【第20話 神の島】
不定期更新中ですが、第20話投下します。
よろしくお願い致します。
「コイツは…」
氷原に聳える紫水晶の島。
美しくも不気味なその島は、この世界でゴッドランド島と呼ばれるそうだ。
元々は普通の島だったらしいが、フェンリル来訪に合わせてその景観を変えたのだろう。
島の至る所に紫水晶の錐柱が隆起しており、屈折した光が妖しい色に染まって幻想的な雰囲気を醸し出している。
「ふん…
世界を時間軸方向に引き延ばすか。
さしずめ、時空の狭間といったところか」
ルシファー?
エイリス様、お願い致します。
[こんな時だけバトン渡さないでください]
仕方ないじゃない?
だってわかんないんだもん。
[子供のフリして逃げないでください]
はーい。
[…………]
おい。
[ルシファー様、この島は時間的に曖昧な空間になっています。
過去から現在、未来に至る時間が場所毎に混在していると思われます]
「濃い色の水晶柱が過去、薄い色の水晶柱が未来に時間を引っ張っているようだな」
[ある意味現在が希薄になっています。
一歩間違えば島の外での時間が大きく変わってしまいそうですね]
つまり、浦島効果というやつか?
「なんやなんや?
タイムワープができるってことかいな!?」
ソラ…
そんな潰れアンマンみたいなセリフはやめようか。
そもそもソレが目的ではないぞ?
「まあ、タイムワープって美味しいのでしょうか?」
おーい、紫さん紫さん。
タイムワープは食べ物じゃありませんよー。
アザゼルの霊的結界のおかげで島に辿り着いたのは良いが、どうやら問題は色々積み重なって襲ってくるようだ。
[解析完了致しました]
水晶柱に手を当てていたエイリスが閉じていた瞳を開く。
[この水晶柱は絶対時間を表す時計の様なモノです。
個々の世界はその絶対時間から全てズレて動いているようですね。
これは非常に面白い発見です]
あ、ヤバイ雰囲気。
[つまり、パイモンの言う時間の輪が閉じているという考え方が正解であれば、360度全てに時間的位相が存在していてそれはズレながら回っていると解釈できます。
円形で表現する場合、全てが1度ずつズレていると仮定すれば時間的世界は360個あるということです。
実際は小数点以下のズレなのでもっと多いのですが]
ちょっとちょっとエイリスさん。
日本語でオケ。
《Céim》
水晶柱に手を当てたまま魔法を発動するエイリス。
薄紫色の水晶柱が無色透明に変化して一同を驚かす。
[大丈夫ですね。
これでこの水晶柱の周囲は現在に固定されました]
えーと、つまり?
[逆位相の時間をぶつけることでズレを打ち消しました。
これを繰り返せばこの島自体を現在に固定可能です]
何語?
[日本語です]
ピーヒョロヒョロ。
改めてエイリスさんの恐ろしさを発見だな。
「っしゃ〜、ほなどんどんいこか〜」
軽いな、おい。
「そうは問屋が卸さないらしい」
アザゼルさん?
「纏めて灰にしてやるっ!」
おーーーっ!
ヤル気満々のベリアルさんがとても頼もしい。
そんな流れで炎狼と風狼の空襲発生である。
[透明水晶の効果エリアでないと攻撃は効きませんので注意してください]
なんて面倒な。
まあ、水晶柱を中心に半径333メートルの円形エリアがあるようなので戦闘は可能なんだが…
それにしてもコイツら、来るわ来るわで休む暇も無いじゃないか!
労働基準法違反だろ!
そういえばこの世界に労働基準法なんて無いな。
今度過労防止の為に国内法の整備でもするか。
ほっとくと倒れるまで働く輩が多いからな。
それにしてもかれこれ16時間近く戦わされてるんだが、一向に数が減らない。
このままだとかなりヤバいことになるかもしれない。
「少し休むか?」
ルシファーよ、休みたいのはヤマヤマなんだがどうやって?
