第58話 海水浴
熱海の海水浴場は夏の熱気に包まれていた。
八月というまさに海水浴のためにあるような月。
浜辺には家族連れや若者グループが、色とりどりのパラソルを広げている。
波打ち際では子供たちが歓声を上げて走り回り、堤防の少し前にはウォーターパークで遊ぶ人の姿も。
そんな熱海の海水浴場、熱海サンビーチで、和樹はレンタルしたビーチパラソルを砂に突き刺した。
「よし、準備完了」
シートを敷き、クーラーボックスを置き、サンダルを脱いでビーチパラソルの陰に寝転がる。
「まだかなまだかなー美少女エルフの水着はまだかなー」
毎日裸は見ているがそれはそれ。
美少女の水着姿はそれはそれで楽しみな和樹だった。
ビーチに来る前、カス子は和樹から現金を受け取ると「水着は、ウチらで選ぶから、楽しみにしとき」と言って近くのスーパーに消えていった。
適当に食品売り場で時間をつぶすこと数十分、帰ってきたカス子とエリーニュスは自信満々の様子だった。
つまり水着はビーチで見てのお楽しみと言うわけだ。
(どんな水着なんだ)
(ワンピースか。ビキニか)
想像するたびに、顔がにやけっぱなしになる和樹。
「和樹はーん」
そんな和樹の後ろから聞こえるカス子の声。
「お待たせや!」
和樹は、飛び上がるように振り返った。
そこに、白と黒の美少女が、並んで立っていた。
カス子は、鮮やかな赤のビキニ。褐色の肌にこれ以上ないほどよく映える。
その上から、白いラッシュガードを羽織り、半分ほど脱いで肩にかけている。
エリーニュスは、真っ黒なビキニ。
白い肌がまぶしいくらいに際立つ。カス子と色違いのピンク色のラッシュガードを半脱ぎで羽織っていた。
二人とも、前を閉めていないラッシュガードの隙間から、大胆な水着がのぞいている。
「どう? 似合っとる?」
「どうかしら、ご主人様」
二人が同時に和樹へ視線を向けてくる。
「これが青春か」
和樹は灰色の青春を今取り戻している実感に、空を仰ぎ見た。
周囲の男たちが、ちらちらと視線を向けている。
(見るんじゃねえ!全部俺のもんだぞクルルァ!!)
「よし、行くか。海」
「「うん!」」
周りの男どもに見せる水着はないとばかりに和樹は二人の手を引いて海に入る。
水は思ったよりも冷たく、暑さが熱中症になりそうなくらい浜辺で熱せられた肌から熱を奪ってくれる。
「ひゃっほー! 海やー!」
「待て、あんまり沖に行くな!」
「平気やー!」
ざぶざぶと水泳選手並みの速さで泳いでいくカス子。
一方のエリーニュスは、和樹の近くで何をするでもなくぷかぷかと浮かんでいる。
「しょっぱい……実は海って初めてです」
「そういえばドバイではプールで遊んでばかりで海いかなかったな」
「そういえばそうでしたね。もったいなかったです」
「じゃあその分今日は遊ぼうぜ!」
和樹はそう言うと、エリーニュスの手を引く。
一通り遊び終わる頃には、昼時を過ぎていた。




