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俺の異世界交易FIRE計画を役所が邪魔する  作者: 九束


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第7話 初めての商談①

「さてさて! 暗黒大陸でがっぽり儲けてきたお兄さんは、どんな商品を持ち帰ったんや!?」


二階へと案内された和樹が個室に入り、部屋の中央にある応接席に座ると、カサンドラが目をぎらつかせながら前のめりに切り出してきた。


「あー……いっこ訂正いい?」


「なんや? ええよええよ」


「俺は暗黒大陸に行って帰ってきたんじゃなくて暗黒大陸出身でね」


(よく考えたらこっちの常識わかんないからここじゃない場所出身にした方がいいだろ多分)


部屋に入って静かな雰囲気になったことで少しIQを取り戻した和樹は、カサンドラに疑われないように適当な気歴をでっち上げることにした。


「あー、せやのん?」


「だから色々持ってきたんだけど。こっちで需要があるものも良くわからなくてね。どういうのが需要あるの?」


「ん-……代表的な物は胡椒とかが定番やけど、暗黒大陸はこのナーロッパ大陸にないもんがぎょーさんあるさかい、見せてもらわんと何とも言えへんあぁ……あえて言うなら、持って無いやろうけど石鹸とか?」


(この大陸ナーロッパって名前なのかよ!! というかやっぱり石鹸と胡椒、価値高いんだ)


仮称としてナーロッパと呼んでいたのにマジで名前がナーロッパだったことに若干の衝撃を受けつつ、和樹はまず確実に売れるであろうカサンドラが例として挙げた胡椒と石鹸から取り出すことにした。


「あ、胡椒なら持ってるけど。石鹸も」


「――!?」


和樹がリュックサックから麻袋に入った胡椒と石鹸を取り出し、テーブルにおいて中身を見せた途端、カサンドラの目が見開かれる。


(え? なんで自分で言っておいて驚いてるの?)


カサンドラが、息を呑む音がハッキリと聞こえ、一方の和樹は理由が分からずに困惑する。


「な、なぁお兄さん?? い、いちおう、その……胡椒の方ね」


「うん」


「に、偽物も多いから一粒食べてもええかな? あと石鹸も、ちょっと、ちょーっとだけ削って使っても?」


「え? い、いいですけど?」


「おおきに! ――クラリスさーん!! 水入った桶持ってきて!! 二つ! すぐに!!」


和樹がカサンドラの相談を受け入れるやいなや、彼女は素早い動作でドアを開け、一階に向けて叫ぶ。


そしてそのまま踊るようにくるりと和樹の方に向き直すと、テーブルに置いてあった瓶から和樹が持ってきた胡椒を一粒取ると、恐る恐ると言った表情で口に含んだ。


「うひゃあ~~……っ!! こ、これ……っ、ほんまもんのコショウやんか!! しかも感謝祭の時に出回るクッソ高いやつより断然香りがええやん!!」


長い耳をピコピコさせながら目を白黒させて胡椒を絶賛するカサンドラ。


(よし! やっぱりナーロッパは胡椒という完璧な方程式は間違っていなかったな!)


そんなカサンドラを見ながら勝ちを確信する和樹。


中世ヨーロッパにおいて大航海時代の代名詞ともいえる胡椒、このナーロッパ世界においても貴重品という和樹の読みはまさかの大当たりのようだった。


「え? 一級品!? もしかして一級品なんこれ!? 一級品ってこんな豊かな森みたいな香りするん!?」


ニンマリする和樹をよそにハイテンションで胡椒のレビューをするカサンドラ。


コンコン。


「はーい」


その様子を見ていると、入り口のドアがノックされたので、和樹はカサンドラの代わりに返事をしてドアを開ける。


すると先ほどギルドの一階にいた受付嬢のお姉さんが両腕に桶を抱えて入ってきた。


(この人もかなりの美人さんだよなー。異世界、美人率高いなぁ)


「カサンドラさん? 桶を用意しましたけど……何か水が必要な取引が?」


「おおきに! そこにおいといてや!」


入ってきたギルドの受付嬢さんの疑問に答えずそのまま話を進めようとするカサンドラ。


そんなカサンドラのハイテンションなリアクションを見ながら、受付嬢さんはテーブルの上を見て「あ……」という表情を見せた後、何故か和樹に微妙な表情を見せる。


「?」


「ささ! クラリスさんちょっと商談中やさかい。用が済んだら退出よろしゅーね!」


「わかりました……。また御用があったらおっしゃってください」


和樹はその受付嬢さんの表情に疑問符をうかべるものの、カサンドラに促されてそのまま受付嬢さんが退出してしまったので疑問はスルーされた。


「さあ次はうわさに聞いたことだけはある石鹸や! ……見た感じラードっぽいけどこれほんとに石鹸なん?」


「俺も石鹸と言えばこれしか知らないから……とりあえず使ってみたらいいんじゃないかな」


「せ、せやね! さーて石鹸とやらのこうかはーっと……お、おぉぉ!?」


腰に下げていたナイフで削り取った石鹸を手に含ませ、水でこすった途端にカサンドラは驚きの声を上げる。


「なんやこれ! なんか泡と一緒にめっちゃいい匂いがするやん!? ジャコウジカからとれるちゅームスク香料ちゃうこれ!? 貴族様の屋敷に配達行ったときに嗅いだことあるで!」


これまた胡椒の時と同じようなオーバーリアクションを取りつつ、もう一つの桶に手を入れて石鹸を洗い流し、そのまま自らの手を感触を確かめるような動作をするカサンドラ。


「すっごい……洗った途端にスベスベやん……落ちづらいインク汚れもすっきり落ちるし……これが石鹸……」


(テンプレぶっちぎりのナーロッパ人反応って結構面白いな)


和樹はカサンドラの反応によって徐々にIQを取り戻してきたのか、石鹸の見分をして俯いていることによって生じたカサンドラの胸の谷間を見ながら生暖かい様子でカサンドラの表情を観察するというキモイムーブを行っていた。


一方のカサンドラは桶と一緒に用意されたごわごわそうなタオルで手を拭いた後、顔を上げる。


「やっぱり……! ウチの目に狂いはなかった! お兄さん……いや、カズキはんは、東方交易の凄腕貿易商様やったんやね!!」


そして満面の笑みでまた再び胸を強調する姿勢をしながら和樹にズイっと顔を近づけてきた。


その顔には『この商品、全部逃がさん』と書いてあった。


和樹は胸に視線がとられて気づいていない。アホが。

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