【第18話 ドーバーの悪魔】と【オマケ】
リアルで色々揉め事があり、なかなか執筆できませんでした。
時間を見つけては更新していきますが、かなりスローペースになります。
申し訳ございません。
「ルシファー様、準備完了でございます」
ドーバーを見渡せる小高い丘の上で、駱駝から降りて膝をつき畏る美しきパイモン。
「許可する」
パイモンの額に右手人差し指を添えて魔方陣を描くルシファー。
紅く輝く魔方陣。
その輝きと共に、パイモンの両眼が紅く発光する。
「デモンズゲート!」
パイモンの額にあった魔方陣が、眼前の空中に移動して巨大化する。
一際派手な紅い閃光が放たれた後、光は集束を始めてパイモンの額と繋がった。
そのままパイモンに吸収されて消える光。
黒色に変化した魔方陣からは、悪魔の軍団が次々に現れる。
数時間後にはおよそ20万に達する悪魔達の軍勢が召喚されていた。
パイモンの紅眼に見据えられる悪魔軍団。
「シモベ達、ルシファー様の命である。
魔狼の軍勢を退けよ!」
『おおおおおおおーーーっ!!!』
20万の雄叫びが大地を揺るがす。
魔狼軍もほぼ同数なのだが、一部はまだ橋を渡りきっていないので半包囲陣形で迎え撃つ。
「アザゼルは左翼、右翼はベリアルだ。
パイモン、私は空から眺めさせて貰おう」
「かしこまりました」
一礼を済ませると踵を返すパイモン。
優雅に駱駝の背に飛び乗ると、アザゼル、ベリアルと共に戦場へと駆け出すのであった。
ーーーー左翼アザゼルーーーー
「これは、妙だな…」
摩訶不思議な光景を目の当たりにしたアザゼルは、右手を口元に当てて考え込む。
魔狼軍は通常群れで行動を取る事が多い。
だが、この左翼側の魔狼は統率が取れているとは言い難い程に混乱している。
まるでバーサーカーの様に特攻しては自滅する感じだ。
「原因はあの黒い魔狼なのか?」
口元の指をペロリと舐めるアザゼル。
微笑を浮べた表情がなんとも言えない妖しさを魅せる。
彼女は黒翼を羽ばたかせて羽矢を放った。
豪雨の様な羽矢が黒狼を襲う。
蜂の巣になるかと思われた黒狼だが、羽矢はその全てが黒狼を通り抜ける。
「やはり存在していない…」
黒狼が金色の瞳をアザゼルに向ける。
「残念だが、私を狂化することはできんよ?」
視線に込められた呪を感じたアザゼル。
一瞬で呪縛を解析して解呪する。
「物質でダメならコレはどうかな?」
羽矢に比べて大型の羽を数枚千切り、黒狼を囲う様に飛ばすアザゼル。
空を舞う羽から獄炎の矢が迸って黒狼を焦がした。
数箇所焼かれた黒狼だが大半は避けることに成功している。
こいつはマジで速いな。
獄炎の矢は銃弾並みの速さなんだが…
『貴様、この世界の者では無いな?』
…ん?
…え?
なんだとっ!!
黒狼が喋っただと!?
確かに大きさも熊並みで、普通の魔狼という感じでないのは初見で分かるが…
だがしかし、紛れも無くこの世界の言葉で話したよな今。
「それが分かるということはお前も異世界の存在だな?」
対峙するアザゼル。
『強ち間違ってもおらんが、正確に表現するのならば過去の存在と言うのが正解であろう。
貴様に理解できるか不明だがな』
過去?
「過去から未来に分身体を飛ばしているということか?」
そうなのか?
『聡いな貴様は』
ほう…
やりますね、アザゼルさん。
「パイモン先生が居るからな」
ちょっと待ったアザゼル!
パイモン先生ってなんだ!?
『貴様達のお陰で今生も少しは期待できそうで嬉しいぞ。
しっかりと準備をして我を楽しませるが良い』
今何と?
