第56話 和樹の高級流浪生活②
「ひゃあ、ほんまに馬がおらんのに動くんやなぁ」
「もう何回も乗ったでしょ、カス子さん」
「乗るたびに感動するんや!」
車窓を流れる山並みを眺める二人。
そんな二人を少しチラ見した後、和樹は感慨深い気分になる。
(――俺はもう、あの満員電車に乗らなくていい。まだ東京で消耗してるのwwww?)
脳内で満員電車に乗る社会人全員を煽り倒す和樹。
……すぞ。
「そういえばカズキはん、うちら今どこに向かっとるん?」
「熱海だ」
「熱海?」
「温泉地で有名なところだぞ」
「「温泉!」」
カス子とエリーニュスの声が、同時に弾んだ。
(ぐへへ、きちんと客室露天風呂付きの広い宿を取ったぜ。しかも二人の反応。今日のいちゃらぶも期待できるでぇ……)
ドバイから日本に帰る時にエリーニュスにナーロッパで追加の精力ポーションを作らせて以来、和樹の和樹は絶好調だった。
美人は三日で飽きると言うが、和樹は飽きることなくドはまり中。
めくるめく温泉いちゃらぶ生活に期待を膨らませつつ、和樹が運転するミニバンは熱海の街に近づいていく。
海に向かって傾斜する斜面に、ホテルや旅館が、重なり合うように建っている。
道は細く、くねくねと曲がり坂も多い。
そんな熱海市内を性欲で高めた気合でなんとか潜り抜け、木々に囲まれた閑静な雰囲気の旅館へとたどり着く。
「お待ちしておりました佐藤様」
和風アグジュアリー漂う旅館の自動ドアをまたぐと、和服姿の仲居らしき女性が和樹に一礼してくる。
「よろしくお願いします。事前に連絡してた通り、長期逗留したいんで現金デポジットでいいですか?」
「かしこまりました……はい、確かに」
チェックインするなり札束を仲居さんに渡し、鍵を受け取り、そのまま別の仲居さんに先導され部屋へと向かう。
「わぁ、草木のいい香りがするやん!」
「素敵です」
部屋に入った途端に黄色い声を上げるカス子とエリーニュス。
エルフ的には自然の香りがする環境はかなりこの身らしかった。
「こういうのでいいんだよ、こういうので」
和樹は和樹でそんな二人に満足げに頷き、旅館の選定が上手くいったことを確信する。
(っぱ日本の旅館はコスパイイな。ドバイに比べりゃ激安だよ激安)
それでも一泊十数万円はするのだが、それでも都内の高級ホテルやドバイのリゾートと比べれば、値段は格安。
既に金銭感覚がおかしくなりつつある和樹にとってはリーズナブルな宿泊先カテゴリーとなっていた。
「見ろよふたりとも、ドバイと違ってプールは無いが、ここの露天風呂はひろいぜぇ?」
畳の寝室の隣にあるふすまを開けると、ガラス張りの露天風呂がそこに。
「すぐ入りたいですご主人様!」
「せやせや!カズキはんも運転疲れたやろ? ほら、一緒にはいろうや?」
「うぇへへへ、言われなくてもすぐ入るぜ!ほら二人とも早く脱げ!」
「「きゃー」」
こうして和樹の高級流浪生活はスタートした。




