第53話 エリーニュスの目論見①
エリーニュスの精力ポーションでハッスルしまくった和樹がようやく寝落ちした昼下がり。
「さ、流石に初めてでこれだけ攻め立てられるときついわね……」
「こ、これ毎回使うのはやめよ? 薄めたら効果減るんけ?」
「一応減るわ」
キングサイズベッドの上で大の字になって寝る和樹をよそに、二人合わせて10回は出されたかというエリーニュスとカス子はリビングのソファーで一息ついたところだった。
「それにしても、豪華な部屋ねえ。ニューモンの領主館だって、ここに比べればあばら家よ。なかなかのお大尽みたいじゃない、あの子。それに、外に見える塔の群れ。ナーロッパとは隔絶した文明水準の差があるみたいね」
ソファーに深く座りながら、ドバイの街並みの感想を言うエリーニュス。
「……そらここはナーロッパでも暗黒大陸でもあらへんからな」
「ま、でしょうね……マナが全くないもの……薄い、じゃなくて認識できる範囲に一切マナがない」
「あったら街を吹き飛ばしてたんか?」
ここが未知の土地ということを理解してた様子のエリーニュスに対し、カス子は一歩踏み込んだ。
「あら怖い顔」
「カズキはんはぐっすりや。猫被る必要もあらへんやろ? 災厄の魔女エリーニュスはん?」
「そうね。あの精力ポーションは身体のマナをすべて精力に変換するもの。まあ精力ポーションそのものの力でも結構な継続力になるけどね。……知ってた? 魔法奴隷契約を有効にするマナは主人と奴隷の両方のマナで維持してるから、どちらか片方のマナが切れれば拘束は解除されるのよ」
「で、奴隷契約が無くなったところで賢者の石で街のマナを吸い上げてドカン!の予定やったってことかい」
「そういうこと」
エリーニュスはカス子の問いにころころと笑う。
「ニューモンの街でも暗黒大陸でもどっちもでも良かった。むしろ暗黒大陸の街の方が好都合、かしらね? 賢者の石のマナは白エルフ独特の物、どちらにしても白エルフが犯人ってのは明確でしょうね」
「白エルフが憎まれるように、仕向けるつもりやったんか」
「ええ。私なーんも悪いことしてないのに幽閉されたのよ? 私は静かに暮らしてただけなのにどいつもこいつも。そんなに私に暴れてほしいなら暴れてやるよって感じ? まあ私も死ぬけど人間いつか死ぬものよ。それがさっきの予定だったってだけ」
あまりにも他人事のように大規模テロの動機を語るエリーニュスに、カス子は背筋に寒気を覚えた。
エリーニュスはそんなカス子の顔見ると、くすりと笑った。
「そんなに構えなくてもいいわよ。もうやる気はないもの」
「……は?」
気の抜けた声を出すカス子に対し、エリーニュスは犯行の自白の時と同じ口調で続ける。
「だって貴女ここが未知の土地っていってたけど、多分……ナーロッパと交流できる可能性そのものがないでしょ? 厳密にはご主人様しかその方法を持って無い、とかかな? じゃあ、やる意味ないもの」
カス子は眉をひそめた。
「どういう意味や」
「さっき言ったでしょ? マナがないって」
「無マナ地帯なんでナーロッパでも暗黒大陸でもいくらでもあるやん」
「違うわよ。無マナ地帯ってのはね、今はもうマナがないだけで昔はあったの。でもここは、最初からマナがない」
「!?」
エリーニュスの言葉に、カス子ははっとした。
カス子もナーロッパでニューモンの街にたどり着く前には無マナ地帯を通ったことがある。
しかしその時の感覚とここの感覚は確かに微妙に違っていたのだ。
「ナーロッパでも暗黒大陸でもない。じゃあ違う大陸? いいえ、それどころじゃない。大陸どころか、星すら違うかもしれないわよ、ここ。そんなところで暴れても何にもならないわよ。ヘイトが白エルフに向かわなかったら死に損じゃない?」
それにマナがないから賢者の石使えなさそうだし、と補足するエリーニュス。
「あんたの憂さ晴らしは、向こうの世界の人間に見せな意味がない、いうことけ?」
「そういうこと。それに私は元々平穏な生活さえあればいいのよ。あの子、ご主人様はそれを叶えてくれそう。なら、このまま奴隷生活でもいいかなーって」
そう言うと、エリーニュスはテーブルの上にあるデーツを一つまみ。
「あまーい」
気の抜けた、和樹が油断しきるのも無理もなさそうな緩い顔をするエリーニュス。