「魔狼フェンリル、ルシファー様の相手に不足は無さそうで嬉しいよ」
…………
『クックックッ、この世界全てを喰らい尽くして我が腹を満たそう』
「とりあえず私を喰らってみるか?」
『貴様程度では腹の足しにもならぬわ』
「世迷いごとを!」
怒りを露わにするアザゼル。
分身体程度に舐められたのだ。
致し方あるまい。
今までの恐ろしい色をした黒炎ではなく、透明感のある蒼い獄炎を身に纏うアザゼル。
「ならば魂ごと凍りつくがいい!」
黒狼を包み込む蒼い獄炎。
揺らめく蒼い炎の奥で口が大きく裂けた様に見えた。
『フッフッフッハッハッハ…』
影の様に消えてゆく黒狼に、アザゼルは不気味な気配を感じるのだった。
ーーーー右翼ベリアルーーーー
全身に漆黒の獄炎を纏って戦場を駆る姿は、まるで神話から抜け出した闇の化身の様だ。
「オラオラオラッ!!」
触れた者全てを焼き尽くす魔界の獄炎。
グリーンランドで溜めたストレスを発散するがの如く激しく暴れ回っている。
「喰らいやがれ!!」
ベリアルが両腕を左右に大きく広げる。
両の手から魔狼達の行く手に伸びて行く獄炎。
そのまま両腕を前方へゆっくり回すと、広がった獄炎の波が周辺を焦土へと変えた。
獄炎に呑まれ次々に消滅していく魔狼達。
その光景を楽しみながら残忍な笑顔を浮かべるベリアル。
正に地獄絵図といったところであろう。
炎の王の異名は伊達ではなく、獄炎の広範囲攻撃を得意としている。
ちなみに、これまで獄炎と一括りに表現しているが、実のところ獄炎には7つの種類がある。
黒炎、紫炎、蒼炎、緋炎、白炎、碧炎、紅炎の7種類だ。
黒炎は焦がせぬモノ無き魔界の炎。
紫炎は精神を焼き尽くす悪魔の炎。
蒼炎は魂を永久に凍結させる冥界の炎。
緋炎は全てのモノを分解する絶望の炎。
白炎は罪や業を浄化する天界の炎。
碧炎は魂を初期化する天使の炎。
紅炎は不死鳥の如く再生させる希望の炎。
今回ベリアルが使用したのは黒炎である。
獄炎には生物のような意思があり、契約を交わした術者に召喚される事で現界する。
天界と魔界の狭間にある煉獄へ赴き、契約することで召喚可能になる生きた炎である。
炎の精霊サラマンダーやイフリートなどを想像すると分かり易いのではないだろうか。
精霊と違う点?
無形で特定の姿形を持たない事だな。
獄炎には、同一種のものでもランクがあり、より上級のクラスと契約を結んだ術者ほど強力な召喚ができる。
ベリアルが契約している黒炎はAランク相当だ。
黒炎の中でも非常に強力なクラスであり、これ以上はSクラスしかない。
現在、黒炎のSクラス契約者はルシファーとサタンのみ。
だが、この2人ですら本来の力を取り戻さなければAクラスまでの召喚しかできない。
アザゼルはCクラス、パイモンがEクラスである。
そう考えるとベリアルのAクラスというのがかなり貴重であるのが分かるだろう。
「ルシファー様…」
右翼側の魔狼を粗方始末したベリアルは、天空に舞う主人を見上げて呟いた。
ルシファーの顔に笑みが浮かんでいる様に見えたのは錯覚であろうか?
そのままパイモンのエリアである中央方向を指差すルシファー。
まだまだ暴れ足りないベリアルは、主人の命に従いパイモンの元へと向かうのだった。
ーーーー中央パイモンーーーー
「左翼が押され気味かしら?
右翼は…もう必要無さそうね。
セーレ、右翼の5万を左翼へ移しなさい。
本隊は前進します。
さあ、仕上げに掛かるわよ」
セーレと呼ばれた金髪の悪魔は、恭しく一礼を済ましたかと思うと忽然と消えた。
「仕事の早い子は好きよ。
ラウム、空から強襲しなさい。
ルシファー様が見てらっしゃるからといって張り切りすぎないようにね」
「承知」
ラウムは巨大な黒鳥である。
黒鳥の不気味な赤い目がチラリとルシファーに流された。
主君の姿を確認した彼は、漆黒の翼を広げて大空高く舞い上がるのだった。
「私も負けてはいられませんわね…」
ベリアルの合流した中央では、再び魔狼の大虐殺が始まった。
ラウムの放つ黒雷にベリアルの黒炎。
パイモンの放つ紫炎により精神破壊される魔狼。
混沌とした戦場も、数時間後には静寂が支配する荒野と成り果てた。
【オマケ コア研の日常】
「エイリスさん、コレはどう思いますか?」
[そうですね、コアの試験プロトコルの組成を変更しないとこれ以上の成果は認められないでしょう]
「パイモンさんも同意見でしょうか?」
「そうね…
アプローチとしては魔素子の割合を増やす事で、試験呪幼体に於ける育成速度を上げるべきじゃないかしら?
