第52話 日頃の信用ってあるよね
「……災厄の魔女?」
カス子の物騒な言葉に和樹はエリーニュスの方を振りむく。
釣り目なものの、不安そうな表情を浮かべて和樹を見るエリーニュス。
(こんな美少女が? 災厄の魔女?)
「10年前の魔王軍と人類連合軍が衝突したときに、こいつの家がある森にちょぉぉぉっと魔法の流れ弾が飛んだせいでこいつキレ散らかしよってん! で、森の前の平原丸ごと賢者の石でクレーターにして両軍合わせて5万人の命を賢者の石で吸い取って着いた名前が災厄の魔女!」
(自分の家に入られるのが嫌だから家の周りの森近辺まるっと燃やすって……ベルカ式国防術の個人版かな?)
「そのまま森の周り全部死の大地にしようとしはったから、人類と魔王軍両方からエルフにヘイト来るの防ぐために白黒エルフ総出でトカンツ王国の側にあるエルフの里に幽閉してやっと解決したんよ!? カズキはん知らんの!? 名前は人類は知らんやろうけど災厄の魔女の名前は暗黒大陸でも流石にベルカ平原丸っと消えた情報といっしょに入っとるやろ?!」
カス子の必死の説明も和樹には全然刺さらない、なぜならそれよりも腕に当たる感触に集中する方が重要だから。
「いや俺ナーロッパ出身でも暗黒大陸出身でもないから知らん」
と言うかそもそも異世界の情勢とかは和樹にとって自分が関わる部分以外は完全に他人事だった。
「ああああああ! そうやったあああ! カズキはんそもそも未知の土地出身やったやん!!」
和樹がナーロッパと国交のない地球出身ということを思い出して床に崩れ落ちるカス子。
それはそれとして和樹も一応エリーニュス地震に事実の確認をする。
「と、いってるけどエリーニュス。そんな感じのことしたの?」
「……………………記憶にないです」
エリーニュスはものすっごく目を泳がせつつも否定する。
「カス子。いくら奴隷が増えるのが嫌だからってな。そんな嘘くさい悪評を後輩に投げるのは感心しないぞ」
カス子に非難めいた視線を向ける和樹。
和樹から見れば奴隷契約直後とはいえエリーニュスは特に和樹に害をもたらしていない(それどころか勢力ポーションと言う特大メリットをもたらしている)、一方のカス子は、和樹から見れば前科三犯(初対面のぼったくり、自らをバカ高で売りつける、その上逃亡する)である。
和樹的にどちらを信用するかと言うと、迷うまでもなくエリーニュスの方であった。
「どう見ても嘘ついてるのそっちやんカズキはん!! ほら! 賢者の石も今持ってるやん! それ使うとこのホテルの前にある都市位なら全部ふっとぶんやで!?」
「……そうなの? あ、アフマドから新着チャットだ」
声を荒げるカス子をよそに、和樹はスマホの新着通知に目を向ける。
一方で賢者の石に関して突っ込まれたエリーニュスの方はさらに目線を泳がせ始める。
しかし和樹はスマホの方を見ていてその様子に気づいていない。
「こ、これはそのー……ただのガラス玉です」
「んなわけあるかい!! 完全に終末爆裂魔法の起動準備術式発動しとるやん! カズキはんに見抜けなくても同じエルフのうちの目はごまかせへんで!?」
エリーニュスの苦しい言い訳に全力で突っ込むカス子。
「いやですねカス子先輩。この土地はマナ全くないから発動するわけないじゃないですか……ほんと、予想外」
「馬脚あらわしおったな馬鹿め! 起動してるって認めたやん!? カズキはん、ほら!!」
「あ、ごめん聞いてなかった。なんだっけ?」
「なんで! きいて! へんの!?」
「そんな事よりご主人様。……そろそろお情けを頂けません? ……ほら、ここに来る直前にカス子先輩とはされたのでしょう?」
カス子の叫びよそに、エリーニュスは明らかな話題そらしで、自らの下半身に和樹の手を誘導する。
(おひょ~~~!!!)
「カス子、お前の言い分は分かった」
「カズキはん!ようやく信じ―――」
「とりあえずお前たち二人を食べ比べるから、話はそのあとでな!!」
「せやからカズキはん――」
「はい全身まひポーション。媚薬ポーションもつけちゃう」
「!?!?」
カス子の抗議は、一瞬エリーニュスから目を離したことにより、エリーニュスが持ってきたポーションをぶっかけられたことで止まってしまう。
(奇蹟の白黒エルフ食べ比べパーティーの開催だぜ!!)




