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それでもお前は執事じゃない!  作者: 千早 朔
第三章
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第十五話


「いいか、オレもお前も学生っつー身分である以上、それぞれの生活ってもんがある。オレにはオレの予定があるし、お前にもお前の都合があるだろ。全部をすり合わせようだなんて、はなっから無理なんだよ。それにな、オレがお前のバイトに付き合うってのは、それだけオレの時間がなくなるってコトだろ? お前の言う『執事』ってのは、『主人』の大事な時間を奪うもんなのかよ?」

「っ、そういう訳では……」

「だろ? だから、今日みたいなのはナシ。それと、朝もわざわざオレの予定に合わせて来なくっていいから。夜だって、気が向いた時だけでいいんだからな。お前の時間はお前のモンだ。オレだけ自由にさせろってのも、不公平だろ?」


 ついでにこの変な関係を終わらせてくれたっていいんだ。

 そんな思いを腹の底に含みながらそれらしく諭すと、ぐっと眉間に皺を刻みながら熟慮していた邦和が、重い口を開いた。


「……功基さんのご意見はもっともです。わかりました。私も、功基さんの貴重なお時間を頂戴するのは、本意ではありません」

「じゃあ」

「ですが、その他に関しては、私が好きでやっていることです。功基さんにご予定がおありでしたら、当然、そちらを優先させて頂いて構いませんが、その他の件に関しまては、ご理解を頂ければ」


 つまりは現状維持で納得しろというのか。

『交換条件』としている以上、邦和の理解なしに制限は出来ない。

 功基は仕方なしに頷いた。


「……わかったよ。その代わり、マジで無理すんなよ」

「勿体無いお言葉です」


 深々と頭を下げられた後頭部を見下ろしながら、功基は自身の異変に気づいた。


(……なんでオレ、ちょっとほっとしてるんだ?)


 せっかく自由になれるチャンスだったというのに。ここは、ガッカリすべき場面だろう。

 不測の感情に胸中で首を傾げるも、当然、答えが降って湧いてくる筈もない。

 ぼんやりと思考にふける功基を、邦和の落ち着いた声が呼び寄せた。


「お夕食ですが、リクエストはございますか」

「あ? あー……お前、ハンバーグって作れる?」

「功基さんはハンバーグがお好きですか」

「なんだよ悪いかよ」

「いえ、お好みが知れて大変嬉しゅうございます」

「お前な……」


(一体どこまで本気なんだか)


 あまり妙な言い回しをすると変な誤解を生むと、そのうち教えてやらないといけないかもしれない。


「では、買い出しにいって参ります」


 足の痺れはないらしい。

 すっくと立ち上がった邦和に、功基も腰を上げた。


「オレも行く」

「いえ、お待ち頂いて……」

「行くっつったら行くんだよ。なんだよ一緒は不満か?」

「いえ」


 功基を見下ろす邦和の顔が、花咲くようにほころんだ。


「大変、嬉しいです」


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