第51話 災厄の魔女エリーニュス
「んんっ……!? 甘苦い……なんだろうこれ、子供向けのイチゴシロップ風邪薬みたいな味……ん?」
ドバイのショッピングモールの身障者用トイレに戻ってきたのと、和樹が勢力ポーションを飲み込んだのはほぼ同時だった。
その効果は、すぐに表れた。
ドクン、ドクン、と。
和樹の下半身の奥底から、マグマのような熱いエネルギーが猛烈な勢いで湧き上がってきた。
「おおおおっ!? な、なんだこれ!? すげえ力がみなぎってくる!!」
特に、先ほどまでカス子をむさぼっていたことで空になっていたはずの下半身の和樹の和樹にエネルギーがみなぎってくるのを感じる。
「すごいなこれは!! エリーニュス、お前天才かよ!!」
和樹は興奮状態のまま、後ろを振り返った。
「……?」
そこには呆然と立ち尽くすエリーニュスの姿。
手にはいつの間に持っていたのか分からない、大きな赤い石を持っていた。
「エリーニュス?」
「は、はい……ご主人様がお喜びなら、あたくしも……え、えぇ?」
和樹の声に、一瞬目を見開いたかと思うとどこか不自然な挙動で赤い石を握りしめ、エリーニュスは和樹にしなだれかかってくる。
(こっちの世界のトイレにびっくりしたのか?)
まだ地球のゴージャスな景色を見せているわけでもないのに呆然とするエリーニュスの態度に若干疑問を浮かべつつも、その疑問はエリーニュスの柔らかい身体の官職で吹き飛んでいく。
(まあいいか! 重要なのはこのポーションで残弾枯渇しても復活できるってことだよな!)
和樹は、呆然としているエリーニュスの手を強引に引っ張った。
「驚くのは後だ!」
「あ、あの……ここはもう、暗黒大陸なのでしょうか?」
「まあそれも含めてホテルで説明するよ。精力ポーションで元気いっぱいだから覚悟しろよ!!」
和樹はそのままエリーニュスの手を引いてトイレとモールを後にして、タクシーアプリでホテルへと戻る。
タクシーは物の十数不運ほどでホテル画と到着し、どこか心ここにあらずと言ったエリーニュスの手を引いてホテルの部屋のドアをバーンと開け放った。
「おうカス子! 起きてるか! 新しい仲間を連れてきてやったぞ!!」
エリーニュスを連れて和樹がリビングに入ると、リビングのソファでカス子が和樹のブカブカのTシャツを着たままテレビを見ていた。
どうやらリモコンの操作に成功したらしい。
「んぁ……? なんやご主人様、思てたよりはやかったなぁ……え?!」
カス子は和樹の方を見てのんびりした口調でソファーから起き上がりながら和樹の方を向くが、和樹の背後に隠れるようにして立っている、金髪碧眼の白エルフの姿を見た瞬間固まった。
「げぇっ!!? け、けけけ賢者の石!? ぐへ!?」
ソファーを高速で後ずさり、そのままソファーから落ちるカス子。
「何やってんだお前」
「そ、そそそ! そないな物騒なもんなんでその白エルフは持っとるんや!?」
「あら? 黒エルフさんもいらっしゃったんですね、ご主人様。こちらの方は?」
何故かドン引きしているカス子を見ながら、エリーニュスは和樹にしなだれかかりながら聞いてくる。
「あぁ、こいつもエリーニュスと同じ俺の奴隷、カス子っていうんだ」
「あら、先輩がいたんですね。よろしくお願いします」
エリーニュスは一旦和樹に抱き着くのをやめ、カス子の方にペコリとお辞儀をする。
「あぁ、二人とも仲良くな。おいカス子。お前もあいさつくらいしろよ」
エリーニュスにあいさつされたにもかかわらず、固まったままでむしろ青ざめだすカス子に和樹は促す。
(新しい奴隷が来たことで危機感に煽られたか? まあそれはいい傾向だけど)
下種の下種通りの予測とは反して、カス子は震えながら叫んだ。
「え、ええええエリーニュス!? やっぱそうやん!! 災厄の魔女エリーニュスやんけ!!!!」




