第39話 和樹の遵法意識はおしまい!
「あー……そう。そういう手を使ってくるわけ!?」
和樹的には小市民としてまっとうに法律を守る気は、一応あった。
しかし和樹が異世界という特殊事情によって入手先を言えないことによって犯罪者扱いをしてくる警察の対応に、何より警察が和樹視点でグレーな手法を使ってくることに、和樹はキレた。
「そうか、そうか、つまり君はそんな奴なんだな。ニホンちゃん君。そんならこっちだって法律なんざくそくらえだ」
具体的には元々薄かった遵法意識が吹き飛んだ。
和樹の遵法意識はあくまで法律を守れば国家権力は自分を害してこないという消極的な理由による物。
法律を侵していないのに国家権力が自らを害してきたのだ。もはや法律など守る理由は和樹にはなかった。
「証拠が出なくても犯罪者扱いかよ! いいよいいよ、ニホンちゃん君のことなんか俺もう知らない! こっちには異世界ドアがあるんだからな! 金塊なんてどこにでも持っていけるんだぞ! 日本はオワコン!」
誰に言うでもなくそう吐き捨てると、和樹はパソコンを立ち上げてVRサーバーのチャットを開く。
(たしか、前のVRチャットでやたら羽振りの良さそうなイソスタ晒してるドバイ人がいたよな。あいつなら、金の現物取引の裏ルートとか、現地の貴金属商とか知ってるかもしれない。ほら、ドバイは金々きらきらなイメージだし!)
和樹がログインすると、昨日話した自称ドバイ人の猫耳アバター(阿◻︎寛Voice)が、優雅にシーシャ(水タバコ)の煙をくゆらせていた。
『Fu[bleep]k【あら、Kazuki。ごきげんよう】』
こちらに気づいてお嬢様言葉になってしまうアラビア語で話しかけてくる自称ドバイ人。
『Fu[bleep]k?【ねえ、アフマド。貴方ってドバイ在住なのは本当ですの?】』
和樹は猫耳アバターの自称ドバイ人、アフマドに早速話を切り出した。
『Fu[bleep]k【どうしましたの藪からスティックに。本当ですわよ? ブルジュ・ハリファのレジデンス住みですわ】』
『Fu[bleep]k?【じゃあ純金の取引とか詳しい?】』
『Fu[bleep]k【ま、ある程度は詳しいですわね】』
『Fu[bleep]k【ちょっとドバイに純金コインを売りに行きたいんですの】』
『Fu[bleep]k【日本から売りに来るなんて相当珍しいですわね……】』
『Fu[bleep]k【あぁいや、ドバイにあるんだけど売り方が分からないんですわ】』
『Fu[bleep]k【……へぇ、それならゴールドスークがいいですわね。出所は探られたくない感じですの?】』
言葉をぼかしてほのめかす和樹に対し、アフマド(阿◻︎寛Voice)の声色が変わる。
『Fu[bleep]k【そういう感じですわ】』
『Fu[bleep]k【小銭稼ぎなら普通に売ることをお勧めしますわよ】』
『Fu[bleep]k【大体10キロづつを毎月売りたいですわね】』
和樹が提示した純金の量に、アフマドは、少し沈黙した。
『Fu[bleep]k?【……あとで秘匿性の高い通話アプリへの招待をお送りしますわ。そこで私の住処でドバイの在住は証明しますわ。代わりに、貴方はドバイ行のチケットを買って、ビデオで見せてくださるかしら?』
『Fu[bleep]k?【売り先を紹介してくれるってこどでいいんですの?】』
『Fu[bleep]k?【手数料は少し弾んでもらいますわよ?】』
『Fu[bleep]k!【もちろんですわ!】』
『Fu[bleep]k?【じゃあこのリンクでチャットに入ってもらえますかしら?アプリの名前は――】』
トントン拍子に進む話に、和樹は内心でガッツポーズをした。
(さすがはドバイ。数キロ程度の金塊なんて、彼らにとっては日常茶飯事の小遣い稼ぎレベルなんだな)
その後アプリでビデオ通話をしてアフマドが本当にブルジュ・ハリファに住んでいることを確認できた和樹はビデオ通話上でそのままドバイ行のチケットを予約し、アフマドに見せる。
結果、来週末にドバイに行くことが確定した。
どうやらねこみみアバターのアフマド(阿◻︎寛Voice)は本当にそれなりに金持ちなドバイ人のようだった。
うっそだろおい。




