことだ?」
[私にも分かりません。
このタイプは初めて見ます]
「もう一人いればコアだけ持ち帰ってみるか」
[サンプルさえあれば解析はできます]
「了解だ。
頼りになる相棒が居ると助かるよっ!」
[きょ、恐縮です…]
照れてやがる。
どこまで人間らしくなるんだ、コイツ…
その後上手くサンプルを回収したジン達は無事タワーに帰還した。
お読みくださった皆様方、誠にありがとうございます。




