第6話 銀髪褐色美少女エルフ商人
「……えーっと?」
唐突な声かけにどう反応しようか迷う和樹。
とりあえず残った少ないリソースで目の前の美少女を観察することにした。
(年齢は俺と同じか、少し下くらいだろうか。もしかしたら十代かもしれない)
日焼けとはまた違う、健康的な琥珀色の肌。
肩までのびた銀色の髪が窓から入る薄暗い光を反射してキラキラと輝いている。
目は大きく、瞳は深いエメラルドグリーン。
たれ目気味の目は小悪魔的な愛嬌がある。
服装は、ケープと白いシャツにショートパンツのようなもの……だが、何故かシャツの胸当たりのボタンが外されており、はち切れんばかりの胸の谷間が自己主張をしている。
つまりその胸は豊満であった。
そして、なにより顔の真横に伸びる長い三角耳。
(褐色銀髪巨乳美少女エルフだー!!)
「……ちゃうかったん? ほな、迷い込んできたんか? ここは交易ギルドやで。素人がふらふら入ってきてええ場所とちゃうんやけど……」
そう言いつつシャツのボタンが外れていることに気が付いたのか、手を自らのシャツのボタンに書けようとする少女。
「……ん? ちょ、待ってや」
しかしその手は一瞬止まり、少女は和樹を値踏みするように上から下までジロジロと見て、ニヤリと笑った。
「お兄さんの着てるその服……なんやそれ。触ったことないような滑らで光沢のある生地やし、ようけ見ぃひんなぁ……もしかして暗黒大陸の工業都市ドーロクルシ産とかやない!?」
「え? あ、うん?」
美少女のマシンガントークに固まる和樹。
「やっぱそうなんか! まーた偉い気合の入った服装やねぇ!!」
一方の褐色銀髪美少女は和樹の気の抜けた疑問符を同意ととらえたのか声色がワントーン上がる。
「こーんな気合入った服着てはるなんて、お兄さん、よーけ儲けてきはったんちゃう?」
ペタペタ。
ペタペタペタペタ。
そして一方的に和樹のジャージに触れたりなどして値踏みをする推定ギルド所属の商人と思われる褐色銀髪美少女。
「とすると……分かった。お兄さん、暗黒大陸帰りの飛び石商人ちゃうん? もしかしてこの街は初めて?」
「あ、ああ。まあ、ね。この街のギルドは初めてなんだ」
(というかなんでエセ関西弁?)
どこかの訛りは日本語変換される際に方言になるのだろうか。
そんな疑問を抱えつつ、ようやく脳みそが起動した和樹は褐色銀髪美少女の質問にどもりながらも答える。
「やーっぱり! ほな、その背負ってる荷物は交易品?」
少女はパンッと手を叩き、満面の笑みでズイッと和樹に顔を近づけてきた。
そしてそのまま和樹の手を取って自らのシャツに手を寄せる。
和樹の手にふにゅんと柔らかい感触がした。
(近い!! めっちゃいい匂いがする!!!)
頭が茹で上がりつつある和樹の様子を見て、銀髪美少女は和樹に見えない確度でニヤリと笑った。
そして、そのまま整った顔をずいっと和樹に近づける。
(異世界、来てよかった!!)
コンカフェでもなかなかにお目にかかれない美少女に、和樹のテンションは有頂天だ。
どう考えても色仕掛けなのだが、気づいているのかいないのか和樹はそれを重要視せずにのぼせ上がる。
「ウチの名前はカサンドラ! この港町ニューモンを拠点にしてる、しがない行商人や! お兄さん、その珍しい服を着てるってことは、暗黒大陸……いや、そのもっと内陸から、珍しい品を仕入れてきたんやろ?」
カサンドラと名乗った褐色銀髪美少女は、和樹の腕にギュッと抱きつきながら、上目遣いで見つめてきた。
(こ、これは……異世界のお約束、美少女からの逆アプローチ!! 実在していたのか!!)
リアルでも実在してるけどマルチとかの色仕掛け営業とかだぞ。気づけ?
どう考えても完全に無防備な獲物に狙いを定めて追い込みにかかっている状態でしょ?
だが社会経験ほぼ皆無、女性経験皆無の和樹はそれに気が付かない。
「あー……まあ、そうだね。ちょっと珍しいものをいくつか持ってきたんだけど、どこで売ればいいか分からなくてさ」
IQが5くらいになった和樹は、残った数少ないIQで事前に考えていた台詞をカサンドラに言う。
「やっぱり! お兄さん、ウチが見込んだ通りや! どうや? ギルドの堅苦しい連中を通すより、ウチと直接商談せえへん? ええ値段で買い取ったるで?」
むにゅり。
(わぁい! おっぱい! おっぱいが俺の腕におっぱい! いやあ貿易商ってモテるんだな!)
「……そうだな。カサンドラちゃんがそこまで言うなら、とりあえず話くらいは聞いてみようかな」
「ほんま!? やったぁ! お兄さん、太っ腹やな! ほな、善は急げや! 二階の個室、空いてるか確認してくるさかい、ちょっと待っててな!」
和樹の返答を聞いたカサンドラはパッと腕を離すと、受付の方へと弾むような足取りで駆けていった。
そして和樹はその後ろ姿の、ショートパンツから伸びる引き締まった太ももにくぎ付けだった。
(やっぱ俺ツイてるな! 異世界に来て早々美少女商人から猛烈アプローチ! 幸先いいって!!)
「お兄さーん! こっちこっち! ええ部屋取れたで!」
受付から商談室の鍵を取ってきたらいいカサンドラが和樹の腕を取り両腕を絡めて胸を押し付けてくる。
和樹は促されるまま、鼻を伸ばしながら商談室に入っていった。




