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【Chaotic Earth】  作者: 音屋
4/21

【第4話 片桐 仁と月皇ツクヨミ】と【オマケ】

4連投完了です。


基本的には1話1週で更新します。

ソラはとにかく自由奔放だ。


思いつきでサクッと行動して結果を出してくる。


ヤマトに来て数ヵ月が経ったのだが、彼女の傍若無人ぶりには圧倒されてばかりだ。


悩むとか考えるということをしないのではないかと疑うほどだ。


ある日の出来事だが。


「ジン、今日から外でツクヨミって名乗りや。


うちがアマテラスやからちょうどええやろ?」


こんな始末である。


俺の専用魔法が時間加速だと知ると。


「ええ魔法やね。


この酒すぐ呑めるよう発酵進めといて」


ある意味天才なのかもしれない。


順応性が凄いというか応用力があるというか呆れるばかりである。


そんなソラだが、自分が連れてきた国民に対しては立派にアマテラスを演じていたのだ。


それはもう、見事にみんな騙されていた。


で、俺も何かソラの力になれないかと言ったところ、神皇補佐という立場を任された。


各国の情報を集めたりトラブルを解決したり、結構何でも屋みたいな感じだ。


子供の姿は情報を集めるには便利なのだが、普通の人間がやるには少々危ない仕事もあった。


俺には裏技があるのでどうということはないが。


どんなって?


仕方ないから教えてあげよう。


自分自身に加速をかけると世界がスローモーションになるのだよ。


時間を止めるとまではいかないが、限界で100分の1ぐらいまでは加速できる。


アルティメットは伊達じゃないんだな。


そう。


悪用すれば覗き放題・取り放題である。


…やらないがね。


で、散々走り回った結果だが、近々新帝国が真王国に仕掛けるという情報を入手したわけだ。


その機会に合わせて北欧を根城にしている白王オルディンがヤマトを狙っているらしい。


オルディンは元帝国最高幹部の一人で北欧領主でもある。


独立当初こそ新帝国と険悪であったのだが現在は同盟を結んでいる。


新帝国の現皇帝は、Mars(ナルス)のプロトタイプに自己移植した元近衛騎士の上級貴族らしい。


そういった事情からオルディンのような離反者が現れたのだろう。


アマテラスは対帝国において狼王(ロウ)と同盟を結んでいる為、その牽制での侵攻と思われる。


そういった理由で今は使者として魔都にいるのだ。


「エイリス、指定された会談場所は森の泉亭で合ってたよな?」


[ソラが間違えていなければですが]


あいつの場合ありえそうで怖い…


「しかし、どう見ても酒場だよな?」


[酒場ですね]


酒豪のアマテラスからの使者ということで狼王(ロウ)が気を使ったのだろうが…


「入れてもらえるだろうか?」


[最悪、加速して入りますか?]


いや、エイリス。


それは流石に本末転倒ではないだろうか?


目印の青い羽も付けているし大丈夫だろう。


シレッと入ってみた。


「いらっしゃいま、せ?」


何故に疑問系?


「お、お嬢ちゃん、ここは子供の来る店じゃ…」


「デフォだな」


[デフォですね]


「沐浴の泉をダブルで」


「合ってるよな?」


[合ってます]