「休めるものなら休みたいっ!」
半ばヤケになって投げやりに言った俺。
「あまり長くは持たないが」
両手で黒い玉の様なモノを作り出すルシファー。
黒玉を挟んで手を閉じてから再び開く。
すると、開かれた両の手の間にあった黒玉が爆発的に巨大化した。
黒玉に呑みこまれるジンと愉快な仲間達。
ルシファーの作り出した黒玉の中は不思議な空間だった。
無重力でフワフワとしているがちゃんと息もできる。
球体然とした空間の中心に光玉が輝いており視界も効く。
「ルシファー、ここは?」
「緊急の避難所といったところだな。
私が創り出した小宇宙と言えばお前達にはわかりやすかろう。
私に許可されたモノ以外は存在できない空間だ。
周期が短く、あまり長くは持たんのが欠点なのだが」
確かに、黒玉の空間は既に少しづつ縮み始めている。
「どれくらい持つ?」
「今のままなら666秒だな」
11分ちょっとか…
11分とは言え、少しでも息をつけるのはありがたい。
「遅延させれば666分にもできるが、どちらが良い?」
いえ、11分で十分です。
神様仏様ルシファー様ありがとうございます。
まあ、そんな感じで休憩を挟んで戦闘すること約3日。
もちろん間に666分の休憩も挟んだのは言うまでもない。
絶えない空襲がやっと終わりを迎えて、改めて水晶のリセット作業を行う事が出来るようになった。
20本程の水晶をリセットしたところで再び地上型の魔狼に襲撃を受けたのだが、こちらは丸一日程度で作業に戻れたので良しとしよう。
いや、ベリアルさんが予想以上に張り切って燃やしまくってくれたのでね。
水晶柱のリセットを進めて行くうちにエイリスが気付いたんだが、どうやら水晶柱は上空から見て六芒星の形状に配置されている。
無作為に生えているのではなかったらしい。
何故なのか意味が良くわからないのだが、六芒星の中心におそらくフェンリルが居るのだろう。
外周から右回りの渦巻き状にリセットを続けるパーティ。
魔狼さん達の派手な歓迎会は二回だけで、後は散発的な襲撃が幾度となく行われた。
それにしてもこのパーティの強さは呆れる程に異常である。
適当にサボっていても勝手に戦闘が終わるのは楽でいい。
ソラの視線が痛い事を除けばだが…
いや、まあ、エイリスさんが居ないと作業が進まなくなる訳で。
万が一ダウンなんて事になったら目も当てられない。
大人の事情というやつだ。
決してサボりの口実じゃないからなっ!
「待て」
六芒星の外郭をリセットし終わり、六角形部のリセットに入った時にソレは現れた。
「此処はフェンリル様の神域、許可無き者は去るがよい」
「龍だ…」
[龍ですね]
「龍やん!」
「あらあら、ちっちゃくて可愛い龍さんね」
まだ子供なのか、確かに小さい。
全身は紫水晶の様な美しい色をしていて、ドラゴンと言うよりは龍と表現した方が正解だと思う。
東洋の龍の様に細長いのだ。
まるで蛇の様に。
ただサイズが…
ニシキヘビを一回り大きくした程度を想像して貰えれば良い。
「グヌヌヌ…
妾は小さくともニドヘグなるぞ!」
ニドヘグ?
確か北欧神話のユグドラシルの根を齧ってた蛇がそんな名前だったな。
「一般的なんはニーズヘッグの方が通りがええんとちゃうかな?」
ああ、それならよくゲームや本で見かけるな。
「馬鹿にしおって…
好きで小さくなったのでは無いわ!」
どう言うことかな??
「小さいは正義やっ!」
お前は黙っとれソラ…
「小さくなった理由?」
ボロってくれるか分からないが、とりあえず呟いておいた。
「フェンリルのクソ野郎にユグドラシルの根を奪われたのじゃ!」
ちょっと待て。
さっきフェンリル様って言ってなかったか?
「妾はユグドラシルの根から世界樹の力を得て生きておる。
その根を彼奴に奪われてこの様じゃ」
なるほどな…
それをエサに服従させられているって事か。
「って事はだ、フェンリルからその世界樹の根を取り返せばニドヘグは助かるんだな?」
「その通りじゃが、妾が美しいからといって懸想するでないぞ?」
伊織じゃあるまいし…
ん?
ニドヘグの形が…
ちょ、ちょ、ちょっとおおおおおおっ!!!
なんと、ニドヘグが人型に変身したのだ。
まあ、普通にかなりの美少女である。
慌ててソラを振り返ると鼻息荒くフーフーいっている。
あかんあかん。
とりあえず裸のままってわけにもいかないので俺の予備の服を着せる。
サイズは大丈夫だろう。
見たところ身長は変わらん…
「ところで何故人型に?」
疑問でしかない。
「蛇の姿じゃと妾だとバレるであろう?」
「バレたら困るのか?」
「バレたら妾は其方達を襲わねばならぬ」
なるほど…
「ソレは困るな」
「じゃろう?」
「…………」
アレ??
そもそも何故こういう話の展開になっているんだ?
これって俺達がニドヘグを助ける前提になっていないか?
「ニドヘグ、俺達はまだお前を助けるとは言っていないよな?」
「なんじゃ、先程妾の為に世界樹の根を取り返してくれると言うたではないか?」
ああ、そう言う事…
言葉って本当に難しい。
特に日本語は難しい。
嘘、大袈裟、紛らわしい、公共広告機構に訴えたくなる気持ちがよく分かる。
「フェンリルはこの先じゃ。
じゃがお前達では傷一つ…」
水晶柱をリセットするエイリスに目を奪われるニドヘグ。
「これは期待できそうじゃの。
待っておれクソ狼!
妾の源を奪った罪は、貴様にとって破滅の業となろう」
画して、ニドヘグを加えた一行は、フェンリルとの決戦に向けてコツコツと水晶柱リセット作業を続けるのであった。
リアル多忙の為不定期更新中です。
時間見つけながら少しずつ書いていますので期間が大きく開くかもしれません。
よろしくお願い致します。




