第57話 美少女との海>>>金儲け
旅館に逗留を始めて数日後の朝。
部屋直結の貸し切り露天風呂で朝風呂をきめて浴衣に着替えた和樹は、広縁の椅子に腰掛けて足を組む。
手には冷蔵庫から出した缶ビール。朝から飲むな酒カス。
「くぅ……! 高い酒よりビールがうめぇ!」
和樹の中でウイスキーブームは過ぎ去り、一周回ってキンキンのビールが一番うまいという結論にたどり着いていた。
そんな和樹の視線の先では浴衣姿のカス子とエリーニュスが座敷で氷で冷やした緑茶を飲みながら、ゆったりとテレビを見ている。
映っているのはグルメ番組。
「あ、あの魚、うまそうやなぁ」
「なんか反応が凄い方々ですね」
日本のテレビ番組どくとくのオーバーリアクショングルメレポの感想を言うエリーニュス。
和樹は、そんな二人を見ながらビールをちびちび飲む。
(さて、これからどうするか)
そして今後の計画に、考えを巡らせた。
手元資金は銀行に預けられる数千万と、一億以上の現金。
一方支出は精々一日数十万。
このまま高級流浪生活を続ければ数年でそこを尽きる金額。それが和樹の中での1億と言う価値だった。
故にもっともっと稼ぐ必要があるのだが……単純にチーレム金貨を売り払って現金が入手できるのは残り数回。
それでてに入る金額は、恐らく5億円には届かないだろう。
しかもこれは現金でしか使えない。
例えば大手を振って証券会社などに預けられる金であれば、オルカンなりなんなりに突っ込んで年収数千万程度の生活に満足することもできただろうが、現金は運用ができない。
使って減っていくだけの金である。
和樹基準でのFIREには程遠かった。
「何か、収入源が欲しいな」
「ご主人様。それなら私に良い案があります」
和樹のつぶやきにエリーニュスが挙手をした。
「ん? 案?」
「思ったのですが、この精力ポーション……こちらで売れませんか? ご主人様の驚きようから、需要があるのではないかな、と思ったのですが……」
そう言ってエリーニュスが取り出したのは、最近毎日使うようになっている精力ポーション。
「確かに……異世界に行かないと100%効果はないとはいえ、こっちで飲んでもすごいからなこれ……」
この精力ポーションは異世界で飲んでこちらに来ると一日10発は出せ、地球世界で飲んでも一日で六発は出せる威力抜群の品だった。
「あとは定番ですが回復ポーションなどはいかがでしょう? この世界はマナがないので欠損を治すのは難しいですが……それでもこれくらいなら……」
エリーニュスはもう一つ赤いポーションを出すと、ポーションをしまっていたバッグから小さなナイフも取り出し、そのまま自らの手の平を傷つける。
「ちょっ!? おま!?」
慌てる和樹を制止し、エリーニュスは自らの手に赤いポーションをかける。
手からこぼれたポーションはお盆の上に落ち、ポーションが流れたあとの手には、傷がさっぱりと消えていた。
「なにそれすげえ!」
「ほら、浅い傷ならすぐ元通りです。さっきテレビで傷を塞ぐのに布のようなものを巻く動画が映ってましたので……」
「あぁ、絆創膏か」
「この国では傷を治すポーションがないんですよね? 需要があるのでは?」
「あるな!」
(なんで忘れてた!? 異世界でポーションがあるとしたらエッチな奴だけじゃなくてそういう地球の医療よりすげえのがあるのは定番じゃねえか!)
お前がそこに行きつかなかったのは脳みそに精子しかつまってないからだよ。
和樹の脳内では魔法の薬で大儲けする算段が高速で着きつつあった。
「バーで精力剤として売るか……? いやそれよりも回復ポーションだな。浅い傷ならすぐ治るなら、でかい病院の周辺で張って重病の皮膚病患者に辻ポーションして定期通販で二本目以降を売りつけるって手もあるな……」
売り方がすでに反社のそれである。
なんでこいつはまともに売るという考えにたどり着かないのか?
その辺の悪徳通販会社にでも持っていけばいくらでもまっとうに(?)金が稼げるであろうにそれをガン無視しながら和樹は事業の算段を考え始める。
「売れるぞ、これ! 絶対売れる!」
「でしょう?」
目を輝かせる和樹に対しエリーニュスは微笑む。
「よし、準備だ。プラボトルを買って……病院……いや、近くの海水浴場で」
「和樹はーん」
あれこれ考えだす和樹を、カス子が呑気な声で遮る。
「それ、後でええやん。いまは、遊ぼうや~?」
「……そうだな!」
回復ポーションは絶対に売れる、しかも高値で。
将来が約束された今、別にせこせこと用意を急ぐ必要はないと考えた和樹はカス子の提案に乗ることにした。
「よし、昼から海に行くか!!」