現在の圧縮時間では今以上に高効率は出せませんわ」
白衣女子が3人(1人は女子ではないが)集まって何やら不可解な話しをしている。
そう、ここは王立魔導コア研究所である。
伊織が所長でありエイリスが助手、パイモンが教授という立場で日々怪しい研究を行なっている特A級施設である。
ちなみに、コア研と言うがコアだけを研究しているわけでは無い。
興味があるもの片っ端から研究対象になっており、時には怪しい薬なんかも作っている。
「やはりそうですよね…
今後はパイモンさんの案で進めてみましょうか?」
軽くため息を吐きながらティーポットからお茶を3人分注ぐ伊織。
琥珀色の液体から芳しい香りが漂う。
「でしたら草案を作成しておきますわ」
「よろしくお願い致します」
話しながらお茶に口付ける2人。
その様子を静かに見守るエイリス。
一口目で訝しげな顔をするパイモン。
そのまま二口三口と飲み進める伊織。
勝敗は決した様である。
「だーかーらー!
なんでパイモンさんそんなに胸大っきいんですかあ!?」
ヒック。
お?
おおお!?
「あたしにも分けてよっ!」
ムニッ
「柔らかい…」
「伊織?」
一体何事!?
「ちょうだいちょうだいちょうだいちょうだい!」
フニュフニュフニュフニュッ!
「エイリス、説明してくれるわね?」
呆れた顔で振り向くパイモン。
[お酒がダメな人用に酔えるお茶を作りました。
どうやら自白効果も入ってしまっているようですね…
まだまだ改良の余地がありそうです]
嘘偽り無く真面目に答えるエイリス。
自白効果というより、潜在的な願望が表に出て来ている様な気がするんだが…
気のせいであろうか?
酔っ払えば多少こういった事はあるのだろうが、さすがに行き過ぎである。
「見てないでなんとかしてくれないかしら?」
パイモンにへばりついた伊織を引き剥がすエイリス。
最初は駄々をこねる伊織であったが、どうやらヘイトがエイリスに移った様だ。
「エイリスちゃんはあ〜
女の子じゃないのになんでそんなに可愛いのようっ!?
もう、お姉さんは食べてしまいたい!」
いかん、黄色信号から赤信号に変わりつつある。
伊織にハグされつつも、彼女を数時間後まで加速させるエイリス。
コトンと首を垂れた伊織は、エイリスの胸でスースー寝息を立て始めた。
そのままお姫様抱っこされ、長椅子まで運んで寝かしつけられた伊織。
当のエイリスはと言うと…
自分用に入れられたお茶を全て飲み干して、さっさと片付けを始めてしまった。
パイモンも酒には弱く無い筈だが、このお茶をカップ一杯飲み干せば酔う自覚はあった。
そのパイモンが一口で異変を感じる程にキツかった効果なのだが、エイリスにはなんら効果を及ぼしていない。
「悔しいわね…」
怪しい笑みがなんとも言えない。
[どうかしましたか?]
「なんでもないわ」
今度は自分が何か仕掛けようと誓うパイモンであった。
月並みではあるが、起きた伊織にはお茶を飲んだ後の記憶が全く無い。
覚えていたら羞恥心で丸焦げになっていただろう。
そうして、何事も無かったかのようにコア研の日常は続くのだった。
リアル多忙でなかなか時間が取れません。
時間を見つけつつ書いて行きますが、当分の間不定期更新になります。
仕事してるか、寝てるかみたいな生活になってます。
自分の時間がなかなか取れないので、申し訳ございませんがご理解お願い致します。