青い羽をちらつかせながら合言葉を言ってみた。


「お嬢ちゃんが!?」


顔面蒼白である。


「ど、ど、ど、どうぞ、こここ、こちらへ」


こちらこそこんな姿で本当に申し訳ない…


案内されたのはこういった会談専用の部屋だろう。


中で待つこと30分。


狼王(ロウ)が扉を開けて現れた。


彼は使者が子供だったので驚いたようだが、プロトタイプであることを明かすと納得してくれた。


状況的にお互い救援は不可能だろうと伝えると、情報提供に対する感謝を述べてその場を去った。


魔都というがここは素晴らしい街だと思う。


人々に笑顔と活気があって街が生きている。


狼王(ロウ)は2代目の国王だが、初代の獅子王(レオン)の遺志を継ぐ素晴らしい国王だと聞く。


確か、100年と少し前に代替わりしたはずだ。


魔都には200万以上の住人がいる。


周辺も含めればもっと多いに違いない。


人も亜人も自由な国。


ソラが同盟を結んだ理由がよくわかる。


ヤマトには50万ちょっとの人や亜人が住んでいる。


海を挟むので他地方からの移住者が少ないのだ。


普通の人々は転移などできないのである。


国土に対して人口が少ないのは貴族制を採用していたこの世界の特徴なんだろう。


現在確認されているプロトタイプは、新帝国が2人、真王国に1、ヤマトに2だ。


プロトタイプの製造手段は皇帝しか知らぬ最重要秘匿事項だったらしい。


その皇帝は帝都と共に消滅している。


そんな状況なわけだが、とりあえず今は今できることをやるだけだ。


ソラから言いつけられた魔都の名物を買い漁ると転移でサクッと帰国した。



「おかえりやで〜


土産ちゃんとこーてきたか?」


「いきなりか!」


魔都名物、にゃんころ餅とわんこ饅頭を渡す俺。


ツッコミはナシな。


「反応、どないやった?」


「驚いていたから情報は入っていなかった感じだったな。


急いで軍を動かす段取りをするんじゃないか?」


「ほな、あとはうちの問題やな。


オルディンのアホをどーするかや」


悩む様な素振りを見せるが、すぐに悪い事を思いついた子供のような顔になる。


「うちが出て行ったら全員瞬殺してまうしな」


コラコラ。


蟻プチレベルみたいな言い方はどうかと思うが…


「騎士と違って奴隷等には罪あらへんからな。


魔法で戦うこと強要されとるだけやし」


「どういうことだ?」


「騎士連中はな、精神支配の魔法を使うんや。


当たり前やけど自分より上位なもんは支配できへんで」


それで強制的に戦わせたりできるわけだな。


「それでな、うちの魔法は大規模相手やったら強いんやけど、1人を狙い撃つには向かんのや」


なるほど、そういうことか。


つまり、指揮官の騎士達だけ倒して奴隷を解放したいわけだな?


「そういう事なら俺がやろう。


加速で騎士を見つけ次第殺ればいいんだろう?」


「ジンちゃん怖いわ〜


ようそんなセリフがサラッと言えるわあ」


お前が言うか!?


お前が言うか!?


とても大事な事なので二度言った。


「でもジンちゃんの時間加速ってタイマンやったら無敵ちゃうのん?


そんな反則チート技、うち勝てる気せーへんわ」


「範囲加速はあんまり拡大できないが、自己加速なら関係無いしな。


エイリスが言うには生体の寿命が縮まるからあまり長時間の加速はするな…だそうだが」


「まるでAssassin(アサシン)やな。


こう、見えないところからシュッて感じの」


何言い出すんだこいつ。


「せっかくやし、月皇(ゲッコウ)つけよか。


月皇ツクヨミ。


ええ感じやーん」


ええ感じやーんではない。


中二は腹いっぱいだ。


よくそんな簡単に思いつくな。


「神皇アマテラスに、月皇ツクヨミ。


完璧やっ!!!」


そんな力いっぱいのドヤ顔で言うことか!


これさえなけりゃいい奴なんだけどな。


エイリスに頼んでセラムに助けてもらうのも論外だ。


あいつのことだ。


エイリスの頼みなら断らないだろう。


ヤマトには軍隊らしい軍隊は無い。


今までは何かあればソラが力ずくで片付けていたらしい。


全滅させない様に範囲を絞って魔法を使い、指揮系統を潰す事で潰走させていたそうだ。


俺が代わるといっても多少の時間は稼いでもらわないと騎士全てを殺せない。


そんな訳で今回は義勇軍を組織することになった。


もちろん担当は俺。


ソラがそんな面倒なことやるわけが無い。


俺をお子ちゃまだと舐めてかかった愚か者達には、仲良くフリーフォールで楽しく遊んで頂いた。


このクソ忙しい時に余計な手間を増やさないでほしいものである。


猫の手も借りたいとはこのことだな。


孫の手じゃないぞ。


似てるけど違うのだ。


エルフやドワーフ達も魔法が使えるらしく貴重な戦力になりそうだ。


エルフは弓魔法、ドワーフは肉体強化魔法らしい。


試しに見せてもらったがなかなかのモノだった。


エルフの弓は光り輝いていて、打ち出された矢は閃光の如く的を撃ち抜いた。


ドワーフの肉体強化は体重を3倍まで増やしても動けるほど力強く、その肉体は鍛えられた鎧のように固く頑健であった。


前衛にドワーフを中心としたタンクを置いて後衛にエルフ中心の射撃部隊を配置。


中衛に他の獣人と人間の部隊ってところか。


この世界ではコアを持つ者同士ならどれだけ離れていようと連絡手段があるのだ。


条件としては一度直接会わなければならないことか。


相手のコアの個体番号が自コアに記録されるので、相手を思い浮かべるだけで連絡可能である。


俺は部隊の編成に悪戦苦闘しつつも、なんとか指揮系統の顔合わせも行った。




「ソラ、一通り終わったぞ」


「お疲れさんやで〜


あ、紫(ユカリ)はん、お茶とヨウカン持ってきたってや〜」


「かしこまりました。


あと先程、上総(カズサ)様が明日の打ち合わせをしたいと探し回っておられましたよ?」


「聞こえまへーん」


お子ちゃまか…


「そんなこと言うなら、ツクヨミ様のヨウカンしかお持ちしませんよ?」


グッジョブだ!


流石は紫さん!


「それは堪忍やで紫はん。


ジョークやジョーク。


ちゃんとヨウカン食べたら仕事するよってに」


「約束ですよ、ア・マ・テ・ラ・ス・サ・マ」


「紫はん、それ怖い、怖いわっ!」


「うふふ、ではお持ち致しますね」


紫さんって…


ふむ、怒らせないようにしよう…


せっかくなので、ヨウカン食べつつ亜人について説明しよう。


亜人と言っても元々は人間だ。


量産型コアの種類には、一般タイプと半永久タイプが存在する。


半永久タイプとは、プロトコア同様ヒューマンベースで何度も生体を更新可能な騎士や貴族に使われるタイプだ。


一般タイプは獣化機能のついた使い捨てタイプで、獣化奴隷による作業効率向上の為に作られたコアだ。


翼人(アンジェロイド)や狼人(ウェアウルフ)はこのコアで作られた亜人のことで、他には、魚人(マーメイド)・獅人(レオ)・鳥人(エン)に加え、エルフやドワーフといったものも選べるらしい。


寿命はどのタイプでも300年前後になる。


一般タイプの製造はプロトタイプでも行えるが、半永久タイプの製造方法は皇帝とその側近にしか伝わっていなかったらしい。


魔都とヤマトでは、成人を迎えた人間に獣化コアが与えられ自分で好きな獣化を選べるようになっている。


寿命が伸びるが同タイプ間以外との生殖機能が無くなるので、結婚のタイミングで同じ種族へ獣化するのが定番のようだ。


さて、ヨウカンも食べ終えたので準備万端だ。


あとは白王オルディンがアホであることを祈るばかりである。


どうもソラ菌が移ってるな…





【オマケ 天照な日常】



「アマテラス様!


いい加減に出てきてください!」


紫さんが中庭で大声を張り上げている。


いったい何事だというのだ?


[どうしました?]


「あっ、ツクヨミ様。


アマテラス様がお仕事イヤやって土蔵に逃げてしまいまして…」


[またですか!


毎度毎度困った人ですね…]


「確かに最近お休みをとってらっしゃいませんでしたが…」


いつもみたいに重力魔法で強制的に岩戸をこじ開けてもいいのですが。


[紫さん、今からこの紙に書いてある物を集めてきてもらえますか?]


今日はちょっと趣向を変えてみましょう。


「お酒…しかもこれ、アマテラス様が大事に呑んでらっしゃる1級酒…」


[あと、お屋敷で働いてらっしゃる皆さんを中庭に集めてください]


「ツクヨミ様、まさかっ!」


悪い笑顔を浮かべるエイリス、ちょっと怖い。




ー半刻後ー




[さあ皆さん、今日はアマテラス陛下の奢りです!]


使用人達の顔が喜びに満ち溢れる。


[陛下に感謝して思う存分呑んでくださいね!]


『ツクヨミ様万歳!


アマテラス様万歳!!』


土蔵の中では、外の騒ぎが気になって仕方ないソラが落ち着きなくウロウロしている。


「なんやっ!


うち抜きでバーベキューでもやっとんのか!?」


わかっとんねん!


これは罠や。


ジンのアホウがうちひっかけようとしとるだけや。


わかっとるんやで。


うちわかっとんねん!




そろそろかな?


[皆さん!


コレは、今日この日のために私が特別に仕込んだ特級酒です!]


高々と酒瓶を掲げるエイリス。


[今日を記念して皆さんに振る舞いたいと思います!]


『うおおおおおおっ!』






「特級酒やとおおおっ!?」


プッツン


「どけや岩戸おおおっ!


うちにも特級酒よーこーせーっ!!」





笑顔溢れるヤマトの日常。


こんな幸せがずっと続けばいいのにね…


ここまでお読みくださった皆様に厚く御礼申し上げます。


誠にありがとうございました。

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